純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ:グノーグレイヴ『幽体離脱・透明』 > 塗り薬『肝まで冷える水泳授業』

 今回のオチ。というか、後日談になってしまうだろう。

 入れ替わったクラスメイト達は、女子の身体で遊んでいるかと思ったらそうではなかった。逆である。女子たちに捕まった男子たちはスク水姿で縛られて一網打尽にされていた。

「くっそぅ!!」
「あと少しで逃げられるはずだったのに!!」

 悔しさを漏らす女子(男子)生徒。食い込む縄がスク水を締めつけ動きが取りにくい。それほど男子の力は強かったのだ。

「男子の身体って本当に体力あるわね」
「馬鹿なだけじゃないのね」
「うるせえ!縄をほどけええ!」

 叫ぶ男子の声が女子には快感になっていく。追いかけまわしている内に男子の欲求まで取り込んでしまったのか、次第に女子(男子)を見る男子(女子)の目に暗雲が立ち込める。

「しかし、自分の身体が捕まっているのを見て、なんだか興奮してきちゃう」
「そうね……。なんとなく男子の気持ちが分かる様な気がする」
「なんだか、ムラムラしてきちゃう……」
「おい、なにをするつもりだ……」

 女子(男子)が気付いた時には男子(女子)の息はあがっていた。相手を見つけると絡みあい始め、うっとりした瞳でキスを始めた。男同士でキスしてる……血の気が引いた女子(男子)たち。 

「せっかくだから、見せてあげようかと思って」
「あなたたちも私たちの身体で楽しもうとしていたんでしょう?じゃあお互い様よね?」
「これって所謂、レズシーンってやつよね?目の前で見れてさぞ嬉しいでしょうねえ?」

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「やめろおおおお―――!!!」
「俺の身体でヘンなことしないでえええーーー!!!」

 男の手で相手のおち〇ぽを握り、しこり始める……声を荒げる男子生徒…………それをみて歓喜する男子せい――



 (誰得なので以下省略させていただきます)



 自分たちが愉しむはずだったのに、結局愉しんだのは男子生徒になった女子生徒。
 まさかの展開にぐったりして心身ともに疲れてしまい倒れこんでしまったのだった。
 暑い夏で眩暈がする。
 プールに入りたいと誰かが呟く。空はどこまでも快晴に広がっていた。
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 プールに消えた男子たちは上がってきた時には劇的な変化を遂げていた。
 女子になっていた。クラスメイトの女子生徒だ。

「うっひょう~!これはまさか、楓ちゃんの身体じゃないか!?」
「うわあ!!芽衣の身長で初めてプールで溺れそうになったぞ」
「喋り方が違うと誰だか分かんねえ!おまえ誰だよ!?」
「そういう美琴と入れ替わったおまえは誰だよ!!怜治か!?」

      正直、男子の勝ち決定

 会話を聞いていて唖然とする。本当に男子と女子が入れ替わっている。入れ替わったという事は、男子が女子になったように、女子が男子になったということでもある。

「きゃあああああああああ!!!」

 浮かび上がってきた賢二と三郎と一弘が女性のような声で発狂していた。

「なにこれえ!」
「男になってる!!」
「こんなカラダいやあああ!!恥ずかしい!!」

 入れ替わった女子たちが男子の身体を見て真っ赤になっていた。逞しさから貧弱までいる男子、逆に艶やか、美人から幼児、B線までいる女子。

「はぁ、これがおっぱいの感触かあ。プールに浮かんでまじ気持ち良い~」
「こんなツルペタでも、水着が張り付く感触ってなんか照れるなぁ」
「プールの波が身体を擦って感じちまうよ。プールの時間、女子はビチョビチョだな」

 入れ替わった者たちは相手の身体をいじり始め、かたやそれを防ごうと追いかけ始める。

「あんた、なにやってるのよ!!」
「私の身体でヘンなことしないでええ!!」
「へっへん!これはもう俺の身体だもんね!!」

 プールの中の追いかけっこは水圧で思うように進まない。しかし女子は遠い距離慌てて追いかけてくる。先に端までついた男子がプールから飛び出して濡れた水着姿を陽の下に曝した。楓に至っては男子水着を着用していたのでおっぱいが露骨に曝け出された。

「邪魔が入るし、逃げようぜ」
「賛成!」
「待ちなさい!!」

 逃げる女子(男子)生徒、追う男子(女子)生徒。

「追いかけてみろ!この格好で外に飛び出して警察を呼ぶからなあ!!『たすけてえ、おまわりさん』ってな!」

 被害者と被疑者の逆転も可能の展開。男子の強気は女子という弱い身体を手に入れたことによる逆境精神だった。女子中学生が警察に泣きつけば社会的に助けてくれるだろう。男子という住みにくい社会からの脱出を可能にした、――ビヴァ!!『粉薬』!!!

 フフフ、この事実を前に女子はなんと言うだろう。

『自分の身体でしょうが!!!』

 即答された。社会云々の前に親に守られることをすっかり忘れていた。

「……あれ?有利に立つと思ったらこちらもも不利なこの言葉!そうだった!俺たち、中学生だった!!社会に出るにはまだ早すぎる!!!マジかよ!?言ってみたかったんだけどなあ」
「ひたすら逃げろ!!!」

 そうは言っても体力はまだまだ旺盛、気合もテンションもマックス、地の果てまでも逃げ切ってやる精神でスク水姿で駆け抜ける!あっという間に生徒たちが消えていった。
 しかし、そんな間にも次々と男子生徒たちがプールに飛び込んで女子生徒と入れ替わりをしていく。内気な生徒から根暗な生徒も、ここぞとばかりにこっそりとプールに沈んで女子生徒の身体を手に入れていく。

(なんだ、この流れ……男子はみんな女装癖があるのかよ……)

 女子の身体を手に入れた男子はこぞって喜び、悦に入る。女子を助けなきゃいけないはずなのに、この空気に呑まれてしまいそうな雅弘がいた。

(有紗はまだなのか。くそっ、どこだ、どのタイミングなんだよ!!?)

 きっとそうだ。残っている中には自分のお目当ての女子生徒の身体を手に入れようと待っている生徒もいるはずだ。飛び込む生徒を観察し、交換する法則があると見つけ出そうとしている奴も中に入るはずだ。雅弘は馬鹿だからそういうことは苦手だ。つまり、ヤマカンでプールに飛び込むしかない。

「雅弘も早く!こんなことしている間にも、有紗の身体取られちゃうよ?」
「分かってる!けど、いつ飛び込めばいい?」

(有紗を助けたい……最悪俺なら有紗に手を出させはしない!……だけど、もし外れたら……)

「冴子先生の身体ゲット!!大人の身体だ、いやっほぉー!!」

 冴子先生が自分の身体をまさぐり始める。憐れな姿だ。興奮する仕草だ……もし有紗が誰かと入れ替わったりしたら……!!!

「助けたい……けど……!」
「雅弘!!!」
「ええい――――!!!!」

 加奈(圭祐)が叫ぶ。ぐっと覚悟を決めたように雅弘は――


 1、今だ!飛び込め――!!

 2、まだだ!踏みとどまって次に飛ぼう――!!

 3、もう少し待とう。残りモノには福がある――!!

 梅雨が明けた近日、熱い男が熱い時代に帰ってきた。

「いやっほぉ!!プールだああ!!」

 プールにかける熱い情熱、熱意!T〇BE、サザンオー〇スターズ!夏の男が確かにいる。その中の一人、大蔵雅弘である。

「解・禁・だああああ!!!」
「梅雨が明けたからね。本当に待ちに待ったプールだよ」

 うちわを仰ぎながらも笑みを見せる圭祐。他の男子もプールを楽しみにしているようだった。熱いと言っても一週間というのはあっという間だ。圭祐が用意していたもう一つの妙薬を出すことはなさそうだ。

「もう、これはいらないかな」

 こっそりとポケットに仕舞う動作を雅弘が見つめていた。面白いものを見つけたような表情を浮かべるので、仕方なく圭祐は表に出す。

「『粉薬』」

 これで雅弘に涼んでもらおうとした圭祐だったが、使う間もなくお蔵入りである。苦笑いを浮かべる圭祐から雅弘は『粉薬』を奪いとった。

「どうするの?」
「こうするのさ……こんなもん使わなくても俺はプールを楽しめる!もう薬はいらないんだああ!!」

 窓の向こう側に消える『粉薬』。雅弘の肩を持てばかなり遠くまで飛んでいったかもしれない。あっという間に空の彼方に小さくなって消えていってしまった。

「あーあ……」

 もったいないと思う圭祐であった。

「先に楽しむのは私たち、男子はもう一時間我慢しなさいよ」

 背後から声をかけられる声に雅弘はピクリと反応を示す。

「むっ、その声は有紗!……フッ、今思えばおまえの嫌味はこの良き日のための布石だったと思おう。あと一時間後にはおまえへの嫉妬熱も心地良い風が洗い流すことだろう」

 涼しげに言う雅弘。有紗の嫌味も今は心地よく感じる境地に達したのだ。窓の外を見ながらクールを醸し出す。そんな雅弘を見て有紗の表情もフッと和らいだ。

「……わたしの強みも今日までかと思うと少し残念。よく我慢したわね」
「お、おう……」
「……我慢してないけどね」

 今までと違い雅弘を褒める有紗に動揺する。優しく微笑む有紗の表情に一瞬目を奪われる。そう言い残して教室のドアまで走って出ていくかと思うと、くるっと振り返って笑顔で――

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「夏休みに入ったら一緒に海に行こうよ、雅弘!」

 そう言い残して本当に出ていった。有紗の声でしばらく教室内が静まり返っていた。

「…………なんだ、あいつ?熱でおかしくなったか?」
「普通に受け取っていいんじゃないの?」

 偏屈な雅弘に圭祐は一応フォローを入れる。しかし、圭祐にはもっと気になる異変が辺りを包み始めていることに気付いていた。

「それよりも、他の男子からの視線が――」
「ひいぃぃ!!」

 雅弘が悲鳴を上げる。クラス中の男子が無言のプレッシャーを雅弘に与えていた。静かに席を立ちあがり、雅弘に歩み寄ってくる野球部、サッカー部、剣道部、帰宅部、etc…
 蛇に睨まれた蛙状態。熱い!熱視線だ!クラスの男子の熱気で気温が43℃を突破したよ。このままじゃ焼き殺されるかもしれない!
 有紗。最後の最後までしてくれたな。内心喜んだ雅弘の負けだった。

「あいつ!やっぱり大っ嫌いだあああああ!!!!」

 次の瞬間、雅弘はクラス中の男子の下敷きにされていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 今日のプールは珍しいことに全員出席、伊里野加奈もスク水を着て並んでいた。時折、スク水の自分をみて喜んでいる加奈を見ると、内心の変化があったのだろうかと思ってしまう。全員が出席してプールをすることに有紗は泳ぐ前から楽しくなってしまう。

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「体操をして、気を付けてプールに入ること。いいな?」

 冴子先生が言葉短めに話を終わらし、準備体操と消毒水に浸かって万全を期す。プールに次々に飛び込んでいく女子生徒。有紗も珠樹と加奈と一緒に飛び込んだ。

「きゃっほぉ!!」

 ザブンと水しぶきがあがって始まる水泳の授業。――しかし、異変はみんなが満足しながら水泳を楽しんでいた中頃に起こった。

「――なに!?きゃあああああああ!!!」

 プールから悲鳴があがったのだった。その悲鳴は誰にも聞かれることがなく、異変に気付く者は誰もいなかった。
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 有紗の登場に冴子の心臓が鳴る。生徒が保健室に入ってきてもおかしくないとしても、クラスメイト以外なら問題なかった。
 なぜ有紗が訪れたのか、まさか伊里野加奈から何かを聞いたのかと余計な心配を考えさせられてしまう。カーテンの向こうで有紗がくすくすと笑っていた。

「あ、あらっ、その声は吉澤さん。どうしたのかしら?ちょっと待ってね。すぐに顔を出すから」

 冷静沈着に冴子を演じる雅弘。自分がやったオナニーも他人には冴子がやったとしか思えないのだ。恥ずかしがることはないと状況を見渡し心に余裕を作り出す。

「先生。私、見ちゃったんです」
「見たって、なにを?」

 白々しく問う冴子に有紗は面白がって笑ってしまう。

「伊里野さん、嬉しそうに一人芝居しながらスク水着てたとことか」

 ドキッと冴子の胸が大きく高鳴る。雅弘が動揺してしまったのだ

(そうして、有紗がそのこと知ってるんだよ!?)

 有紗はずっとプールにいたはずだ。更衣室に足を運んでいたとは考えられなかった。だが、それだけじゃなかった。

「川澄さんの身体で私にイヤらしいことしたとこも――、いま、先生の身体でイヤらしいことしたとこも――」

 まるで冴子ではなく、憑依している雅弘をピンポイントに話しかける有紗。しかもしれがハズレではなく当たっているので無気味であった。

(なんなんだ!?有紗、ほんとうに俺が冴子先生に乗り移っていることを知っているみたいな口ぶりじゃねえか。なんで『飲み薬』のこと知ってるように聞くんだよ!?)

 心が激しく高鳴る、冷静さは欠片もなくなり、溶けた心が水になって汗として流れ落ちる。息を荒く吐き出していく。その息使いが聞こえて有紗は何を思うだろうか。

「……せんせい?」

 カーテンが勢い良く開けられて思わず悲鳴をあげてしまう。遂に有紗と対面を果たす。だが、普段と様子が違っていた。

「な、な、なんて格好してるんだ!?」

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 有紗はスク水の上に制服を纏っていた。濡れたままワイシャツを羽織ったのか、濡れてスク水をうっすら浮き上がらせていた。
 そして有紗はスカートを穿いていなかった。下半身は紺色のスク水と白い足を股下まで露出させていた。。
 まさか、その格好で保健室まで来たのだろうか、だとしたら有紗を目撃した生徒がいたら思わず振り返って視線を集めることだろう。
 エロイ、エロすぎる格好だった。

「あ…ああ……」

 思いとは対照的に有紗の冷ややかな視線が冴子を怖がらせる。有紗がベッドに乗りかかったので、背後の壁にずがりついてしまった。

「この格好好きでしょう?――――雅弘」

 心臓が跳ねあがった。有紗は雅弘が冴子に憑依していることを確信していた。

(どうして!?なぜ!!?いったい、どういうことだ――!?)

「ウフフフ……」

 おい詰めるように冴子に近づく有紗。背中の壁が硬い。冷たく笑う表情に睨まれ思わず涙目になってしまう。だが、その時、雅弘に今の状況を説明する一つの可能性が思い浮かぶ。

「―――――――――けいすけ、か?」

 有紗がピタッと動きが止まる。憑依することを知っているのも、誰にも見られずに雅弘の痴態を見ることもできたのも、説明できるとしたら今、目の前にいる有紗は『飲み薬』を知っている人物が乗り移っている可能性だけだ。
 正解を聞くまで身体を強張らす冴子だったが、有紗の表情がふっと緩んだのを見た。

「…………どうして分かっちゃったかな?完璧に有紗のマネが出来たとおもったのに」

 冴子(雅弘)はようやく脱力できた。

「脅かすなよ。マジでびっくりしたじゃねえか!」
「うん。その顔が見たかったんだ。自分だけ良い想いするのはいただけないよ」

 有紗(圭祐)が冴子(雅弘)を咎める。

「俺はプールに入りたいっていうから貸したんだよ?」
「わかったよ!俺が悪かった!ごめんなさい。俺は女子のスク水着て楽しんでた変態です!」

 有紗(圭祐)が笑う。その表情はいつも雅弘に見せる有紗と全く同じ笑みだった。

「じゃあ、俺も女の子の快感を楽しませてよ」

 有紗(圭祐)が冴子の上に跨ってきた。冴子(雅弘)は有紗の細い身体をしっかり受け止めた。
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 皆が久し振りに見るスク水姿の加奈に目を奪われていた。駆け足で戻った加奈は、準備体操もしないでプールに飛び込んだ。

「いやっほぉ~!!!」

 ジャボーンと水しぶきがあがり、ブクブクと気泡を吐き出す。
 
 ・・・・・・しかし、加奈の身体は全然上がってこなかった。

「・・・伊里野さん?」

 この時、プールの底では加奈には大変なことが起こっていた。勢いよく飛びこんだ加奈の髪が排水溝に絡まり取れなくなってしまったのだ。

(ウソ!?マジでやばいよ!!だずげでえ――!!!)

 慌てれば慌てるだけ余計な気泡を吐き出してしまう。息が長く続くこともなく、加奈は水の底で意識を失った。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「…………うっ……」

 雅弘が意識を戻した時、伊里野の顔がすぐ近くにあった。気を失ってはいるものの、日差しを浴びているということは、どうやら誰かが伊里野の髪を解いて引っ張り上げたのだろう。気を失った伊里野を皆が心配そうにのぞいていた。その中心にいる雅弘。

「先生、加奈ちゃんは大丈夫ですか?」
「えっ、あっ」

 先生……?俺が…………?

 そういうことかと理解した。どうやら人工呼吸をする先生の唇を通して、俺は無意識に加奈から冴子先生に乗り換えてしまったようだ。
 気を失っていた加奈が目を開けた。皆が喜んでいた。

「加奈ちゃん!大丈夫?」
「…………みんな。なに、この集まりは……?」

 加奈は今までのことが記憶がない。雅弘に憑依されていた間、気を失っているような状況だ。つまり、加奈は溺れていなくても気を失っていたのだ。またも状況的に救われた。

「えええ!!?なな、なんでわたし、スク水着てるの!?きゃああああ!!みんな見ないでえええ!!!」

 加奈は一人混乱していた。やっぱり一人芝居は覚えてないか……少し残念に思う。
 しかし、この一時間で有紗、珠樹、加奈と体調を悪くしてしまった。一般生徒が見たら危険なプール授業である。これは確かにまずいと思った俺は場所の変更を余儀なくされる。

「みんな。先生は伊里野さんを一度保健室に連れていくから、これから自習時間に切り替える。あがりたい人はシャワーを浴びてよく身体を拭くこと。もう少し入りたい奴はもう一度準備体操をしてから入ること、水は大変危険なことをもう一度確認すること。いいわね!」
「はい、先生」

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 クラスメイトは水の危険を改めて自覚するように返事をした。
 無理やり加奈を連れていく格好を取り、冴子はプールを後にした。

「わ、わたしは大丈夫。先生放して」

 もちろん、都合を合わせるために加奈も保健室に行く前に解放した。加奈も恐らくスク水を脱いで着替えるために更衣室に戻るだろう。

 雅弘に残ったのは、偶然にも手に入れた冴子先生の身体だった。

 保健室に入り、誰もいないことを確認する。この時間保健の先生は男子に保健の授業を教えているのである。初瀬中学校では体育の先生が責任を持って保健室の管理を任されているからである。
 冴子は保健室のベッドにダイブした。嬉しくて思わず飛び込んでしまったのだ。ボブっと布団が冴子の身体を受け止める。水着が含んだ水分がベッドに侵食して濡れてしまっていた。
 そんなことお構いなしに冴子はベッドではしゃいでいた。

「今までずっと我慢してきたもんな。そろそろ俺にも女性の快感を味あわせてもらおうかな、ニヒッ、先生の身体でね」

 楽しくて仕方がない。雅弘はようやく水着の上から乳房を掴みだしたのだ。続きを読む

 珠樹(雅弘)はプールから上がり、水浸しな身体でタイルを歩く。外に出るとさすがに陽射しが強いのがよく分かる。足から容赦なく熱を取りこみ、裸足だとやけどするのではないかと思うくらいタイルが熱くなっているので自然と速足になってしまう。もう一度プールに入って中で次の相手を探そうとした矢先、この熱い気温の中一人だけ運動着姿の生徒が目に入ってしまう。
 伊里野加奈だった。

「伊里野さん、プール入らないの?」
「入らない」
「どうして?こんなに熱いのにもったいないよ。プール道具忘れたの?」
「そうじゃないけど……」

 突然口籠る加奈。

「とにかく入りたくないの!ほっといてよ!」

 強制的に会話を終わらしてしまう。わざわざ運動着も冬服用を着て汗を滲ませている加奈は、どうやら訳ありらしい。雅弘はプールに入れない理由をどうしても知りたくなってしまった。

「…………決めた」

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 珠樹(雅弘)は笑みを浮かべると、珠樹の身体から外に飛び出す。簡単に抜けだした幽体は、身体から完全に放れると、珠樹は意識を失って地面に倒れこんでいた。皆が驚く様に珠樹に駆け寄り、加奈も珠樹を唖然とした目で見ていた。

「次はきみだよ、伊里野さん」

 背後に近づき、すぅぅっと身体を重ねる。

「ぅぁ!……ぁっ、ぁぁぁ……!!」

 加奈が苦しい声をあげたが、騒然とした場で誰も加奈の声を聞くことはなかった。ぶるぶると震えて、必死に抵抗して見せるが完全に雅弘は伊里野と重なり合う。珠樹が目を覚まし、何が起こったか分からないで辺りを見渡している頃には、雅弘の乗り移りは完了していた。
 震えも治まり、運動着で日焼けを防いでいる体育座りの加奈を水面に映してにやりと笑った。

「よかったわ。とにかく珠樹さんが無事で」
「えっと、先生。あの……ご迷惑おかけしました……?」

「――せんせい!!」

 伊里野が元気に立ち上がった。

「わたし、急に泳ぎたくなりました!泳いで良いですか?」
「え?……え、ええ。水着を持ってるなら泳いだ方がいいわね。授業できるの?」
「ハイ!!」

 楽しげに笑う伊里野。水着に着替えるために一回みんなの前から姿を消して更衣室に走り込んでいった。続きを読む

 川澄珠樹に乗り移った雅弘は、初めて女子の水泳の授業に参加することになる。
 いったいどんな厳しい内容をやっているのかと思い、冴子先生の話を聞く。

「あー。内容は昨日と同じだ。授業が終わるまで自由に泳いで結構。怪我だけはするんじゃないぞ。準備運動だけはきちんとすること、以上」

 …………なんという、イージーモード。地獄さながらの男子の軍人授業と比べればここは天国以外の何物でもない。
 よって、女子たちは次々とプールに飛び込ませていく。

「きゃっほい!!」

 ジャボーンと水しぶきが飛ぶ。平和、極楽、天国、ここは何処?と陽射しに問いただしたい。

「おまえがいくら熱を消費しても、濡れた肌にはなんの効果もないわ、ワハハ――!!」

(これだ!これを味わいたかった。灼熱の日差しに勝ったという達成感。――ビバ、プール。――ビヴァ、水泳授業!)

 感動が込み上げてくる前に、影が落ちる。

「珠樹!」
「うわああ!!」

 一段と大きな水しぶきに潰される。プールの底から顔を出すと、有紗が乗っかってきていたのだ。

「えへへ。今日は上機嫌じゃない。珠樹も笑った方が良いよ」
「そ、そうかなあ。アハハ……」

 確かに珠樹は一人でいることが多く、笑ったところを見ることが少ない。
 そう、プールとは、人々を笑顔にする効果がある、に違いない!

「おかえし、有紗!」
「きゃあっ――!もう、えい!えい!」

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 水の掛け合いを始める珠樹と有紗。絶対雅弘には見せない有紗の無邪気な笑顔。もし今、珠樹に雅弘が乗り移っていると知ったら有紗はどんな態度を取るだろう。
 しかし、そんなことを忘れるように珠樹(雅弘)は有紗と遊ぶ。……本当に、楽しい時間であった。

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「バカヤロウ!」

 翌日、急に雅弘が血相変えて怒りだす。こんな熱く蒸した日に誰かが怒っているのを見るのも鬱陶しい。

「冷静になって思えば趣旨が違うじゃねえか!俺はプールに入りたいんだ!女子の水着を見たいわけでは決してない!」
「観賞したいって言っておいて説得力無いなあ」

 まったくもって自己弁護乙、である。有紗も笑っていた。

「バイバ~イ、雅弘。今日も楽しんできてあげるわよ」
「有紗に言われると無性に腹が立つ!つうかあいつ、絶対嫌がらせに声かけてるよな。……うがあ!!あちい!俺はプールに入りてえ!誰でもいいから俺をプールまで連れて行け!」
「……今ここに50m飛び込み台があったら蹴り飛ばしてやりたい」

 雅弘が怖さも忘れて「ひゃっほぅ~」と喜びながら落ちていく様が見れるだろう。圭祐にとって雅弘は世話がかかる友人であった。

「仕方がない。これを使いなよ」

 圭祐がポケットから液体の入った小瓶を取り出す。

「ん?なんだ?なんだ、その妙薬は?」
「『飲み薬』だよ。これで誰かに乗り移って遊んで来ればいいよ」

 雅弘の表情が固まる。火山の噴火のように怒ったかと思えば急に氷山の氷結のようにコロコロ表情が変わるのも面白い。

「えっ、誰かって……ダレ?」

 雅弘が白々しく聞く。

「この時間に泳いでるのは俺たちのクラスの女子でしょう」
「つまり、それを飲んで」
「そう。クラスメイトの女の子に憑依しちゃいなよ」

 それが一番雅弘のニーズに応えられるだろう。固まった雅弘の両手が白クマのようにゆっくりと両手を挙げたかと思えば、表情は驚きと笑みを浮かべ合わせながらて固まったまま、

「ひょうい…………うひょ~い!」
「…………サブッ」

 なんとも分からない声をあげて喜んでいた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 『飲み薬』を飲んだ雅弘は意識がふっと軽くなる。精神が身体から放れてゆらゆら中に漂っていた。

(お、おお!俺の身体が下にある!?これが幽体離脱か?はは、マジで身体が軽くなったように浮かんでやがるぜ)

 時間が経ってようやく状況を飲み込んできた雅弘は早速、熱さも感じない幽体をクラスメイトの女の子がいるプールに向けて走らせていた。

「雅弘………行ったのかな?……プールかあ、いいなぁ。俺も入りたいなあ」

 雅弘が飲み残した『飲み薬』を見ながら圭祐はポツリとつぶやいた。続きを読む

「あちい~!あちいぃぃぃ~!!!」

 学園中が蒸していた。気温、午前中にもかかわらず34℃超え、湿度60%!
 授業なんかやってられない!大蔵雅弘―おおくらまさひろ―は一人騒いでいた。あまりの暑さに、隣にいるクラスメイトに抱きついてしまう。

「あつい!!!」
「ええい、暑苦しい!!騒ぐなあ!!」

 雅弘を引き剥がす様にして退散する生徒。背中に纏わりつかれただけでも暑苦しいだろう。カラッとした暑さではなくジメッとする気温が好美町の特徴だ。おかげで夏は学園で呻き声が木霊する。

「男子のプールはまだなのかあ?こう暑くちゃ身体が溶けちゃいそうだ」
「確かに、男子だけ一週間プール開きが遅いって言うのもおかしな話だよね!?」

 杉野圭祐―すぎのけいすけ―も持参したタオルとうちわを手にしている。初瀬中学校は中学であるにもかかわらずプールは男女別にされている。しかも決まって女子の方が一週間早い。今日は雅弘のクラスも初めてのプール授業であった。女子生徒たちはウキウキしながら水着の入ったバッグを持って教室を出ていく。残された男子は陸上でマラソンである。こんの、クソ熱い中でマラソンとか、ありえねえ。

「男女差別だ!集え男子諸君!!全軍突撃!これより総攻撃をかけるぞ!!」
「うるさーい!!!」

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 俺の大声よりもさらに大きい怒声が響く。最後まで残っていた女子生徒、吉澤有紗―よしざわありさ―だった。

「ばっかじゃないの?暑さで頭までやられたようね」
「うっせぇ。俺たちは軍人じゃねえっつうの」
「はぁ、これから楽しいプールの授業……。あんた達の分まで涼しんできてあげるから感謝しなさい」
「ほほお。それは俺たちへの挑戦状と見なしていいのか……てめえ、有紗!そこになおれ!!」

 顔を上げるとすでに有紗の姿はどこにもなかった。俺が叫んだせいで熱だけがこもる。有紗め、ちくちょう……背中があちい……。

「くっそお。羨ましいぜ。俺もプール入りてえ」
「あと一週間の辛抱だよ」

 圭祐が笑いながら言う。

「それよりもさ。俺たちは俺たちで教室内を涼しくする方法を考えようよ」

 教室から出ていく圭祐を追って歩く。せっかく圭祐がくれた題材があるので、圭祐の用事が済むまで良い時間潰しとばかりに考えて歩く。

「風通しを良くするとか、クーラーを設置するのか?」
「もっと。見た目も涼しいものだよ」
「?」

 圭祐が向かった先は校舎の裏だった。誰も来ない場所も日差しだけはよく通す。炎天下の外に出た圭祐は一体何を始めるのかと思えば、『塗り薬』を取り出すと校舎の壁に塗りつけたのだ。ペタペタと大量に塗っていく薬だが、校舎の壁にいったい何をしているのかは見当もつかなかった。

「おい、なに塗ってるんだ?」
「俺の妄想」
「はっ?」

 良く分からない回答が帰ってくる。圭祐はにこりと微笑むと、『塗り薬』を懐にしまった。

「よし。じゃああとは女の子の帰りを待ち詫びよう」

 結局、圭祐が何をしにきたのかは分からない。貴重な休み時間を奇妙に過ごした俺は、涼む間もなくマラソンへ参加するしかなかった。
 運が良かったのは、陽が陰って直接紫外線を浴びなかったことだけだった。

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