純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『幽体離脱・透明』 > 粉薬『奪い、奪われ、人の皮』

(いい?これから何があっても、二点を実行してね)

 レストランで行った作戦会議で、木実は陽乃に二点だけを約束した。

(一つは、あなたがあなた自身を犯して)

 感度の昂り、揺さ振りをかけさせること。それが木実が約束した一点目だった。

「そんなこと、しなきゃいけないの?」
(状況はあなたに任せるわ。自分の身体がどう攻めれば一番気持ち良くなるか、自分が一番分かってるでしょう?)
「道具はこちらにあります。木実ちゃんの鞄の中に入れておきますね」

 鏡花がローター、バイブなどの大人の道具を次々に入れていった。女子高生の鞄に入った不気味な道具に違和感を覚えないだろうか?
 メイク道具と一緒に置かれたバイブに思わず目を伏せてしまう。

「なんだか、恥ずかしい……」
(あんたが感じるわけじゃないでしょう!自分の身体を感じさせれば、犯罪者だって女の魅力に骨抜きよ)
「そんな簡単に言って大丈夫かな?」

 木実も鏡花も、思っている以上に犯罪者を簡単に見ている気がする。『粉薬』にやられてしまっているのではないかと少し不安になる。

(もう一点、これが大事なんだよ)

 改まって木実がもう一点の約束事を伝える。

(自分の身体よりも私の身体でうんと感じなさい!)

 自分の身体以上に他人の身体で感じなさいと木実は言う。木実に意識集中させて絶頂を迎えることを約束させる。

「一回逝くってこと?」

(一回なんて言わなくて、二回か三回ぐらい逝ってもいいわよ。こっちの身体の方が感じるんだってことを犯罪者に見せつけるの。とにかく、犯罪者に『粉薬』を使わせること!化けの皮を剥がしたところで、警察官がその場を抑えて一網打尽にする!感じる女性の方に男性は移りたいって思うはず!犯罪者なんて知恵のない猿よ!)

 明るく言う木実。やはり木実は犯罪者を見下しているのだ。『粉薬』を持ってしまったがために、いつでも自分が主導権を持っているという意識が強くなってしまう。
 忘れてしまっている謙虚さ。それが後々後ろ髪をひかれないだろうか心配になってしまう。陽乃は改めて木実と鏡花に聞いてみた。

「木実さんも鏡花さんも危険な目に合うかもしれないよ?いいんですか?」

 あまりに簡単に考えている気がする二人。危険なことを百も承知で挑んでもらわないと、下手したら命の危険だって考えられるのだ。
 正直言うと陽乃は怖かった。でも、ここで逃げたら、一生陽乃の人生を取り戻せなくなる気がした。今回ばかりは逃げるわけにはいかなかったのだ。そこで助けて貰う人々が、もし生命を落とすことになったら、陽乃がもし自分の皮を取り戻したところで後悔が絶対残ってしまう。
 だから、今の内に少しでも安心させておきたかったのだ。木実と鏡花を安心させるように、本当は自分が一番安心したいから。

「望んでいない入れ替わりは不幸にするだけだもの。こう見えても私たち、人を不幸にしたことないんですよ?」
(そうそう!お互いに皮を交換をしたり、一緒に交わる経験をさせてあげてるの!ちゃんと了解を得てね)

 二人が陽乃に優しく言葉をかける。

「『粉薬』は人を不幸にさせる危険性があるって重々承知している私たちだから、助けてあげなくちゃって思う時があるの。だから陽乃さんも、今は不幸だと思っているかもしれないけど、負けないで。一緒に皮を取り返しましょう」

 二人は『粉薬』のことを理解していると同時に、不幸にされた被害者のことを一番に考えていた。だからこそ、陽乃を安心させるように明るく振舞っていたのだ。陽乃を悲しませないように、先輩として、年上として、怖い雰囲気を隠して陽乃を想っている。
 陽乃は自分を恥じる。一瞬でも疑ってしまった二人のことを。

「…はい……」

 三人の決意は固まった。陽乃を探す長い一日が始まる。
 そして半日すぎた時、陽乃は自分の身体を見つけることができた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「はぁ……はぁ……」

 さり気なく、そして大胆に――
 陽乃は流れのままに主導権を奪い、また奪われることができ、三度ほど木実の身体で絶頂を迎えた。
 ベッドの上で息を上げることで精いっぱいで、体力が回復するまでもうしばらく時間がかかりそうだ。

(くっしょう!くやしい・・・本当に逝かされちゃったぁ……)

 木実がビクンビクンと悔しそうにしていた。演技で済むと思っていた犯罪者の乱暴の犯し方に、木実は思ったほどに感じてしまい、逝かされてしまったのだ。ディルドーが膣壁を擦る感覚にまだ身体が疼いてしまっており、盛ってしまっている自分が悔しかったようだ。
 そんなことを知らない犯罪者、陽乃と晴海が嗤いあう。そして、手には『粉薬』を用意した。晴海が今だ失神している鏡花に近づくと、さすがの陽乃はベッドの上で目を開けて叫んでいた。

「鏡花さん!鏡花さん!?」
「今頃、意識を取り戻しても遅いっつうの。俺たちはおまえ達の身体に映ることに決めたんだよ」

 陽乃もまた木実に近づいていた。既に口調を男性口調にしており、もはやその表情も陽乃の面影が何処にも無い。犯罪者であることを隠すことをしない。

「ああ、俺たちは実はこの皮の持ち主じゃねえんだ。この皮に入れ替えに入った元男性。そして元犯罪者・・・。くはあ、信じられるか?こんな穢れのない〇学生が指名手配人なんて思わねえよなあ?」
「あなたたち・・・」

 聞かれていないのに自分の正体を明かした犯罪者。それくらい犯罪者にとってもハイテンションになっているのだろう。『粉薬』に向けたその目は怪しい光を住まわしていた。

「そして次は女子高生か。ふふ、まあこの身体よりは開発してありそうだし、俺もその可愛い声で喘いでみたいしな。良かったな、不細工の男性の皮じゃなくてよ」
「じゃあ克昌。俺はこっちでいいな」

 犯罪者二人もそれぞれの行き場所を決めた。康は鏡花、そして克昌は木実へ。
 『粉薬』の封を開け、まず克昌から木実の身体へ移動する。

「ああ。これでこの身体と今生の別れだ。おまえの身体、いただくぜ?」

 『粉薬』を飲みほした克昌が陽乃の皮を脱ぎだし、『スライム』となって外に飛び出した。そしてそのまま木実の身体内に入り込むように口内へ飛び込んでいった。

(かかった!)

 木実がにやりと笑う。苦しく思えた『スライム』の侵入が、途中でつっかえると拒絶反応を起こした。
 慌てて逃げるように木実の身体から抜け出す克昌。

(何故、身体に入ることができない!?)

 身体に入る水分の限界だ。これ以上入ると吐き出してしまう量を超えてしまう為に、克昌が入ることができなかったのだ。
 人の意識を全て水分として吐き出してしまうはずの『粉薬』。『スライム』にすらならない謎の水量は一体なんだと持っていない知恵をフル回転させて考える。そして一つの可能性を思いついた。
 御名答とばかりに木実は嗤った。

「馬鹿ね。『粉薬』は一つの身体に一錠しか適応しないのよ」
「誰か入ってるのか?貴様!」

(今よ――!)

 木実の身体からスライム状として抜けだした。そして――魂の抜けきった皮だけとなった陽乃の皮へと入りこむ!

(私の皮・・・!んっ――――!!)

 渇いた唇が、私に触れたことで潤っていく。

 ――ゴクッ……ちゅぶ……ちゅっ……ゴフッ……

 満ちていく水分。体内が温かい。ああ、この感じ――。

 ――――ジュルルルゥ……ズルッ……シュルシュル……ちゅるん……。

 『スライム』が陽乃の身体に全てはいった。ゆっくりと、はっきりと、その目を開けた。
 木実の笑顔と犯罪者の驚愕した表情を見た。そして、――『スライム』となったもう一人の犯罪者。
 わたし、小池陽乃は元に戻った。

「わたし、戻った……あっ……」

 泣いてしまうところを、ぐっと堪える。まだ終わった訳じゃない。

「小娘、ぐっ―――!」

 鏡花を突っぱね陽乃に襲いかかる晴海(康)。男手のように大きい威圧感を見せながら迫りくる晴海があと一歩のところまできていた。

 ――バンと言うけたたましい音と供に、警察官が駆けつけた。

「あんたたち、こんな場所でなにをしているの!?」

 順子の登場で流石に躊躇する晴海(康)。

「警察、ウソだろう?」

 裸で縺れる四人の女性。こんな場所でなにをすると言うまでもない。

「あなた達未成年よね?売春行為は法律で禁止されているのよ。ちょっと署まで御同行願うわ」

 順子は四人を――特に晴海(康)の腕を捕まえて強い力で引っ張り上げた。威圧感ではなく、本当に強い順子の腕っ節に、か細い晴海の手では押し返すことができない。

「放せ!おい!くっそぅ!」

 抵抗して叫ぶ晴海(康)の声が遠のく。……終わったのだ。
 ベッドで眠る木実。しかし、頬笑みを見せて陽乃を讃えていた。

「へへ。やったね、陽乃ちゃん」
「ありがとう!ありがとう!木実さん」
「あはっ、ちょっと休ませてよ。思った以上に身体が動かないんだ」

 眠るように目を閉じる木実。その寝顔が赤ん坊のように可愛くていつまでも見ていたくなってしまう。そのはずなのに、その願いは敵わない。
 ……思いだした、
 もう一人の『スライム』の存在。急いで見渡しても、何処にも見つけられないことに焦る。

 ――焦りが油断に繋がる。

「えっ!?」

 上を見上げる。浴室でもないのに水滴が落ちてくる。一滴のような小さな水滴が、一気に膨大な量に変わって木実の口の中に入りこんだ。

「ウゴゴゴゴ――!!?」

 目を見開いて苦しみ悶える木実。『粉薬』の効果を失った木実は今度こそ抵抗なく克昌の『スライム』に喉を通していく。

「木実さん!そんな――!!」

(このままじゃ、木実さんの皮が奪われてしまう)

 私が油断したせいで。――『スライム』が木実の体内に全て入りこんでしまった。
 もう構っている暇はない。陽乃は木実の鼻を塞いで口を唇で塞いだ。
 人工呼吸のように木実の口に入り込んだ水分を吸い上げていく。

 人の吸う―バキューム―力は凄まじく、『スライム』となった克昌を吸いだしていく。

(入らないで!木実さんの身体から出ていけ!!)

 必死に吸いだし、膨らんだ木実のお腹を一点集中で押していく。すると、

「ンゴ、おっ、おぅぇっ――!!」

 木実の口から『スライム』が再び吐き出された。

 びちゃ――

 壁に散らばる『スライム』の残骸。しかし、『スライム』はダメージを受けることなく、散らばった水滴を本体に寄せると、元の大きさへともどって元気に蠢いていた。

(俺は水だぜ?何度でも再生する。何度でも襲いかかってやるよ!)

 そう言わんばかりにスライムは再び行動を開始する。遅い動きをしていても、意識を失った鏡花と木実を連れて陽乃一人では逃げられない。『スライム』という物体に攻撃など効くこともない。
 拒絶不可能だった。

「きゃああああああああああ――――!!!」

 声を震わす陽乃。飛び上がった『スライム』が再び陽乃に迫っていた。
 ――バッと目の前に影が落ちた。
 それは、倉庫で置き去りにされたままの指名手配犯、克昌の皮であった。
『スライム』が自らの皮の中に勢いよく飲み込まれていく。皮を持ってきた仲居豪が間一髪で間に合ったのだ。

「ごう…くん……」

 携帯電話で鏡花と連絡を取っていた豪。しかし、

「くそう、この皮をどこで……」

 何故克昌の皮を持っていたのか疑問が残る。しかし、『スライム』が人の姿に戻っただけのこと。恐怖が過ぎた訳ではない。

「まぁ、いい。人間の姿に戻して俺に敵うと思うか?何人殺そうが俺にはもうなんの抵抗もねえんだよ。力で勝てると思ってるのか、小僧!死に曝せえ!!」

 逆上した克昌が豪に殴りかかろうとしていた。
 しかし、その手が豪に届く前に、克昌の腕に手錠がかけられた。

「うおっ!?」

 目を見開く克昌。手錠をかけた女性警官、新暁子が宣言する。

「木梨克昌。暴行未遂及び陣保市連続殺害事件の容疑として、あなたを逮捕します」

 連れて行かれる克昌。警察官のおかげで室内に恐怖の二人の姿がいなくなった。
 鏡花、木実、豪。
 陽乃を助けてくれたメンバーを残した室内に、ようやく陽乃は心の底から安らぎを手に入れることができたのだだ。

「はっ……えぐ……ぅぅあ…あああああん――――!!」

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 今まで溜めこんだ涙を自分の身体から流す嬉しさ。
 小池陽乃が泣いている。誘拐よりも怖い『スライム』の時間は終わったのだ。

「これで終わりだ。全て解決だ」

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「おい。さっそく電車で都内まで行こうぜ。こんな田舎町じゃガキとババアしかいねえ」
「賛成。県内から放れて顔見知りのいないところに高飛びしようぜ」

 陽乃と晴海に成り済ました犯罪者が県内から逃亡しようとしていた。二人の捜索願が届け出たところで、発見される頃には既に別人と入れ替わっている予定だ。
 『粉薬』があれば絶対に警察が追いつくことができない。建物の中ではなく人の中に隠れているなど誰が考えつくだろうか。

 好美駅から都内では電車の本数が限られており、また新幹線に乗り降りする本数が極端に少ない。ここは一度陣保市に降り立ち、快速急行で都内に行くのが一番早いとみた陽乃(犯罪者)たちは普通列車に乗って陣保市を目指した。

「ちっ、おっそいなあ。しかも混雑してやがるぜ」
「なあに。あと少しすれば本当の意味で自由の身だ。誰の目にも付かずに入れ替わり三昧。都内の人混みの中で俺たちを見つけられることなんかできるわ訳がねえ。犯罪者に最も安全な楽園に旅立とうじゃないか」

 電車内で仲良く笑いながらも会話は女性のするものではない。この窮屈な時間さえほんの少し我慢すれば、おもいっきり羽根を伸ばすことにしよう。
 好美町の景色をドアから眺めながら陽乃は感慨にふけっていた。停車駅に人が流れ込む。また一段と車内が窮屈になっていた。

 ――サワサワッ

「おぅっ!?」

 陽乃が驚いた声を上げた。誰かに足を触られた感触があったのだ。ゾクゾクと足が硬直し思わず振りかえり見渡してみるがそこにいるのはすべて女性。痴漢されたかと思ったが早とちりだったようだ。

「おい、どうした?」
「わからねえ。偶然、手が当たったのかもしれないしな。いま痴漢されたのかと思ってよ」

 アハハと笑う晴海。

「馬鹿じゃねえの。痴漢されたい願望でもあるのかよ?」
「ちげえよ。この身体敏感すぎるんだよ。ちょっと当たっただけで感じやがって―――」

 と、小声で話をしていた二人に再び魔の手が襲いかかったのは同時だった。

「おい、マジかよ……」
「ああ……」

 スカートの中に手を入れられている。ショーツに包まれたお尻を揉まれる感覚が二人に襲いかかっていた。
 一瞬だけ躊躇いてしまうのは、犯罪者と手同じ。相手の顔を伺う為にゆっくりと背後を剥きたいがそのタイミングがつかめない。
 揉まれる手の感覚が成人男性に比べて小さく思えるが、痴漢している人物をあまり怒らせてはいけない。被害を受けた者の鉄則として相手の行動に従い穏便に事を乗り切ることが肝心である。そうすれば、必ず相手の隙をついて逃げ出すことができるはずだ。
 相手は遂に陽乃の身体を抱くように手を前に差しだしてきた。そして胸に手の平を擦り寄せると、大胆に乳房をいじり始めたのだ。

(おい、この手の細さ……まさか、痴漢してくる相手は――)

 陽乃はゆっくりと相手の顔を見た。すると、陽乃の身体をいじっていたのは、なんと女子高生だったのだ。

「きみ、おとなしい子だね。それとも女性の私にこんなことされるのが好きなのかな?ブラをつけていないみたいだけど、そろそろつけないとエッチなおじさんたちにも狙われちゃうかもしれないよ、こんなふうに」

(んっ・・・)

 きゅっと乳首を摘まむ女子高生に反応してしまう。

(おい、女子高生が痴漢してきてるぜ?康、おまえもな)
(ああ――。まったく、物騒な世の中だな)

 にやりと黒い笑みを浮かべ会う二人。相手が男性でないと分かった今、心に余裕が生まれたのかもしれない。この場は女子高生の言いなりになって『痴漢プレイ』を愉しむということを決めたようだった。

「いま反応したね。私、反応してくれる女の子大好きなの」
「ああ、や、やめてください……」
「口ではそう言ってても私を拒まないんだね。嬉しい。もっと感じさせてあげるからね」

 女子高生がポケットからピンクローターを取り出した。

(おいおい、女子高生がそんな如何わしいもの持ってるのかよ?こいつ、本当は男だったりしてな)

 (まさかな)と、自分の妄想に笑った陽乃。女子高生がストッキングをずらしピンクローターをショーツの中に押し入れた。クリトリスにローターが当たっている感触がある。尻尾のように伸びるピンク色の紐が女子高生が手にするローターの電源と繋がっていた。

「ローターを見るのは初めてだったりして。・・・じゃあ、その感覚を存分に味わいなよ」

 女子高生がスイッチを入れると、ぶううぅぅんという低い音が陽乃の耳にだけ確かに聞こえた。電車内でレールに揺れる音が振動音をかき消してしまうが、動いている刺激が陽乃のクリトリスに当たって崩れ落ちそうになった。

「くすっ、どう?皮の上から刺激されている感覚は。この振動がたまらないでしょう?これが、快感だよ」

(ああ、気持ちいい。身体の奥から疼いてくる振動が刺激を求めちまう……)

 乳首が自然に硬くなってくる。女性の感覚に酔いしれる克昌は声を出すこともできずに顔を蕩け出していた。

「その表情イイね。抵抗しないで感じてくれているんだね。私の行動を受け入れてくれているんだね?」

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 ショーツをぐいっと持ちあげてローターとクリトリスの間隔を狭めると、さらに低いくぐもった音になり、ジジジジと刺激を容赦なくクリトリスに擦りあてる。
 震える足、気を抜いたら崩れ落ちそうなくらい感じている陽乃の身体を、精神的に踏ん張って耐え抜いていた。

(へへ。やっぱり無口な子を演じれば相手は口数多くなってくるな。こんなにさベって、周りに気付かれちゃうんじゃねえの?)

 これは一種の公開プレイだ。車内に乗っている人も女子高生の痴態を曝して感じているに違いない。犯罪者にとっても犯されていると同時に痴漢プレイを見て貰いたいという欲求が生まれていたのだ。

「そんなに気張らないで、抵抗しないで逝っていいんだよ?……アハッ、それとも、私にもっといじめてもらいたいのかな?女性が痴漢してくるなんてそう滅多にない経験だもんね」

(いまだけだぜ。これが終わったら、次は……)

「いじめ甲斐があるなあ。じゃあ、もう一つローターを増やしてあげるよ」

 ビクっと身体が反応してしまう。女性の手に握られたもう一つのローターが、今度は陽乃おま〇こにローターを押し当てた。愛液で濡れているおま〇こはローターを簡単に膣内に滑り込ませ、いつ振動に揺れるか分からないのに今かと待ち侘びているように昂っていた。そして、ローターが振動し始めると、二つのローターによって身体が自然とくの字に折れ曲がった。

「はぁ……はぁ……」
「さっきと反応が全然違うね。息が荒くなってきてるよ。いつまで耐えることができるかな?アハッ乳首が完全に勃起したね」
「~~~~っ!」
「頭ボーとしてきてるね。もう我慢でいないんだね。じゃあ、逝っちゃいなよ」

 女子高生が勃起した乳首に爪を立てた瞬間、身体が限界を迎えたように痙攣を起こした。逝かされたのだ。

「アハッ!逝った逝った。ローターがきみの愛液でびしょ濡れだよ。こんなに濡れてたらアソコはもうすごいんだね?……アハハっ、ぐちょぐちょだね。こんなになるまで我慢して、触れば触るだけ溢れてくるね」

 女子高生の手が陽乃の膣内をかき混ぜる。ショーツが愛液で濡らしシミを広げる。女子高生の手は細くて小さいので、奥まで飲み込んでいくのが良く分かった。

(逝った身体が、また、逝っちまう……。この女、うますぎる……っ!)

 横目で晴海(康)に振り向いた陽乃(克昌)だが、晴海(康)も同じように女子高生に犯されて目を蕩けて逝かされていた。
 完全に骨抜きにされた二人は情けないと思いながらもすっかり女子高生の虜にされていた。

「へへ。じゃあ次は――」

 女子高生が鞄からすっとあるモノを見せた。ディルドーである。男性の性器の形をした特注品である。陽乃(克昌)がそれを見ると、目を見開いて驚いてしまった。

(おいおい、マジかよ。あんな大きなもんを挿入れられたら、流石に声が漏れちまうぞ!ヤバすぎる……)

 もっとこの女子高生と楽しんでいたかったが、陽乃の身体では隠すのに限界があった。その時、電車が停車して陣保市へと到着したのだった。

「降りて」

 命令口調の女子高生。年齢が年下だと知っているのか、陽乃に強制する。

「もっと逝かせてあげる」

 目を怪しく光らせて笑う女子高生。この時初めて面と向かって対峙することとなった。

(ああ、その言葉、そっくりそのまま返してやる。――俺たちが今度は逝かせてやるよ)

 陽乃の目も怪しく光り同じ笑みを浮かべていた。
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「『粉薬』は入れ替わり。剥いだ人の皮を着ることができます」

 長峰鏡花の説明に順子が机をたたいて反論する。

「皮って皮膚のこと?ありえないわ。皮だけを剥いで着るなんて芸当は不可能よ。筋肉は?骨は?血液血管、中身はどこに行っちゃうのよ!?」
「『皮』です。『粉薬』を飲んだ人を『スライム』に変えて分類させます。そして、その皮を別の人が着た場合、皮の持ち主の情報を与え同じ体型、姿に戻して元通りにします。それが『粉薬』です」
「ありえないわ!」

 人知を超えた薬の説明だ。悪魔のような効力の説明に、怒りで震えているのではなく、認めることができなくて震えているのだと順子は気付いた。否定をしなくてはならないが、今の順子にはそれができなかった。

「今体験したんじゃないか?」

 仲居豪が決定打を打つ。今の順子の姿は、警察官として44年間過ごした高峰順子の姿に戻っていた。
 そう、順子は陽乃と違い『皮』も『スライム』も揃っていた状態だったのだ。陽乃より一足先に自分の姿へ戻っていたのだ。『粉薬』の効力によって――。
 今の順子は『粉薬』を認めざるを得ないのだ。『粉薬』によって外された生活を、『粉薬』によって元の生活に戻ってこれたのだから。

「そんな、常識外れ聞いたことがない。それは一種の麻薬なの?」

 麻薬と言う響きに三人はニヤリと嗤う。

「陽乃ちゃん。一緒におトイレ行こう!」

 そのうちの一人、双山木実は陽乃を連れてトイレに向かった。
 用件はそれだけのはずがない。トイレに入った木実は誰もいないことを確認すると改まって陽乃と向かいあった。
 
「陽乃ちゃんは今から私に着替えて貰うよ」
「えっ、ええーーー!?」

 突然宣告された実態に思わず声をあげてしまい、木実に口を塞がれ咎められてしまう。

「いい?あなたが犯人を捕まえたいなら、わたし達がお手伝いしてあげるよ。せっかく警察の人もいるんだし、手錠を持ってきているよね?おとり捜査だ」
「おとり捜査?」

 警察官が女装の格好して駅のホームで痴漢を捕まえる特番を見たことがある。その時に言われていた捜査が確か『おとり捜査』だった気がする。
 つまり、陽乃に木実の皮を着て貰っておとり捜査をしろといっている。順子が聞いたらなんと言うだろうか。

「木実ちゃんの皮を借りておとり捜査をするなんて思わなかったわ」
「犯罪者に一番近づく役になるとっても危険な役だよ。できる?」
「…………。怖いけど、私は覚悟を決めたから大丈夫」

 やるしかない。陽乃は決意して木実に頷くと、木実も陽乃の決意が伝わった。

「大丈夫。私は陽乃ちゃんと一緒にいるよ。一人じゃない。一緒に自分を取り戻そう!」
「ありがとう」

 木実の言葉にまた陽乃は救われる。みんなから多くの援助を貰っている陽乃だ。少しずつやる気と元気をもらっていた。
 陽乃を確認した木実はポケットから『粉薬』を取り出した。

「ねえ、大丈夫なの?」
「へいきへいき!着られてる感覚って私にも分かるんだよ。最初は怖かったんだけど、誰かが私の中に入ってくるって言うゾクゾク感が最近だと病みつきになっちゃったんだ」

 ……陽乃は木実がドMかもしれないと思った。
 少し和んだ。

「今回は私も協力してあげるように分量を調節するよ」

 木実は『粉薬』の袋を開けて中身を喉に流し込んだ。協力できるように喉に流しこむ量を調節しながら水を飲んで流し込んでいった。

「うっ……」

 突然苦しそうな声をあげた木実。みるみる姿が萎んでいき、まるで空気が抜けたように手や足の先から細くなっていくと、立つことができずに地面に舞い落ちていった。

「木実ちゃん!!?」

 木実の立ち位置から制服だけがパサリと残った。制服をどけると、木実と同じ色した髪の毛のついた、肌色のタイツが現れた。
 もちろん、これはタイツではない。木実の皮の姿であった。

「本当に皮になっちゃった……」

 不思議と『スライム』は今回流れていない。木実の分量調節によって嘔吐せずに皮の中で一緒に萎んでしまったのか。いったいどこに行ったのかは分からないが、陽乃は木実の皮を着なければならないのである。そういう約束なのだから。
 まっすぐに立たせると確かにこれは木実の姿で形作られていた。木実の身長は陽乃よりも僅かに小さいが、皮は伸び縮みできるので、穿くことが辛うじてできそうだ。

「・・・ごめんね、木実ちゃん!」

 もともと『スライム』化していた陽乃は、木実の残した少量の『粉薬』でも飲めば身体を放れることができた。スライムにもどった陽乃は急いで木実の口から身体の中へと流れ込んでいった。
 萎んだ皮は膨らみを取り戻し、乳房が可愛く盛り上がったところで身体の変化が終わった。

「できた!」

 目を開けて自分が双山木実になっていることを鏡に映す。人気のある阪松公立高校の制服を身につけている自分が少しだけ微笑ましく思えた。

「本当に、木実ちゃんになってる」

 可愛い顔に小さい背。高校生でもきっと男子から絶大の指示がありそうな木実になった陽乃は思わず、胸のあたりを触りたい衝動に駆られた。

「(できたね)」
「きゃっ!?・・・あっ、木実ちゃんの声が聞こえる」

 頭に響いてくる木実の声にびっくりした陽乃だが木実はさほど気にしていない様子だった。

「(うんっ!分量によっては会話ができるんだよ。ただ、皮になった人の声を聞けるのは着ている人物だけでもちろん主導権もないよ。ロボットが私でコクピットが陽乃ちゃんって例えると分かりやすい?)」
「ああ、うん。なんとなく」

 ロボットアニメなんか見たことない陽乃だけど、今度なにかを見てみようかなと鏡に映る木実に愛想笑いを浮かべた。

「(普段はこれを使って、皮になった人の悲痛な叫ぶを聞けるんだよ!いやああ!とか、やめてええ!とか、言われると逆にもっとヤッテ欲しいのかと思っちゃうよね?)」

 ……陽乃は木実はやっぱりドSだと確信した。
 前言撤回である。

「(だから今回、人助けに『粉薬』を使うのは珍しいことなんだよ。人の欲求を叶える魔道具も、本当は人を助ける為につくられたんじゃないかなって思う時があるんだよ。ただ、私達が本当の使い方を知らないだけで、欲求に使っているだけなのかもしれないね)」

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「(なんてね!)」と、心の中で笑う木実が、鏡の中の姿を借りて笑っているように見えた。
 不思議。犯罪者と同じ『粉薬』を使っている木実たちにさほど拒絶を表さない。一歩間違えれば人生を狂わす道具で遊んでいるような連中だ。陽乃にとって絶対近づいちゃいけない相手だと分かっているのに、逆に手を組んで助けてくれてるのだ。
 悪い人たちには当然見えない。化けの皮を脱ぐこともなく、表裏なく純粋に人と接しているからなのかと陽乃は思った。

「どうして、『粉薬』なんか使えるの?怖くないの?」

 陽乃は木実に問う。木実は答える。

「(怖さも楽しさも紙一重だよ。ベクトルが違って当たり前)」

 感性の違いと言うものだろう。捉え方やモノの興味の惹かれ方は皆違う。木実ちゃんにとって『粉薬』はすごい魅力的に見えたのだろう。

「……わたし達はもう『粉薬』なしには生きられないくらい壊れちゃってるだけだよ。だから、陽乃ちゃんはすべて終わったら全てを忘れて日常に戻りなよ。『粉薬』は怖い商品なのは間違いないからね)」
「…………」

 木実ちゃんみたいな人が多く使ってくれれば、きっと『粉薬』は魔道具なんて呼ばれなくなるんだろうなと、
 敵わない夢を残して陽乃はトイレから外に飛び出した。続きを読む

 1時間以上電車に揺られ、好美町へと降り立った。

「来たね」
「学校サボっちゃったね」

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 連れの女子生徒も同行し、三人で駅のホームに描かれた町の名前を見る。確かにニュースで流れた駅名と一緒。初めて降り立ったせいもあり、女子の方が町を歩き慣れていると言った印象を受ける。
 さすが歩き遊んでいるだけのことはある二人だ。

「仕方がないよ。これ以上騒ぎになると俺達も遊べなくなるかもしれないからね」

 人混みもまばらになり、人々は『普段』の生活に溶け込んでいる。
 俺たちも早く『普段』の生活に戻れるよう、行動を開始する。

「とりあえず腹ごしらえだね。今日早く起きたからなにも食べてないでしょう?」
「あ、うん。そうだね」

 女性二人は笑っていた。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「ハァ・・・ハァ・・・・・・」

 わたしは仕事を休んで昨日の倉庫へ足を運んでいた。
 案の定、『スライム』と化した高峰順子さんの姿はどこにもなく、もぬけの殻と言う状態でなに一つ音がしなかった。

「どこ行っちゃったんだろう?」

 こんなことになるなんて思わなかった。『スライム』の姿で外に飛び出してなにをするつもりだなんて、ちょっと考えれば分かるはずだったのに――

 わたしと同じ行動を取るはずだ。
 人間の皮を奪いにいったのだ。

 人間じゃないカタチをした『スライム』の恐怖と現実逃避が狂気じみた恐ろしい犯行を可能にする。
 お酒とお薬『ハル〇オン』。人権を侵害する卑劣な行為と同じ――。
 順子さんもまた人の皮を奪いに行った。そして行方不明の事件を犯している。ニュースで流れていた事件の全貌はこれではないだろうかと予想し、わたしは行動した。

「順子さんを探さないと。一刻も早くやめさせないと、被害がもっと拡大しちゃう」

 でも、順子さんを咎めることはできない。警察官として後輩に愛され、職務を全うしていた彼女が急に犯罪をしてでも生きなくてはならなくなったのは……
 順子さんに罪を触発したのは……他ならないわたしなのだから。

「わたしが、罪を犯しちゃったから……」

 順子さんを変えてしまった。人の生き方を、性格を、人生を変えてしまった。

「こんなことになるなんて思いもしなかった」

 私一人だけで解決できると思って、結局順子さんに迷惑をかけていただなんて、あの時は予想だにしていなかった。

「必死だった……わたしも、元のからだに戻りたかった……」

 その為に、最善の行動を取ったはずだった。それが間違いだったなんて今頃気づいても遅すぎる。
 サイレンが近くで鳴っている。朝から警察は目まぐるしく動いている。
 指名手配者を捕まえられず、連続行方不明事件をそそのかし、数々の失態を繰り返したわたし。そして好美町は物騒な街へと変わってしまう。
 わたいの大好きな町が、わたしによって変わってしまった。

「ぁっ…、うあああ……あっ……くぅ……っ!」

 涙が止まらなかった。平穏を取り戻したかっただけなのに、わたしの手で町の平穏を崩してしまった。
 音を立てて崩壊する日常。もう、戻ってこれない小池陽乃の人生。
 諦めきれなくて、必死に最後まで戦ったけど、そのせいで人様に迷惑がかかる。
 
 5才の子供が泣いているのも―― 
 いま、この瞬間も『スライム』に皮を奪われているのも――
 そして、もう止めることのできない犯罪の連鎖も――

「ごめんなさい……わたしっ!うわあああああああああああああんん!!!!」

 謝っても許されない罪。泣いたってもう取り返しのつかない罰。一生偽りの姿と疑惑の目で生きなければならなくなった。
 もうみんなが犯罪者。
 もうみんなが『スライム』。
 そんな心で生きなければならない息苦しさに胸が張り裂けそうだ。
 だから、人間の生を終わらせよう。罰を償う為に、わたしは死んでお詫びしよう。

「……あっ、ダメ。わたしが死んだら、順子さんが死んじゃうことになる」

 だからわたしは死ねない。死ぬことができない。
 みんなが死ねない。
 みんなが苦しみの中、生きなければならなくなった。
 輝く自分の人生ではなく、赤の他人の人生の為に全うできる人はいったい何人いるのだろうか。
 だからみんな、死んだような生活に変わる。 
 希望も夢もない生活。

 わたしが……人の人生を奪ったのだ。

「うあああああああああああん!!!うわああああああああああああ―――――!!!!!」

 ごめんなさい――、ごめんなさい――、
 泣いたって許してもらえないけど、
 声が枯れても許されないけど、

 今はどうか、わたしの中の水分を全部洗い流す時間をください。
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 朝、いつの間にかわたしは寝てしまったようだった。
 頭が痛い。泣き疲れて眠ってしまったのかと思ったけど、どこか腑に落ちない自分がいた。

(昨日は暁子さんの胸で泣いちゃって、それから確か……暁子さんが出してくれたビールを飲んで・・・美味しくて二杯目を飲んじゃって……記憶がない。……あれ?)

 完全に二日酔いだった。
 順子さんの身体が弱いのか、それともわたしがお酒弱いのかと聞かれれば、おそらくわたしのお酒の弱さが原因だと思う。
 お酒なんて初めて飲んだんだもの。

 そんなことよりも気になるのは―――――

「どうして、裸なんだろう?」

 確かに、記憶の中でパジャマを着た記憶もない。しかし、下着を脱いだ記憶もない。
 これはいったい、なにを示しているんだろう…………まさか・・・

「せんぱい、起きました?」

 タイミング良く暁子が顔を覗かせた。朝から頗る快調の彼女。元気が人一倍なのは気のせいだろうか。

「暁子さん。昨日わたしたち――」
「ああ!目玉焼きとトースト作ってあるので、せんぱい一緒に食べましょうよ!ほらっ、起きて、せんぱい~」

 今日の暁子はハイテンションだ。朝食時にも、何故か四人がけのテーブルで向かい合わせで座るのではなく、隣同士に座りこむと、「せんぱい、あ~ん!」と、まるでわたしを子供のように扱い始めたのだ。
 順子の先輩としての威厳がまるでなくなってしまった。後で怒られるかもしれないと、暁子さんのくれたパンを齧りながら朝を過ごしていた。

(そういえば、順子さんどうしてるかなあ・・・)

 ふと気になってしまったことだ。
 わたしが今、人間の姿をしているのは、順子さんの皮を着ているからで、入れ替わりに順子さんは『スライム』になってしまった。「すぐ返す」なんて言っておきながら結局一晩過ごしてしまう醜態。気を失っているままならいいのだが、もし順子さんがスライムの状態で意識を取り戻したら、いまどうしているのか見当もつかない。

(ちゃんと隠れてくれていたら嬉しいんだけどな)

 なんて希望的観測、楽観的予想を想い浮かべながら朝のニュースをみていた。
 わたしの目に入ってきたのは、先日から続く行方不明者の新たな情報だった。

『わたしは今、好美町二丁目の銭湯に足を運んでいます。昨日の晩から未明にかけて銭湯に入っていた女性五名の行方がなくなったという信じられない事件が起きました』

 好美町はこの町である。二丁目の銭湯をわたしは知っている。家のすぐ近くだ。

「また行方不明が増えたんですか?今日は荒れそうですね」

 暁子さんの声が入らないくらいわたしはニュースに没頭していた。

『女性の衣服が籠の中に置かれていて、まだ入っているのかと思ったら誰もいないんです。わたしゃあびっくりしたよ。まさか、服も着ずに帰ったんじゃないかって』

 VTRで流れる銭湯を経営しているおばちゃんがコメントを流した後、肩を震わせている五才くらいの少女が映しだされた。

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『わ、わたしが、おかあさんといっしょにはいっていると……水が、きゅうに、おそいかかって……おかあさんを飲み干していっちゃったんだ!!うわああああああん!!おかああさああああん!いなくなっちゃったああああ!!!』

 その言葉を聞いた時、わたしは――
 サイアクな結末を迎えてしまったのだと後悔した。
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 小池陽乃の皮を着た指名犯、木梨克昌―きなしかつまさ―は一日中、駅前にいた。時間が夕方になり、帰宅時間で賑わいを見せる繁華街を、誰の目にも忍ばれることなく歩ける。
 久し振りのネオンの明るさに、克昌は心が躍る。

「まったく、すげえ薬が売られているもんだぜ。俺を前にしても誰も見知らぬ顔で通り過ぎていく、アハッ、当然か。もう俺は別人なんだ。生まれ変わったんだ」

 陽乃の身体は元の自分と10歳近く放れている。一世代違う自分の身体をチラ見しながら夜の街を歩いている。
 スナックやクラブも始まっている。何度も足を運んだこともある。店内No,1の美女にお酌してもらいながら飲むお酒は格別にうまいものだ。

「・・・いずれ、さよりちゃんの皮も貰うとするか。それとも、この身体を身売りにだすのもいいかもしれないな、くっくっ……」

 さて、と。陽乃の鞄に入っていた携帯電話を取り出してなにやら掲示板に書き込みを始める。
 女性の身体を手に入れたことでやることは一つ。
 早速ヒットして、待ち合わせするかのように広場の街頭前に佇んでいると、中年の男性が陽乃の前に訪ねてきた。
 携帯を手にニヤニヤ笑っている。

「きみだね。『ピノ』ちゃんは?」
「そうで~す。こんばんわ、おじさん」
「若いね。ひょっとして中学生かい?」
「そんなところです。早く、行こうよ!ラブホテル!」
「本当に三万ポッキリでいいのかい?おじさん、感激だよ、ウフフ」
「そのかわり、うんとサービスしてもらうからね。私を気持ち良くさせないと承知しないんだから」

 援助交際。金と快楽が同時に手に入る女性限定の魅惑の臨時収入。
 後にも先にも、いつの時代も起こる援交問題は、男性による引き金で起こしているのかもしれない。

「へえ、ピノちゃん、今日誕生日なんだ。じゃあ、おじさんがなんか買ってあげちゃおうかな~」
「わあ!ありがとう!わたし、今日から生まれ変わったんだよ!大人の道具を買ってね!!」
「わかったよ!じゃあおじさんと品定めしようね、ピノちゃん!」

 二人はラブホテルのいく前にアダルトショップに立ち寄る。道具や衣装を買えるだけ買い、ラブホテルで即実践された。

「ああ!お嬢さま、そんな叩かないでぇ!」
「アハハ!!叩かれて感じるなんて、あんた真性のドMだね!じゃあ、私がそそり立ったち〇ぽ踏みつけてあげる!」
「ぐぎゃあああ!があ、ああああああああああああ―――!!!!」

 ボンテージの衣装を身に付け、性器を踏みつけ喘ぐ男性の姿を見るのは克昌には面白くてたまらなかった。
 暴力的行為も性的プレイとして許される範囲なら、いっそのこと――

「そのタマを潰してあげようかしら!!」

 歓喜が狂気に変わり、男性が震えながら精液を発射させる。

「ダメだって!もっと私を愉しませてよ!!しっかりち〇ぽ立たせて、子宮にブッ挿して!じゃなきゃ帰らせないんだから!!」

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 主導権を完全に握り、陽乃の裸体が曝け出される。男性の逸物を自ら飲み込むように、馬乗りに男性に乗りあげた。

「あ、ああ……」
「入ってくるよ。わたしの膣内におじさんのち〇ぽが!気持ち良い?嬉しい?」
「あああ……、震えがとまらないぃぃ」

 男性が感じて喘いでいるような表情を浮かべる。逆に陽乃の顔は苦痛にゆがむ。

「せ、めえけど、もっと激しく突けよ!!わたしの身体を開拓しろよ!」
「はひいい……あ、ああああ――!!!」

 陽乃に命令され男性が激しく腰を動かす。暴れる男性の上で膣内に入った逸物が抜けそうになったかと思えば激しく奥に突きあげる。

「うああ!そう、そのくらい激しく突いて!あっ、いいぞ……!だんだん、気持ち良くなってき・・あんっ!」

 陽乃の口からも喘ぎ声が漏れる。男性が動くと陽乃が感じる。これが女性の繋がっている状態なのかと克昌は驚いていた。

「ヤバイ、とまらない!!とまらない!!中に出していいねえ、あ、ああ――!!」
「あっ、バカ――!!」

 処女と一緒に中だしまで経験したくないと、思わず身体が飛び上がると、男性の精液が大量に噴きあがった。身体中にかかる精液に染められそうだ。

「くっせえ……ふざけんな!!」
「イタイ。・・・はい、申し訳ありません!!」
「罰として、身体を綺麗に洗え。念入りにな」
「ハ、ハイ!喜んでさせていただきます!!」

 男性は完全に陽乃の犬になっていた。
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 わたし以外の身体。
 女性の身体だけど、逞しく見える順子さんの身体。

「ウエスト、細い……余計なお肉がまったくない」

 水を浴びながらお腹を摘まんでみても、掴めるお肉はあまりなかった。

「それなのに、お尻も、おっぱいも大きい……」

 鏡に映して順子さんの、今の私の身体を確認する。
 私が右手を動かせば順子さんも右手を動かし、
 私がその手を乳房に持っていくと、順子さんも右手を乳房に移動させていった。

「ほんとうに私、順子さんになってるんだ。・・・自分の身体の代わりに、順子さんを着ているんだ」

 不思議な感覚。鏡に映る自分とは別人の顔。でも、その人は私の思った通りの動きをしてくれる。
 まるで、私をあやすかのように言う事を全て聞いてくれる。
 自分の姿が映っていないことは悲しいけど、順子さんがそれを全て慰めてくれる。

「・・・泣かないで。わたしの身体、好きに使っていいのよ」
「(ほんとう?)」
「ええ、本当よ。・・・んんっ!」

 乳房に置いた右手をゆっくり動かす。私よりも柔らかい乳房の感触と、乳房から送られてくる電流の強さに思わず順子さんの甘い声が漏れた。

「びっくりした。・・・これが順子さんの感じ方なんだ。わたしとは全然違う。直接強い電流が来るよ」

 わたしは乳房をいじる時はまわりからいじっていくので、緩やかで長い刺激が送られてくる。それはきっと、順子さんの今のような刺激に身体がまだ耐えられないからだと思う。
 だからこそ、今は順子さんの身体で、強い刺激が欲しかった。
 両手を使って乳房をカタチが変わるくらい強く揉みほぐし、中央に突起してきた乳首を自ら伸ばす様に摘まんで引っ張りだした。

「ふああっ――!!」

 大人の落ちついた声に、艶やかな甘さのエコーがかかる。気持ち良い。女性でも、他の人の身体が気持ち良いなんて、今まで考えたことがなかった。
 お尻を突き出してシャワーに充てる。ゆっくり細い指を腰から撫でおろしていくと、ゾクゾクっとした心地が襲いかかる。スベスベで張りのあるお尻をなぞられると、下半身がキュンッとときめくようにジワッと熱くなった。

「あっ、はぁ……はぁ……ん・・」
「せんぱい?大丈夫ですか!?」

 ビクッと身体が一瞬で硬直した。暁子が声を聞いて浴室まで来ていたのだ。

「だ、だいじょうぶ・・・。心配しないで」
「そうですか?お風呂に虫でも浮いてましたか?アハハ……」

 大丈夫。気付いてない。気付いてない……

「あっ。そういえば、せんぱい。先程ニュースで言ってましたけど、市内で行方不明者が出たんですって」
「んふぅ、そう……」
「私たちの追ってる事件とは全く無関係でしたけど、なんだか物騒な事件が続きますね」
「え、ええ……」

 ――くちくち・・・

 ばれてない……。ばれてない。

 話をしている先輩が、まさかオナニーをしているなんて暁子さんも思っていないはず。
 暁子さんがすぐ傍にいて、いつ扉が開けられるか分からない緊張感の中でするオナニーなんて、私も順子さんも初めての経験だろう。

 声を殺し、行為を進め、相手に悟られないように感度を上げる。

「―――――っ!!」
「せんぱい。私も入っていいですか?一緒に背中流しあいましょうよ」
「い、いやよ。んふぅ。もう。馬鹿なこと、いわないで」
「あっ。先輩、ひょっとして笑ってます?なんか今日先輩、笑顔が少ないから心配してたんですよ?」
「あはっ、そ、そう……ひぅ!あ、りがとう。ああ、きもちいい……」
「じゃあ、ゆっくり入ってください。でも、長湯は一時間までにしてくださいね」

 シャワーの音で聞こえないのだろう。私の微かな喘ぎ声を無視して暁子は浴室から出ていった。
 緊張の糸が解れ、シャワーに濡れたタイルに順子さんの愛液も一緒に流れ落ちる。

「あと少し、あと少しでいけそう……」

 ラストスパートをかける。乳房とクリトリスをいじっておま〇こに指をジュボジュボと高速で出し入れする。あまり痛くなく、すんなり入る指とそれでもわたし以上に敏感に反応する膣の感触に酔いしれる。

「はあぁんっ!んあっ!あっ!あっ、くうううぅっ、イクッ!イッちゃう!ひあああああぁぁンッ!」

 ビクンビクンと身体が痙攣を起こし、絶頂を迎えたことを知らせる。
 順子さんの絶頂はわたしよりも凄く、しばらく身体が動けなかった。シャワーで濡れても火照った身体はしばらく冷めることはなく、わたしがお湯に浸かってお風呂から上がったのは、暁子さんが去ったジャスト1時間後だった。
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 わたしの目の前に、綺麗な赤褐色のゲル状の塊がいた。
 気を失っているのだろうか、身動きをせずに、まるで疲れているかのようにドロッと地面に横たわっている。

「ハァ……ハァ……」

 わたしが息を吐く。普段のわたしとは違う吐息を吐く。
 警察官の服に初めて身を包んだのに、まるで着なれているかのような感覚。普段着よりも少し重い、身を引き締めるかのようなキツイ着こなし。
 胸ポケットに仕舞われていた警察手帳。私の代わりにスライムになった、女性警察官の名前が載っていた。
 高峰順子―たかはしじゅんこ―。26年勤務のベテラン警察官だった。

「わたし……そんな……」

 身を震わせ、抱きかかえるようにして自己をしっかり保つ。

「こんなこと……したくなかったのに……」

 久し振りに声が出る。久し振りに地面に立つ。
 自分のではない、他人の身体を使っているわたし。
 先程の男性たちは、他人の皮を被って笑っていた。わたしはそんな気になれない。
 申し訳ないという気持ちが溢れて止まらない。絶対に奪う事の出来ない大事なカラダを使わせてもらっているということが、痛いほど身にしみる。
 わたしが、わたしに戻るために、仕方ない方法だった。犠牲になったのではない。借りるだけだから――。

「ごめんなさい。すぐに返します――!」

 私は急いでその場に放れた。暗い倉庫から外に飛び出し、陽の光を久し振りに浴びる。
 まだ私が家から外に出て1時間しか経っていないことに気付いたのは、その時だった。

「あっ、せんぱい!」

 外ではもう一人の警察官がパトカー内で待機していた。

「どうでした?中に人はいましたか?犯人は?人質は?」

 彼女も人質―わたし―のことが気がかりなのだろう。いつでも車を動かせるような状態だったので、わたしは助手席に乗って指示を出す。

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「もう逃げだしているの。早く追いかけましょう」
「はい。でも、どちらへ?」
「闇雲に走って。……顔は分かっているから」
「はい!」

 彼女の運転によって急発進するパトカー。広い市内で大通りから車のは入れない路地まである。
 私は窓の外で自分の姿を必死になって探す。決して見逃さないように。見つけたらすぐに捕まえられるよう、手錠をしっかり握りしめて。
 重い鉄製の手錠を自分の腕に嵌める想像を描く。描きたくないけど、絶対にしなければいけないこと。
 覚悟を決めて――重い手枷を細い腕に括りつけよう!

「(いたっ!)」

 陽乃の姿は駅前へ向かってゆっくり歩いている途中で発見した。先程の女性も一緒にいる。指名手配の犯人の化けの皮を剥ぐには、油断している今しかなかった。

「車を止めて!」
「えっ?」

 後輩が車を止めた。急ブレーキだったが、幸運にも犯人は気付いていなかった。

「ど、どうしたんですか、せんぱい?」
「あいつ、あいつが犯人よ!!」

 誘拐事件の犯人、小池陽乃。わたしが捕まえなければ誰も捕まえられない!
 これ以上の犠牲が増える前に、なんとしても身柄を拘束しておきたい。なにより、わたしの身が安全でいてほしいというのがあった。
 後輩がわたしの指さす相手を見てくすっと、笑った。どうしたのかと思って目を合わせると、後輩は面白おかしくい表情を向けていた。後輩は逃げた犯人の顔写真のコピーをわたしに付きつけた。


「イヤですね、先輩!目撃情報だと犯人は男性ですよ?しかも、まだ子供じゃないですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・あっ――」

 そうだ。どうして気が付かなかったんだ。
 わたし一人が分かっていても、他の誰かがわたしの声に耳を聞いてくれるはずがない。
 指名手配犯が小池陽乃の皮を被っていると言ったところで、誰が信じてくれるというのか?
 わたしが警察官になったからと言っても意味がなかった。
 警察官が追っているのは、顔と名前が一致する人物だ。一致しない陽乃を逮捕なんかできるはずがない。

 ――そう言えば、犯人もそんなこと言っていたっけ。
 冷静になってようやく思い出す。
 馬鹿だ、わたし・・・・・・ほんとうに・・・バカ……

 疲れがドット込み上げて、シートに倒れこむように腰を付く。

「それとも、目撃証言でも伺ってみますか?犯人とすれ違っているかもしれませんし」

 そんなことしたら、陽乃―犯人―が嘲笑うだけだ。そんな表情、見たくない。

「…………いい。行ってください」 

 後輩が車を走らせる。わたしは横目で陽乃とすれ違う。とても楽しげに羽根を伸ばす陽乃の喜びに満ちた表情に、涙が止まらなかった。
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 わたしの身体は目の前で痴態を曝してた。
 女性と供にレズ行為をしている。気持ちよさそうに喘ぎ声をその口から漏らしながら、足を絡ませて恥部をぶつけ合わせていた。
 その空間だけが異様で、二人を見ているうちに私はこれが倉庫の中で本当に良かったと逆に安心してしまっていた。
 女性同士が裸で縺れていながら、その傍にはスライムが佇んでいる光景を見たら一体なにを思うだろう。

 奇妙、珍妙。・・・そうだ。わたしだって認めたくない。現実に起こったこと――

「はああぁぁ・・・!もう立てない・・・気持ち良すぎてつらい……」
「本当に羨ましい。女性ってどうしてこんなにイケるんだろうね?」

 談笑しながら笑いあう二人組。異様なにおいと水しぶきを撒き散らしているも女性たちは全く気にしていなかった。でも、ようやく拷問が終わったんだという思いが込み上げてきて、心なし安心してしまった。
 終わったのなら、気が済んだならわたしの身体を返してほしかった。
 でも、そうはならなかった。

「じゃあ、行こうぜ。外によ」
「おう。いつまでも辛気臭いところになんかいたくねえしな」

 ・・・・・・・・・・・・・・・えっ?
 ちょっと、待ってよ。どこ行くの?

 陽乃が床に散らばった服を取りあげて自分の身に付けていく。わたしが着ていたお気に入りの服も奪われてしまう。

「――――!!」
「んっ?なんだ?動きがないから意識を失っていたかと思ってたんだけどな」

 女性がわたしに気付いた。

「(わたしの身体を返して!もうこれ以上いじらないで!!)」

 当然、声にはなっていない。会話が成立しない以上お互いが一方的な会話をしているだけで歩み寄ることはない。

「そうか。そろそろ元に戻りたいのか?」
「(――そう!)」

 会話が通じた。女性の方から近寄ってきたことに思わず声を張り上げてしまった。女性は床に落ちた男性の皮を掴むと、わたしの方へ投げ捨ててきた。

「相方の皮だ。それを着れば『人間』の姿には戻れるぞ」
「(・・・・・・)」

 わたしは馬鹿だ。一瞬でも勘違いしてしまったことが恥ずかしい。
 決して女性は歩み寄ってきたわけじゃない。わたしの動向を楽しんでいるだけだ。
 自分の皮を捨て男として生活するか、それとも一生スライムの姿でいるかを選択させていたのだ。
 陽乃に戻れる選択はどこにもなかった・・・・・・。

「(……それだったら、人間の姿に戻りたい)」

 口があって目が付いていて、鼻がとがっていて、手と足が自由に動ける身体に戻りたい。
 軟体動物のような不定形なんて、そんなの絶対いやだった。
 それに、たとえ今は自分の身体が人質に取られようと、警察に訴えれば必ず動いてくれる。
 警察は正義の味方だ。悪い人を逮捕する。
 散々にひどい目に合わされた私を救ってくれるはずだと、信じて男性の皮を被ってこの場を立ち去ろう。
 口があれば状況を明確に伝えることができるはずだ。

 先程、男性がわたしの口の中に入った方法は目に焼き付いている。口の中から飲み込むように入り込めばいいと思う。
 疲れた精神を引っ張りながら男性の唇付近に擦りよる。そこで女性が憐れな目でわたしを見下していた。

「でも、せっかくだから忠告しておいてやるよ。よく考えてから身体に入りな」

 わたしの動きが自然と止まった。どういう意味なのかよく分からないが、女性は「くっくっ・・・」と含み笑いをこぼしていた。

「よく考えてみろ。これからおまえはどう行動する?警察に通報するか?それならなんの心配もないぞ。もうすぐここに警察が来るだろう。車のナンバープレートから身元も顔も割れる。そして倉庫の中には犯人がいる。指名手配中の極悪人が、警察の前に飛び出したらどうなる?」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ

「助けてくれと叫んでみるか?今あった経緯を洗いざらい話してみるか?警察が男の甘い声に心を揺らすと思うか?逃げ続ける生活から精神がおかしくなり、意味不明な供述を始めたと取るかもしれないな。まぁ、弁護士が無罪に向けて頑張って働いてくれるかもしれないな。だが、精神的にどこもおかしくないのに精神がおかしいといわれることを耐え続けられるか?・・・ま、まっとうな生活は二度とできないな」

 ・・・・・・・・・・・・・そういうことだったんだ。先程から女性がどうしてこんなに冷静になっていたのかようやく分かった。
 追われている身でありながら、余裕でレズ行為を続けられる理由は――もう、彼らは追われる身じゃなくなったんだ。
 皮を捨てて別の皮に入れ替わり、普段の生活に戻っていく。彼らが『粉薬』をどういう経緯で手に入れたのか分からないが、『粉薬』によって別人に成り済ましていたんだ。見つかるはずがない。

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「それに、もし今この場に警察が駆けつけたら、わたしが警察にこう叫べば万事解決だ。あ~ん!お巡りさん、助けてえええぇぇ!!ってな!」

 容疑者から被害者へ。正義の目は絶対に守らなければという使命感に燃えるだろう。それを見てきっと陽乃は嗤うのだろう。

「だから絶対におまえの皮は返さない!お前の生活すべてを俺が貰ってやるよ。おまえもこの女性と同じ、誰の目にも触れない暗い生活に身を潜めるんだな!!アーハッハッハッハッハ……!!!」

 わたしが目の前にある男性の皮を着れば――――被害者から容疑者へ。世間の目からも確立された牢屋の中での生活が待っている・・・・・・・・・・・・・。

「(そんなのいやああああああああああああ――――!!!!!!)」

 絶叫と供に遂に私の精神は壊れてしまった。
 ぷつりと糸が切れると、わたしは気を失ってしまった。

「じゃあ、行こうぜ。克昌。じゃなくて、陽乃ちゃん」
「うん。・・・・・・そういえばおまえの着ているやつの名前なんって言うんだ?」
「―――――」

 光が漏れて二人が外に飛び出していく。そして二人が出ていくと扉は独りでに締まり、金属が勢いよくぶつかった音と供に再びわたしだけを残して暗闇へと戻ってしまった。
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「もう分かっていると思うけどな、お嬢ちゃん。俺たちは元々男なんだよ」

 女性が赤裸々に告白する。

「あの『粉薬』を飲ませるとな、人を着ぐるみのようにさせることができるんだ。俺が入っているこの娘も、最初は『粉薬』を飲むことを抵抗したけど、飲めばあんたと同じように唖然としていたよ。そりゃそうだ。自分の身体に俺が入り込んだんだからな。しかも皮は俺を包み込んだまま娘の体型に戻っていくんだから、びっくりするはずさ!
 この顔で娘を見つめると、青ざめたような色をしていたな、アハハハ!!」

 ひどい……何の罪もない女性に入れ替わって屈託のない笑顔を向けている。
 女性は今も泣いているのではないだろうか。いや、もしわたしと同じ立場に立っていたとしたら――

「いま、その娘はどうしてると思う?……大丈夫さ、『粉薬』と少量の水を一緒に飲みさえすればスライム状になって吐き出される。女性もあんたと同じ状態になっているか、もしくは、俺の置いてきた俺自身の皮を着て生活しているはずさ。……ただ、俺たちは指名手配中。俺の皮を着て助けを求めに外へえ飛び出したら、逆に警察に捕まる魂胆だ。それも最後まで見ていたかったんだが、こいつが『次は俺だ』としつこくてね――」

「今に至る」と、わたしに会うまでの経緯を説明していた。
 ……そうか。指名手配の極悪人だったんだ。両親の心配を、浮かれていたわたしの気持ちが聞いていなかったことを改めて恥じる。
 ここでようやく私は泣いたのだ。涙が流れなくても、泣いていた。スライムの身体となったわたしに何の変化もないが、悔しくて悔しくてたまらなかった。

 どうしてわたしなの?
 今日は私の誕生日だよ?
 なにかが変わる一年になると思っていたのに、一日でガラッと目で分かるほどに変わってしまった。

 スライム……人間じゃない生き物。怪物、怪異、化物――それがわたし。

「なあ、せっかく女性の身体になったんだぜ。楽しませろや」

 陽乃が女性を怒鳴りつける。そんな口調一度もしたことないのに、小池陽乃はわたしの目の前にいる以上、わたしは陽乃じゃない。
 わたしは……スライムだった。なにもかも溶け落ちてほしいくらい、わたしは床に突っ伏して目を、耳を塞いでいた。

「おう、そうだな。女性が二人になるだけで華になるもんな。……あんたにもせっかくだから見せてやるよ。自分の身体がレズをする禁断の遊びをよ」

 女性二人の声は嫌でもわたしに届いていた。
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