純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ: グノーグレイヴ『憑依・乗っ取り』

 伊澤光-いざわひかる-は昼食の時間が終わると学校を抜け出して家に帰ってきてしまった。
 別に体調が悪いわけじゃない。サボりだ。
 クラスを仕切る学級委員長としてあるまじき行為だ。
 扉を開けて帰ってきた光に対して、姉の伊澤裕香-いざわゆうか-が丸フチ眼鏡の奥で目を丸くしていた。

      生徒会長の姉

「光。あんた、学校は?」
「えっ、あっ、きょ、今日は体調が悪くて早退してきた」
「やだぁ、風邪?しっかりしなさいよね」

 家の中で裕香がいたことは光にとって計算外だったらしく、わざとらしい嘘で誤魔化していた。
 妹の嘘に気付くこともなく、裕香は光を心配していた。
 元々真面目な姉の裕香だ。生徒会長までやっていた姉である。大学に合格してから都会に行って物件を探したりで地元にいなかった裕香だが、春の旅支度を済ませて昨日からは一足早い春休みを満喫しているのであった。
 その姿はどこか気が抜けていて生徒会長っぽくない。クラス委員長の光のほうが会長の風貌があった。

「いたんだ、生徒会長」
「なにそれ?嫌味?」

 ぼそっと吐いたつぶやきを裕香に聞かれ、慌てて光は部屋へと戻っていった。
 一階に姉がいるとはいえ、彼女は当初の目的だった場所へ辿り着いたのだった。

      憑依後

「・・・へへ。勝手に授業サボっちまった。委員長が知ったら怒るだろうな」

「ま、知る術はないけどな!」と、突然光は自分のことを他人行儀に独り言を漏らし始める。気の抜けた表情は、裕香とは違うどこか歪みを含んだ笑顔であった。
 そう、伊澤光はいま他人に身体を乗っ取られているのだった。その人物とは藤間魁人-ふじまかいと-というクラスメイトの不良学生であった。魁人は光に学園生活の素行の悪さを指摘され、腹を立てたことで復讐してやろうという一心で、ひょんなことから手に入れた『飲み薬』を使い幽体離脱し、そのまま光の身体に憑依したのだ。
 結果は御覧の通り、いまや伊澤光のすべてが藤間魁人の思うがままなのである。他ならぬ光の身体で学校をサボり、家路を歩いて帰ってきてしまったのだ。
 委員長が授業をサボるということを達成したので、魁人は満足しているのだが、それだけで憑依を止めるつもりはなかった。
 魁人にとって初めて入る同級生の部屋だ。真面目で生徒や先生にも信頼があり、クラスの中心に立つ学級委員長――伊澤光いざわひかるの部屋なのだ。
 光(魁人)は辺りを見渡した。委員長と言えど少女趣味のぬいぐるみや学習机、クローゼットにかけられたワンピースと全身を映す姿見まで置いてある。男性にはなじみのないアクセサリーの数々が置かれていた。光もまた女子力をあげる努力を欠かしていないことが伺えた。

「すーはーすーはー」

 光の鼻で大きく息を吸って息を吐く。
 女子独特の匂いが部屋に微かに残っている。普段感じたことのない甘い匂いを感じ取ることが出来た。

「これが委員長の部屋かー。んんーっ!委員長の甘い匂いがする。たまんねえぜっ!」

 普段と環境が違うことに興奮を覚える光(魁人)は、さっそく姿見でいまの自分を見ることにした。目の前の鏡に映しだされた美少女。青いロングの髪の毛を靡かせて、整った顔立ちに目を奪われていた。
 筋がしっかりと通った鼻、潤みを帯びた小さな唇。大人びた風貌を持つ光の姿が魁人の目の前に映っているのだ

「(普段見ている委員長と違うな・・・なんか、イヤらしい顔してんな・・・)」

 魁人自身がしているのだが、その表情や思惑を光が浮かべるのだ。目を吊り上げて侮蔑な眼差しを向ける委員長の姿とは比べ物にならない、妖艶な眼差しを鏡の中の自分に向けている。
 おもむろに、スカートの裾を持って上にあげる。すると、光の制服は自らの手で持ち上げられ、白地のショーツが顔を出した。

「(うわぁ。委員長がパンチラして誘ってるみたいだ。最っ高だ!)」

 同級生に痴態させる行為に興奮を覚える魁人は、スカートを下ろした流れで自然と手を光の胸へと置いていく。心臓が高鳴っているのが痛いくらいわかった。
 鏡の中で光もまた自分の胸に手を置いて同じポーズを取る。光の動きは魁人と同じ動きをしていた。そのことが魁人の目の前に立っている光が魁人自身であることを証明していた。

「(もっと委員長の身体でイヤらしいことしてやるっ!)」

 魁人は視線を落とした。魁人の身体と比較して一回り小さな光の身体。狭い肩幅。その下には綺麗な形をした乳房が制服を押し上げている。
 制服の上から覗きこむと、彼女の香りに包まれた空間の中でブラに収まって谷間を作っている二つのお椀が見えた。くっきりと見えるほど深い谷間を作るほどのたわわに実った乳房だ。成長期に入った光の乳房を曝すように、制服の中で器用にブラジャーを外していく。

「簡単、簡単♪」

 プチンと、フックが外れてブラを脱ぎ捨てる。それだけで鏡に映った彼女の胸を制服越しに見ると、ノーブラになったことで乳房が制服を推しあげているように映っていた。制服生地の裏から二つのボッチを作っている。そして、改めて自分の胸に手を置くと、先ほど以上に柔らかい乳房を堪能することが出来たのだ。

「うはっ。すごっ・・・」

 先ほど触れた時より意識して、さらに指を押し沈める。制服の奥で胸が光の手によって形を変えられている。ぐにゅぐにゅと形を変えて沈む乳房と、コリッと硬くとがっている突起物の違いを感じる。
 指をぱっと放すと、乳房は弾力を見せて元のお椀の形に戻っていった。

      隙あらば揉め!

 今度は反対側も同じ様に指で押し沈める。先ほどと同じ力で潰していく乳房は同じ柔らかさと弾力で押し返していく。左右均等にそろった乳房を交互に弄ぶ。
 光の手で、光の胸を揉みし抱いていく。

「(うへぇ!委員長が自分で胸を揉んでるんだ。俺の意志で・・・)はぁぁ~!」

 光の口から甘いため息が吐く。興奮が高まったことで、先走り汁が染み出したような感覚があった。光の身体で秘部が疼き始め、ショーツの奥で切なくもの寂しい感覚に陥った。

「(これは・・・まさか、まさか・・・)」

 いても立ってもいられない光(魁人)は、ベッドに腰掛け、姿見を持ってくると、腰にしまっていたスカートを下ろして、下着姿を曝しだした。そうすることで、もう一度魁人の興奮度は高まっていった。
 鏡に映る光の年相応の白いショーツ。生徒によっては派手なエロ下着を身に付けていても不思議じゃないが、逆に委員長の潔癖さを物語るに相応しい下着となっていた。

      地味パン・・・

「(委員長だってオナニーくらいしたことあるくせに下着は地味なもん穿いてるなぁ)」

 衣服を脱いで肌寒くなっているはずの光の身体が、少しずつ熱を帯びていく。

「(生パン食い込みだっ!おりゃ!)ふああっ・・・!」

 ショーツを掴むと――思い切り上に引き上げてみると、生地が股間に食い込んで縦に割れている。まるで光の秘部をそのまま模っているように見えた。愛液が染み込むショーツの上から、興奮の声を喘ぎだした魁人がいよいよ弄り始める。光の股に人差し指と中指を持って行き、二本の指でゴシゴシと筋に沿ってなぞり始めた。

「(なっ、なんだこれ・・・ちょっと触っただけなのに、なんかっ・・・)はぁ、はぁ」

 部屋に木霊する光の喘ぎ声が大きくなっていく。ショーツの上から弄っているのに、指の腹に押されて沈むショーツはどんどん愛液を吸い取っていく。次第に力が強くなっていることに気付かず、光の秘部を推し続ける。緩急を付けたり、強弱をつけたり、浮き沈みを激しくしたりしてショーツを愛液に濡らしていく。すると、コツンと光のクリ〇リスに指が当たった。

「(んああっ!こ、ココ・・・ビリビリするっ!)はっ、はっ、あっ、はっ」

 ショーツの上からでも分かるくらい硬くなっている光のクリ〇リス。場所が分かると狙い撃ちするように、左右に揺らしたり、弾くようにデコピンしたりしてクリ〇リスの感度を高めていく。

「くぁああっ!ひっ、ひぃぃっ!」

 変な声をあげながら、完全に勃起したクリ〇リスを摘まむように左右から挟んでやる。すると、乱暴にされたことで限界を迎えたのか、軽い絶頂が襲い掛かってきたのだった。

「ひゃああああっ!!い・・・いま・・・はぁ・・・イったのか、俺・・・・・・」

 思わずイってしまったことに驚く魁人だが、男性と違い絶頂が弱く、イってしまっても体力が残っている女性の絶頂に、続行を決断する。ショーツを脱いでおま〇こを曝すと、イったばかりだけあってびちゃびちゃに濡れていた。

「(委員長の生マ〇コ・・・エッロ)」

      染みパン・・・

 よく見ておこうと魁人は鏡に曝して左右に拡げる。愛液に濡れる潤んだ膣の奥には処女膜も見え、パクパクと口を開けるように蠢いていた。

「(委員長の膣内・・・マジ綺麗だ・・・)ハァ、ハァ・・・」

 光本人でさえ秘部を曝し、奥を覗くことはないだろう。本人も知らない穢れなきサーモンピンクの膣肉を見ながら、彼女の細い指を挿入していく。

 ちゅく・・・

「ふぁああっ!」

 ゾクゾクと背筋が震えるほどの快感が襲い掛かる。クリ〇リスとは違って微弱な電流が列を成して襲ってくるような感覚だ。膣が轟き、指に這ってくる生々しい温かさと感触。これが光の膣肉の感触なのだ。

「あっ、あっ、あっ、きもち、いい・・・」

      強調!

 ちゅくちゅくちゅく・・・

 指の長さはたかが知れており、入口付近をくすぐることしかできない。それだけでも愛液が分泌して指の腹を濡らしていく。クリ〇リスと乳首がさらに硬くなり、弄れば弄るほど快感が削ぎ落されていくようだった。

「もっと・・・もっと気持ちよくなりたい・・・・・・」

 うわ言のように呟く光(魁人)は鞄を取りだす。すると、光の鞄の中から出てきたのはディルドバイブだった。こうなることを予想して魁人は帰り道にアダルトショップによって一本購入してきたのだ。光の身体で。
 彼女でさえ使ったこともない男性の肉棒さながらのディルドバイブを持ち、膣口に宛がった。

「こんなに濡れてるなら・・・きっと、イケる・・・・・・」

 挿入する感覚なんて分からない。何度もこの辺かな?と試行錯誤しながらスジに滑らせているうちにシリコン亀頭が愛液で濡れてくる。そして、にゅるんと、滑らせるようにバイブが膣内に入っていくと、光の膣内で充満した愛液が潤滑油のように働き、一気に奥まで潜り込んでいった。

「ふぎぃぃぃぃ~~~!?!?!?」

 自分が挿入させたというより、勝手にバイブが挿入していったという方がニュアンスは近いと思ったのが魁人の感想だった。身体が引くつき、膣が締め付けバイブが奥まで埋まったことを直接感じることが出来る。これが、女性の感じる犯されている感覚なのだろうかと、イヤでも苦しくて愛液が噴きだしてくる。

「こ、これ・・・ハァ・・・抜かなくちゃいけないのか・・・ハァ・・・抜かなくちゃ・・・」

 奥まで挿入したままでいられないけど、抜く時の恐怖心が身体を戦慄させる。どうやって抜いたらいいのかさえ分からない。しっかりと締め付けたバイブを引っこ抜いたら、子宮ごと飛び出してしまうのではないかとさえ思ってしまうほどだ。光の膣に埋まったバイブを抜くために動かすだけで強烈な刺激が敏感に襲い掛かる。好奇心に挿入したバイブでイキ狂いそうになっていた。

「指なんかの比じゃない。痒いところにバイブが届いて、ココ、引っかかれたりでもしたら間違いなく・・・!」

 Gスポットの場所が魁人には分かり、触っちゃいけないと身体が教えているにも関わらず、その好奇心と興味本位が抑えきれない。
 どうせこの身体は自分のではないという精神が働き、光(魁人)はバイブを小刻みに動かしてGスポットを突きまくった。

「ハァ、ハァ・・・くっっ、ぅくうぅぅぅっ!うあぁぁああぁっ!!」

      尿意が一緒に

 差し込んだバイブに突かれた光の身体が一瞬浮いたと思った瞬間、ベッドに崩れ落ちて脱力していた。
 絶頂とともにバイブは抜け落ち、愛液と供に吐き出しながらベッドに転がっていった。そして、膀胱に溜まっていた尿意が同時に襲い掛かり、放物線を描いてベッドにボトボトと音を立てて噴き出していた。

「あっ、あっ、あっ」

 身体の制御ができず、溜まった尿意は途絶えることなくベッドシーツを濡らしていた。光のベッドにはおねしょをしたような大きなシミが出来あがっていた。

「あ~~~。やっべ・・・、委員長のベッド汚しちまった」

 自分のものではないにしても、委員長の素行を踏みにじる後ろめたさに思わず罪悪感が芽生えてしまった魁人だった。
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「坂本怜夢-さかもとれいむ-ちゃんとぷぷぷ、プールデートだぁぁぁ!!」

 緑風光武-みどりかぜみつたけ-は手紙の内容に舞い上がっていた。
 JBT46の1人、坂本怜夢-さかもとれいむ-とのお忍びプールの誘いを断る男は一人もいない。
 早速準備を進めていた俺のもとに、ドアを蹴り破る勢いで開け放つ妹たちの怒声が響き渡っていた。

「その手紙がお兄ちゃんなわけないでしょう!」
「私たちの手紙勝手に覗かないでよ。失礼じゃない」

 妹の千秋-ちあき-と優海-ゆみ-が怜夢の手紙を奪い取る。どうやらその手紙は妹たちに宛てられた手紙であり、妹たちこそ怜夢ちゃんとお忍びでプールに連れてってもらえる正統者だと主張していた。

「う、う、嘘だああぁぁ!!俺は怜夢ちゃんの推しファンだぞ!それくらいのサービスあって然るべき金額をつぎ込んでるんだ」
「いくらつぎ込んだの・・・」
「お兄ちゃんはファン止まりでしょ。私は一緒に活動しているメンバー。普通この手紙私宛てだってわかるでしょう」

 何を隠そう、妹の千秋はJTB46のメンバーであり、怜夢と一緒に歌って踊っているアイドルである。千秋と怜夢は密かに交流もあり、優海も一緒に遊んでもらっている仲だった。
 怜夢と俺はプライベートでも顔を合わせたこともあるので、普通のファンより距離が近いと思っている。
 しかし、妹だからこそアイドルなんてとてもとても似つかわしくないことを知っている。「あんなガサツで横暴な妹のどこにアイドル要素があると言うのだろう」。

「優海。今からお兄ちゃんが一人なくなるけど、問題ないよね?」
「お兄ちゃんが一人なくなるというパワーワード・・・」
「はっ、しまった!うっかり口を滑らせていた!?」
「血を分けた実の妹に金を振り込まない癖に――!!!」
「ぐぎぎ!ばか、千秋!そ、その関節は、そっちのほうには曲がらな、あっ、あっ、ああああーーーー!!!」

 腕ひしぎ十字固めが完全に決まり、悲鳴をあげる。解放されたのは優海によってKO取られたあとだった。

      晴れてJBTメンバー

「お兄ちゃんは勝手についてこないでよ」
「頼む!俺も連れて行ってくれ!荷物持ちやるよ、鞄持つの大変だろ!?金!全額出してやるから!車出すから!!!」
「普段同じことで上司にいじめられて泣いてるのに・・・」
「お兄ちゃん必死過ぎ」

 妹たちに何と言われようと、怜夢ちゃんと泳ぎに行けるこの千載一遇の機会を逃してたまるか。

「男はいざとなれば足の指だって舐めることができるんだ」
「それ、男のほうがむしろご褒美で女のほうが恥ずかしいよね」
「むっ?そうなのか?じゃあどうすればいいんだ?」
「アーーーハッハッハッハ!!!」

 プライドを捨てた特攻作戦も交わされて万策が尽きたその時、千秋の高笑いがこだました。

「いいよ。連れて行ってあげようか?」
「ほ、ほんとか?」
「その代わり、一年間は私たち姉妹の言いなりだけどいい?」
「はぁ!?誰がそんな契約飲めるか、いい加減にしろ!」
「プライドが超回復してる・・・っていうヒールワード」

 すべてを捨て去った俺の頭の中に、今まで浮かれていて気づかなかった発生と原因に至る。 

「ん?・・・まてよ。あの手紙・・・・・・優海。手紙どこに置いていた?」
「私の机の上だよ」

 俺が手紙を見つけた場所は扉の下だぞ。ご丁寧に二つ折りにされて隙間に挟まるように丁寧に仕舞われていた。
 風で飛ばされたにしては明らかに不自然だ。と、いうことは、誰かが俺に知らせるためにわざと置いた可能性が出てきた。
 その人物とは、手紙の置き場所を教えた優海じゃなければ一人しかいない!

「千秋。すべてお前が企んだことか!?」
「ひどい!企んでいるなんて・・・っ。お兄ちゃんヒドイ!」

 うわ、いきなり泣き真似しやがった。滅茶苦茶あやしい。

「冷静になればお前、俺のこと普段から『お兄ちゃん』なんて呼ばねえじゃねえか!」
「・・・・・・ちッ・・・」

 アイドルが舌打ちすんな。本性あらわしたな。

「お兄が好きな怜夢ちゃんをちらつかせれば私の手駒になると思ったのにな」
「なるか!実妹を好きになる兄なんかいません」
「でも、お兄は妹属性好きなんでしょ?遊んでるゲーム全部『妹』に関係するものばかりだし。わざわざ女主人公を選んで衣装替えして遊んでいる姿どことなく優海ちゃんにそっくりだし」
「女主人公を妹そっくりにして遊ぶっていうプレイワード…変態だね!」
「妹が可愛くねえからだよ!別にいいだろ!千秋に俺の趣味をとやかく言われる筋合いない!」
「お兄が好きなゲームって最終的に妹とHな事するのが定番なんでしょ?もしかしたら・・・お兄ぃ・・・私たちのこと・・・・・・」
「お兄ちゃん。優海のことが好きだったんだっていうワード・・・怖い~」
「怖いのは想像力豊かなお前らだろ!優海、なんで俺を見て泣いてるんだ!?」
「顔がデカいもんね」
「顔はやめて!顔はいじらないで!」

 そんなことをしていたら、呼び鈴を鳴らして怜夢が二人を呼びに来た。 

「ごめんください。千秋ちゃん!優海ちゃん!迎えに来たよー!」

 怜夢の声にプール道具一式もって姉妹たちは部屋から遠のいていく。

「今日はお兄のことなんか忘れて怜夢ちゃんと一緒に泳ごうね~♪」
「お留守番よろしくね、お兄ちゃん」

 姉妹が消えて部屋に静けさが戻っていた。しかし、逆に怒りが込み上げてきた。

「くそっ。千秋のやつ調子乗りやがって」

 このまま千秋に馬鹿にされていたんじゃ、兄としての尊厳がない。
 ここはひとつ兄としてガツンと言ってやらなくちゃいけない。そういう事ができるアイテムを俺は既に手に入れているというのに。

「千秋。お前は一つミスを犯したぜ。プールに行く事実を俺に知らせてしまったことだ!今日一日遊びに行く予定が分かってりゃ俺だって行くことが出来るんだぜ。車でな!」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 怜夢に連れて行ってもらったプールに到着する。そこは市民プールではなく都内の旅館に備え付けられている屋外プールである。人の数も少なく、アイドルとして姿を隠すにはうってつけの場所でもある。
 選ばれた者だけが入れるプールも夏の暑さだけあり人の数は多い。しかし、怜夢と遊ぶ二人の姿を見つけるのは特に苦労することはなかった。
 キャッキャッと楽しそうに笑う三人の声が特に目立っていたこともあり、流れるプール、ウォータースライダーで遊んでいる姉妹はいい意味でも悪い意味でも目立っていたのであった。

「このくらいの場所からでいいか」

 三人に見つからないよう物陰に隠れた俺は、栄養ドリングさながらの『飲み薬』を取り出し、キャップを回すと中身を流し込んだ。
 すると、しばらくして俺の幽体が身体から抜け出てきた。俺は幽体となって、眠るように床に横たわっている自分の身体が見えたのだ。『飲み薬』の効果に書いてあった通りだ。
 周りの人は眠っている俺がいるだけで特にかかわろうとする様子もなくプールに戻っていく。しかし、その傍らで宙に浮いている俺に気づく人物は一人もいなかった。

 あとは『薬』の通り、自分の身体に戻れるかどうかを試すだけだ。とりあえず戻ってみようと思い、床の上にある身体に幽体を重ねた。 
 頭がクラッとしたが、目を開けると俺の幽体の代わりに身体から見える視界に変わっていた。 身体を起こし手足が普通に動くことを確認して、簡単に普段の俺に戻ることができた。 
 
「簡単に普段の俺に戻るというパワーワードっ!」

 優海みたいなことを言ってしまったが、『飲み薬』の効能に信頼を置いたうえでいよいよ次は千秋に一石投じよう。 
 残った『飲み薬』を飲み干して、再び幽体になった俺は千秋の元まで飛んでいく。
 遊んでいる千秋が空から近づく俺に気づくことはなく、プールの足場を駆け回っていた。タイミングを見計らい、千秋への視線が逸れた一瞬の隙をつき、自分の身体に戻るように千秋の身体へ幽体を飛び込んでいった。

「んにゃああっ!?」 

 千秋はそう言って床に転ぶように倒れた。しかし、痛かろうが子供なんでダメージは残らなかった。そして、その時には千秋の視界を通じて俺が目を開いていた。
 先ほどのように自分の身体に戻ったように、 俺は急いで体勢を立て直して、スッと立ち上がった。
 明らかに視線が低く、今までとの違和感が半端ない。ほぼ同じ視線で話しかける優海が転んだ俺のことに気づいた様子だった。

「千秋ちゃん。大丈夫?」 

 千秋。明らかに優海は俺にそう言ったのだ。この視界も水着が包む身体も物語っている。俺は千秋に――憑依したんだ。

「憑依というパワーワード・・・」
「えっ?なに?」
「ううん、なんでもない。足を滑らせちゃって。やっぱり濡れた床を走っちゃダメだよね。あははは!」 

 千秋の声で笑う俺に、安堵した優海も怜夢も、プールへと戻っていった。 

 三人で遊んでいる間も千秋の身体はとても軽く、プールだけのおかげというわけでは絶対ない。

「千秋ちゃん!」
「なに?・・・うわぁ!!やったなぁ!それえ!!」
「きゃあ、もぅ~つめたい!」
「お返しだぁ!」
「キャッキャッ!」」

 考え事をしていたら水をかけられる。お返しとばかりに水をかけ返す。
 怜夢ちゃんの眩しい笑顔ときらびやかな水が反射している。かわいい水着に飛び込みたいのを我慢していると、千秋のお股が心なしか疼いてきたのを感じた。

「(ヤバい。俺の感情が千秋の身体に移ったかもしれない)」

 このまま三人で遊んでいると、どうにかなっちゃいそうだ。このままプールの中でオナニーしていいだろうか。
 一緒に遊んでいたかった俺は当初の予定を思い出し、一人プールの外に出たのだった。

「どうしたの?千秋ちゃん」
「ちょっと泳ぎ疲れたから一人休んでるね」

      ごっめ~ん!

 二人に嘘をつきこの場で別れる。ここからじゃ見えない自分の身体まで俺は急いで走っていった。
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「ごめんなさい」

 その日、沖田魁人-おきたかいと-は玉砕した。


 うちの学校は学業よりも部活動に力を入れていた。
 空調の無い体育館は異様な熱気に包まれており、熱中症にならないようペットボトルが置かれているなか、男子バスケ部は毎日厳しい練習が行われていた。
 女子バスケ部が今年全国大会出場を果たしたせいか、男子バスケ部も女子に舐められるわけにはいかないと先輩たちの練習にも、今まで以上に熱が入っていた。男の意地とばかりに、かなりきつい練習を無理強いし、苛立ちを隠せない先輩たちの暴言、可愛がり、扱きがエスカレートして後輩たちを苦しめていった。
 次第にバスケを純粋に楽しめなくなっていく部員たちは苦痛を感じるようになっていた。
 しかし、部活をやる以上レギュラーを勝ち取り、成績も上を目指したい。かなりハードな練習を必死に耐えた者だけが最後の勝利者になることが出来るのが体育会系の鉄則である。


 俺、沖田魁人も男子バスケ部に入部し、部員と共にボールのパス回しから先輩の使い走りまで行っていた。
 不満だらけの部活動だったが、俺には目標とする人物がいたので今までの練習に耐えて頑張っていけた。

 梶浦礼乃—かじうらあやの—という後輩のチアリーディング部に所属している子の存在だ。
 いつも俺が気付くと「頑張って」と声援を送ってくれている。年下でありながら必死に応援する彼女を見つけると本当に元気をもらえるようだった。
 それはまるで以心伝心。失われた体力をすべて出し尽して、残り1mmまでなくなったはずの力が、彼女の声に俺は答えるように元気を取り戻していく。潜在能力を自ら開花して限界のその先へと到達する。ランナーズハイのような陶酔感や恍惚感に襲われるのが心地よかった。
 そして、夏のインターハイが終わり先輩たちが卒業したのを見送った後に始まるバスケ部レギュラー争奪戦で並み居る部員たちを圧倒して、俺はレギュラーの座をつかむことが出来たのだ。この戦いでレギュラーの座に選ばれることは、冬の選抜でレギュラーが確定するからだ。

 夢だった目標に届いたことで喜びを爆発した。それと同時に俺はこのまま礼乃のもとへと駆け出していた。
 決めていたことだった。レギュラーになることが出来れば、――俺は礼乃に告白することを。
 礼乃を体育館裏に呼び出して、勢いのまま告白した。きっと俺の告白に礼乃も応じてくれると信じて確信していた――。


 冒頭に戻る。すべては勘違いだった。

「えっと・・・よくわからないけど・・・ごめんなさい!」

 俺が必死に訴えれば訴えるほど、礼乃も頭を下げ続けた。礼乃は別に特定の人に応援していたわけではなくチーム全体を応援していたと、一切の思惑はなかったと弁解しているだけだった。

「おま・・・おまえ・・・俺のこと好きだったろう!色目向けてたじゃねえか!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 そんな言い訳で目先で色気をちらつかせていながら、俺の勘違いだったと恥をかかせた礼乃を許すことが出来なかった。
 どんなに辛く苦しい部活の練習よりも、礼乃に嘘をつかれたことの方が辛かった。
 俺の心がズタボロに切り刻まれたように、礼乃の身体もズタボロに使われてほしい。
 彼女の応援なんて二度と要らないのだから、ボロ雑巾のように捨ててやる――俺はそんなことを思いながら『飲み薬』を手に取った。


『飲み薬』を飲むと、身体から幽体だけが抜き出ると説明書に記載されていた。
 現に『飲み薬』を飲み干した途端、猛烈な眠気に襲われ意識を失った自分と、机に突っ伏して眠っている身体を見ている幽体となった自分がいたのである。
 これが説明書に記載されていた幽体だけが抜き出るということだろう。
 身体は意識ごと抜き取られて眠っているようだが、幽体になった俺の意識ははっきりしている。身体の重さも感じないし、常に浮いているように地に足が付いていない感覚だった。飛んでみようとイメージすると、天井をすり抜けて屋上までをすり抜けてしまった。
 まるで空を飛んでいるかのように自由になった幽体にイメージを任せ、目標にしていた梶浦礼乃のもとへと飛んでいったのだった。


 今は放課後。帰宅する生徒がいる中で部活動のある生徒はもちろん部活に精を出しているので、まだ礼乃は校庭にいるはずだ。
 外で発声練習とダンスの振り付けに勤しんでいるチア部の中に礼乃は混ざっていた。

「いたっ!礼乃だ!」

 早速見つけた俺は礼乃の背後にまわり、おもむろに身体を重ねていった。
 礼乃はみんなと混ざって振り付けをしていたが、俺が体内に入りだすとビクンと震わせて目を見開いた。俺はそのままスーッと彼女の身体に溶け込んでいった。

「あ、あぁぁ・・・」

 ほかの部員も礼乃が失敗したことに気付いていたが、振り付けは続いていたので気にする素振りを見せなかった。礼乃から力が抜け転びそうになったが、踏み止まって身体を起こすことが出来た。幽体の俺が誰かの身体を借りたことで重さを感じるようになるも、普段よりは全然身軽になった印象だった。

「礼乃。大丈夫?」

 曲が終わった後で俺の元へ駆け寄ってくる部員もいたが、「うん。全然大丈夫よ」と軽く挨拶してあしらった。しばらく周りに目を配ったが、部員たちは特に気にすることなく再び練習に戻っていった。

「礼乃か・・・くくく・・・」

 礼乃の変化に全然気付いていない様子に、俺は誰にも悟られないようにニンマリと笑った。

「憑依は成功だ。俺は礼乃になったんだ!」

 下に目を向けると、チア部のユニフォームに包まれた二つのふくらみが見え、その向こうには紫色のスカートを纏い、綺麗な2本の太腿が下りていた。
 首を振るたびに後ろに束ねたポニーテールが頬を揺れる。毛先の細い礼乃のポニーテールを掴んで人知れずにおいを嗅いでいた。汗とシャンプーの匂いが嗅覚を刺激する。
 普段より匂いが敏感に感じ取れるほど繊細なのだと礼乃の身体を堪能する。

「うふっ・・・私は礼乃よ。あはぁん♪」

 礼乃の口で喋っていることに感動を覚えてしまう。『飲み薬』で幽体離脱しただけじゃなく、礼乃の身体を乗っ取り、憑依してしまった。
 それだけじゃない、梶浦礼乃の意識だけが俺の意識に変わり、その他の情報や知識はそのまま俺が引き継げるようだ。
 つまり、俺が礼乃の身体を使いこなすことが出来るってことだ。
 普段礼乃がやっているようにチア部に混ざって振り付けをこなし、部員たちと混ざって会話に華を咲かすことも出来る。昨日の出来事もまるで自分のことのように思い出せる。自分が梶浦礼乃だったと受け入れてしまうくらい当たり前のことのようだった。
 しかし、改めて俺は沖田魁人であり、礼乃の身体に憑依した経緯を思い出す。俺の告白を振った礼乃に対する復讐であり、恥をかかせるために憑依したのだ。
 幸い礼乃は二年生でチア部を牽引する立場だ。練習内容を変えることも容易に出来る立場にあった。

「ねえ、鈴子。今日は一部練習内容を変更しない?」

      チアコス夏ver.

 休憩に入ったなか、小鳥遊鈴子-たかなしすずこ-に声をかけて相談に持ち込む。

「別にいいけど、なにするのよ?」
「それはね・・・」


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「瞭には悪いがこの正月からの三箇日、家から出てってくれないか」

 樋口瞭-ひぐちりょう-は目の前に差し出された3万円と両親の悲痛の訴えを前に言葉を詰まらせた。

「当然でしょう。ニートのお兄ちゃんなんて親戚の前に出てこれるわけないじゃない」

 妹の歩美-あゆみ-ですら両親の援護に回り、家族内で1対3という劣勢に追い込まれていた。

「あと、お兄ちゃんの部屋のWi-Fiのパスワード教えてね。甥っ子に教えないといけないから」
「ぜってーやだ」
「3日間の辛抱だから言うこと聞いてね」
「じゃああと3倍と、精神的苦痛の1万寄越せ」
「いい加減にしろ、瞭。もとはといえば大学卒業してすぐ働かないでズルズル引きずったからだろう。お父さんたちがどれだけお前のために苦労していると思ってるんだ!」
「体裁を守ってきただけだろう。俺から頼んだわけじゃない」
「そういう風に言うから正月はいつも親戚同士が険悪になるの。お願いだからお母さんの言うことを聞いて。いい子だから」
「うるせえ悪女。俺は俺のやりたいようにやる。来年も365日俺をよろしく匿え」
「親離れも出来ないお兄ちゃんほんとダサい。そんなんだから彼女できないのよ」

 両親との間に入ってくる口うるさい妹に言われて難癖を吹っ掛ける。

「じゃあ、彼女が出来たら3倍出してもらおうか」

 絶対に勝てると思っているのだろうか、妹は瞭の言い分を勝手に受け入れてしまう。

「家族とも付き合えないお兄ちゃんがそんなこと言っていいの?いなかったら3年は家から出てってよ。今すぐでいいよ!アーハッハッハ――!」
「ほぉん。言ったな。言っちまったな」
「――ハァ?」

 一瞬静まり返る家庭のタイミングに合わせるかのように呼び鈴が鳴る。
 母親が返事をしながら玄関に向かっていく。
 すると――、

「えええええぇぇぇ!!?」

 悲鳴に似た声を荒げる母親に何事かと思った父親と妹。瞭の動きに注視しながらも玄関を気にする二人の前に、着物姿に身を包んだ成人女性が現れたのだ。
 敷居が高そうな雰囲気を醸し出しながら上品な着物と艶やかな長髪を靡かせて現れた女性に言葉を失っていた。落ち着きある身なりと仕草を見せる様子はまるで大和撫子の名に相応しい。
 そんな名も知らない相手が唖然としている父親に深々と頭を下げたのだった。

      ヤマトナデシコ

「初めまして。瞭さんとお付き合いしております大内楓-おおうちかえで-と言います」

 瞭さんとお付き合いしております・・・・・・彼女の言葉が聞こえてきても一瞬理解できなかった。
 その表情があまりにおかしく、瞭はたまらず噴き出していた。

「なんだよーもっと素直に喜んでくれよ。信用ないな、俺って」

 楓の肩を組んで勝利宣言が決まった瞭と、驚愕する妹の唇がプルプル震えだした。
 泣いていたのかもしれない。

「あ・・・あり得ない」
「30万な。今すぐでいいぞ」

 同じ言葉をそっくりそのまま返し、30万を寄越すように請求する瞭。
 すると、目の前に300万の札束が父親のもとから投げ出された。

「この金で、旅行でも行ってこい」

 このまま二人で両行に行くよう提案する父親。瞭もその意図を素直に受け入れた。

「嬉しいこと言ってくれるな。それじゃあ早速使わせてもらうわ」

 300万を手にして瞳を輝かせる。瞭にとって初めて手にする大金だった。

「パスポート持ってる?」
「当然よ」

 仲睦まじく外へ向かって歩き出す。

『お邪魔しましたー』

 瞭と楓。樋口家は驚きながらも来年は良いことが起きそうだと、その夜は親戚に自慢話のように話してどんちゃん騒ぎをしていたのだった。続きを読む

      3年振り

 ティラノビルダー『グノーグレイヴ』
画像をクリックしてね)

 4年前に制作して、いったん掲載不可になっていた自作ゲームが、『バラ色プリンス』のべろ様のお力を借りてこの度復活しました!!



 声が出るのでスマホで閲覧の方はご注意ください。本作品は成人向け憑依モノになっております!!10分ほどのゲームですので、プレイして頂けましたら嬉しいです。

 最後に残っていた再掲載作品がようやく投稿できました(感涙)
 べろ様にこの場を借りて御礼申し上げます。

 18禁ゲーム。また作りたいですね(*´Д`)ハァハァ

 ペロペロと舌で舐めていく。長い舌を逸物の裏筋に宛がい、そのまま亀頭に向かって撫であげていく。れろんと弾き飛ばす舌に揺れる逸物がビクビクと大きく膨らんでいく。
 ソフトクリームのように何度も亀頭を舌で舐める茜音(貴明)がゆっくりと目を開けていく。
 はちきれんばかりに膨らんだ貴明の逸物。見慣れたものではあるが、顔の正面から覗く亀頭を見たことがなかった。

「はぁ、はぁ。私、貴明になってるんだよね。だから、こうしても別に大丈夫だよね?」

 何をしようというのか。そう思っているうちに髪を掴まれてしまった。無理やりされたら、その無理やりが通ってしまう、それくらいの差がある。

「女の子と快感の質が違うの。だから・・・お口でしてほしい」

 貴明は自分の精力をこの時ばかりは呪うしかなかった。それでも普通の男子高校生並みだと思っている。茜音が意外と性に対して貪欲な一面をもっているのであった。貴明(茜音)が茜音(貴明)の顔を見下ろしながら潤んだ瞳を見つめている。

「自分の口なのに不思議・・・見てるとだんだんイヤらしく見えるの」
「だからって、フェラなんて俺できないぞ。上手くやれる自信もないぞ」
「大丈夫。いざとなれば私が顔を持って動かすから」
「それってイラマチオじゃないかあ!?」

 と、ここで茜音(貴明)は大声を上げるわけにはいかない。家の中には家族がいるのだ。まわりから見れば貴明が茜音を襲っているように見えるのだから。それだけは回避しなければならないと、貴明の危機管理が逸物を咥える毛嫌いを勝った。

「んちゅっ、ちゅ、ちゅくぅ・・・・・・うぇっ、えぇぇ」

「お」の口に開いて亀頭からしゃぶっていく。口内へ消えていく逸物に、貴明(茜音)の表情が切なく揺れる。一度奥まで咥えた逸物を、ゆっくり口から吐き出していく。温かい口内と粘膜の湿り気が消え、また咥えてほしいという想いが亀頭から訴えかけられる。茜音(貴明)の頭を持って再び逸物を奥へと咥えさせる。茜音(貴明)は目を閉じてジッと我慢しているようになるようになっていた。

「嫌なの?自分のおち〇ち〇咥えるの?」
「美味くない・・・にがくて、くちゃい・・・・・・」
「大丈夫。後で貴明も気持ちよくしてあげるから」

 何か妙なことを言っている。だけど貴明の苦痛は続く。

「じゅぶ、じゅぷ、じゅっぽ、じゅっぽ、うぅうっ・・・・・・」

 スピードをあげて扱くように口を窄めて喉奥に入れたり吐き出したりさせる。我慢汁の味が舌一面に広がっていた。
 茜音(貴明)が頑張るたびに貴明(茜音)が気持ちよさそうな表情で天を仰いでいた。

「っくうぅぅっ・・・・・・いい、いいよ、貴明。意外に献身的なんだね」
「褒められてもなんも言えねえ・・・」

 自分のフェラの上手さを褒められても苦笑いを浮かべる。ひょうい部で培った賜物がここでも——(以下略

「(ああ、もうイヤだ~!!早く終わってくれよ、頼むよ~!)」

 目を瞑りながらフェラを続ける茜音(貴明)。と、貴明(茜音)は髪の毛を掴んで必死に茜音(貴明)の顔を揺すって喉奥まで亀頭を飲みこませていた。

「(茜音のやつ・・・本当にイラマチオさせて・・・・・・)んご、ご、ぐがぼ・・・」

 じゅぷじゅぷと、二人で貴明の身体を気持ちよくするように口と声で表していく。、茜音(貴明)が口で亀頭を飲みこんでで貴明(茜音)が快感に震える声を荒げる。

「ふ・・・も、もう少しで出そう・・・・・・頑張って!」
「じゅるるうっ、じゅっぽ、じゅぽ、じゅるじゅるじゅる!」

 唾液を塗して我慢汁を中和しながら口で扱き続ける。口の粘膜に亀頭を押しつけ、フェラを激しくし、自分の気持ちよくなる裏筋部分やカリ首を責めたてる。

「じゅるるるっ、じゅぱじゅぱ、ずずぅっ!れろれろぉっ、れる、れろぉっ!」
「っくぁああ・・・・・・!でる、射精るかも……あぁああぁぁぁ!!」
「(・・・・・・あっ・・・このままイクと俺、自分の精液飲まされるんじゃね・・・?)」

 そこまで考えが至らなかった貴明。普段ティッシュに包んではごみ箱に捨てるもの、タンパク質の塊を——飲むことになることに目を見開いた。それだけは勘弁してくれ!!と離れようにも茜音の抑えつける力が物凄く、さらに喉奥まで咥えこませた瞬間、逸物がビクビクと反応して口の中に放たれていった。

「んんんんんんんっ!!?んぐううううぅぅうぅぅぅううう―――」

 口の中にびゅるびゅると吐き出される精液は、さらにひどい味だった。
 煮え湯を飲まされる女性の身を案じて涙を浮かべてしまう。

「(ああ・・・・・・なんてことだ・・・・・・)」

 茜音(貴明)の心も憔悴しきっていた。自分の精液を喉に落としながら事実を受け入れるしかなかった。対して貴明(茜音)は射精して気持ちよさそうにしていた。茜音₋じぶん₋に口内射精したことをあっさり受け入れていた。

「ああぁあ・・・・・・はぁ、はぁ。すごい、ものすごく気持ちいい・・・・・・男の子ってずるいなあ。こんなに気持ちいいんだもの」

 茜音が分からないことを言っている。貴明にとって女の時の方が快感が強かったと思う。
 隣の芝生は青く見えるものなのか。男性が女性に。女性が男性に対する憧れは同じなのかもしれない。

「じゃあ、貴明は少し休んでて」

 再び貴明(茜音)が自分の身体を触りに来る。おっぱいをかき集めてチュパチュパと乳首を吸い始めたのだ。

「んあっ!んっ・・・んんぅ・・・・・・!」
「私の身体そんな気持ちいいの?」
「そうかもしれない・・・触られると、もっと触ってほしいって感じになる」

 今まで多くの女性の身体に憑依してきた貴明だったが、茜音の身体が一番感じやすい気がした。一度イった身体は冷めてもすぐに火照りやすく、乳房を弄っている間にどんどん先ほど体内から感じた切なさが再び蘇ってきた。

「んふああぁっ!茜音の手つき、イヤらしいよ」

 貴明(茜音)に乳房を揉まれる。茜音(貴明)は貴明-じぶん-の顔で興奮してしまっていた。

「はぁ、はぁ、私、もう止められないかもしれない」

 逞しく男の裸体で迫ってくる貴明(茜音)が唇を奪う。まだ精液のかおりが残る口内に舌を伸ばし、貴明(茜音)と舌を絡めるととても安心できて気持ちよくなっている貴明がいた。火照った表情、蕩ける二人——

「私ずっと前から貴明のこと好きだったよ」

 幼馴染の二人がはじめて交わす本音を聞いた。

「ふぁあああ!ああぁ・・・茜音・・・・・・」

 そのまま貴明(茜音)は股間へと手を伸ばしてくる。濡れそぼったおま〇こを刺激しているとあっという間に陰唇は蕩けていた。

「すごい濡れてる。イヤらしい・・・・・・私の身体なのに、すごく興奮する」
「ぁ、あううぅっ!」
「クリも硬くなっちゃってる。イヤらしい・・・気持ちよさそう」

 ビリビリした快感が駆け抜け、思わずイってしまいそうになる。再び指が膣内に入れられ、苦しいくらい快感が訪れ、貴明の指を締め付ける。もう自分の意志ではどうしようもないことを知っっていた。
 もう片方の手で勃起した乳首を抓りあげられ、茜音(貴明)に痛みが伴うけれど、さらにどうしようもないくらい感じてしまっていた。乳首と膣を執拗に責め立ててくる貴明(茜音)。再び胎内に溜まる水気の音が響いてきた。

「痛いのに・・・痛いくらい、気持ちいいっ。はぁ、あぁああぁぁあああ!!!」

 茜音(貴明)の身に軽い絶頂が起こり身体を仰け反らせる。一度目よりも早いペースでアクメに達した。しかし、先ほどより快感になれたのか、息を絶え絶えにしているものの、意識ははっきりしており、同じ快感を得られたわりに体力はまだ残っていた。
 体力を残した茜音(貴明)をベッドに倒す貴明(茜音)。自然と正常位の体勢を作り、顔を合わせた二人は濡れた性器をお互い見つめていた。

「貴明・・・もっと気持ちよくなろう」
「お、おう・・・」 

 足を開かせ、股を拡げ、小さな女性器に太い男性器を宛がう。喉を鳴らして緊張する貴明(茜音)。そして身体を強張らせ緊張する茜音(貴明)。

「挿入れるよ、貴明・・・・・・私のなかに・・・・・・」
「ああ、分かったよ。俺の身体だもんな。責任取らないとな」
「うん!」

 貴明(茜音)がグッと、腰を前に突き出し、ゆっくりと逸物が膣内へ侵入してくる。最初は先端だけだと思ったが、徐々に押し込まれ、ズブズブと濡れそぼった性器通りがこすれ合いながら滑り込んでいった。

「はぁあぁああぁああぁぁぁぁ!!!」

 我慢していた茜音(貴明)も耐えきれなくなり、苦痛に表情を歪めて叫ぶ。でも、その時にはもう貴明(茜音)の逸物はすっぽりと膣奥へ潜り込んでいた。亀頭が滑り、竿全体に膣肉が締め付けてくる。それは口内よりも狭く、愛液で充満していて快楽そのものだった。

「はぁ、はぁ、ああっ、いい、気持ちいいよ、貴明」
「なんだこれ・・・肉と肉がこすれあって・・・指とは全然違う。気持ちよすぎて・・・・・・頭が真っ白になる」
「私の膣内・・・・・・こんなに、気持ちいいなんて知らなかった」
「お、俺も、俺のち〇ぽがこんなに気持ちいいものだったなんて思わなかった」

 茜音も貴明も、二人が自分の身体、自分の快感を相手に求めていく。
 自然と腰を振る貴明(茜音)に合わせて茜音(貴明)も無意識に子宮を下ろす。亀頭の先がコツンコツンと最奥地を何度も突く度に、二人はブルブル身震いし、快感を溢れさせて涙を零す。

「ち〇ぽに突かれてぇ、イっちまう!はあ、あぁあっ!んんぁああああああぁぁぁぁぁあああぁぁ!!」

 貴明(茜音)に容赦なく突かれて茜音(貴明)が三度イってしまう。しかし、貴明(茜音)はまだ射精していないらしく、腰を振り続けている。
 絶頂直後の敏感な状態でのピストンに脳がチリチリ焼き尽くされる。これは、ヤバイと茜音(貴明)は本能的に悟っていた。

「や、やめろぉぉ!し、ぬっ、死んぢゃう!あああああぁぁぁ!!」
「しらないわよ!貴明が勝手にイったんじゃない!」
「お、おおお、おまえのからだ、言うこときかないからぁ・・・・・・おほお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ!!」

 呼吸を乱したまま快感が襲い掛かってくる。酸欠になりそうなほど息苦しく、やめてほしいと想う反面、ブレーキを壊してどうなってもいいと思えるくらいの破壊願望が脳を埋め尽くしていった。

「いっぐうううぅっっ!!また、またイク、イっちゃううぅうううぅうぅ!!」

 もう茜音の身体はイキっぱなしである。茜音(貴明)の頭がどうにかなっちゃいそうだった。このまま雌としての快感が脳に深く刻み込まれてしまいそうになっていた。
 男性-もとのからだ-に戻れたとしても、この記憶は残り続けるのではないだろうか。男性としての生活に支障がでるレベルの快楽だった。

「はぁ、はぁ、もう、射精そうよ・・・・・・っ、貴明。膣内に射精すからね」
「んんんっ・・・らめぇ・・・いまぁなかぁ、だされたらぁ・・・・・・おんなのこになっちゃぅ~!!」

 生殖行動として精液を本能が求めるのは自然の摂理だとわかっていながら、いま受けたらどうなってしまうか貴明にも分からなかった。

「待ってくれ。本当に、もう、むりぃ」
「いま射精我慢する方が無理ぃ!」
「しょんなぁ・・・」

 目から涙を流して貴明(茜音)の暴言を受け入れるしかない茜音(貴明)。しかし貴明自身、もしも立場が逆になったら同じことをすると思っていた。
 女の身体って、そういうことなんだ。

 パン、パン、パン、パン、

「あ、あ、あ、あ」

 貴明(茜音)のピストン運動が激しさを増し、茜音(貴明)の身体が悲鳴をあげる。

「はぁ、でちゃう、貴明!射精すからね!!」
「はぁあぁああああ、また、イクっ、イキっぱなしになりゅっ!はぁ、あぁあぁぁ!!」

 このまま貴明-じぶん-の身体に犯されて射精される。どうなってしまうのか分からないけど、逃れられない。茜音(貴明)にとって復讐どころか丸め込まれて完全敗北である。
 ・・・・・・でも——茜音の敏感過ぎる快楽を味わえるだけでも完全勝利なのは間違いなかった。

「んううううぅぅうぅぅうぅ、あぁ、あぁぁあぁああああぁぁぁ―――――!!!!」

 どく、どくと、胎内に広がり溢れだしてくる精液が、膣、子宮に注がれていく。
 熱く滾った精液の流動を感じて、だらしなく開いた口元から唾液が糸を引いて零れ落ちた・・・・・・。

「きもひ、いい・・・・・・」

 譫言のように呟く茜音を見ながら、すべてを終えた貴明も高揚感に満たされていた。

「すごい、気持ちよさそうな顔してる・・・・・・私ってこんなに色っぽい顔できるんだ・・・・・・」

 全てを終えて精も根も使い果たした貴明(茜音)は茜音(貴明)の身体に身を寄せた。
 茜音(貴明)にとってしばらく身動きすることも出来ず、朦朧とした意識の中で黙って眠るように目を閉じていた。

「もうどこにも行かないで。いつまでも私だけを見ていてね」

 貴明(茜音)の素直な声が茜音(貴明)に静かに届いた。


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「・・・なにをやってるんだ、俺は・・・・・・」


 茜音(貴明)は授業が終わり、茜音の部屋にまっすぐ戻ってきてしまったことを後悔した。
 学校では体育の後疲れてしまい、そのまま睡眠学習に突入してしまい、起きたら放課後になっていたのだ。

「なんで起こしてくれなかったあぁぁ!!」
「だって、あまりに気持ちよさそうだったから・・・」

 体育での活躍を皆知っているせいか、眠っている茜音を起こさないようにしようとクラスが団結して起こさなかったのだという。

「余計なお世話だよぉぉぉ!!オオォォォン!!」

 一人残った義也に連れられて学校を去る。その時間になると既に陽が傾いていた。

「もうこの時間で暗いね。一年早いね」

 雪の到来を告げる冬。5時でも夕暮れは落ちて辺りは暗くなっていた。貴明(茜音)の姿はそこにはなかった。義也も帰ったというだけでそれ以外何も知らなかったようだ。

「なんてこったい・・・俺はまだ何もしてないぞ・・・・・・」

『飲み薬』を使って復讐すると言っていながら、茜音の株を挙げることしかしていない。むしろ義也が見た茜音(貴明)の行動は、どこか復讐に本気を出している素振りが見えない。
 そう思ったのは、眞熊達樹の告白を義也も聞いていたからだ。

「ねえ、貴明。本当に茜音さんに復讐するつもりだったの?」
「ったりめーだ!この身体を使って、トラウマをだな——」
「ふーん。なんか口だけなんだよな」

 義也にしては珍しく茜音(貴明)に食いつくので、売り言葉を買ってしまう。

「馬鹿言え!俺がやろうと思えば車の前に飛び出して一生残る傷を作ってやる——」
「貴明が車の前に飛び出すなんて出来ないよ~」
「言ったな!いいんだな!じゃあ、見てろよ!今から茜音の身体で本気で飛び出してやるからな!」

 言い切った茜音(貴明)が何を思ったのか、道路に飛び出し走ってくる車に向かっていった。

「貴明!?」

 言い過ぎたと本気で後悔した義也。茜音の身体が車に跳ねられると思ったが、時速30km制限の道路で飛び出した茜音に気付いて車はブレーキを踏んで停止した。そして飛び乗った茜音(貴明)は、思い通りにならなくて一瞬思考停止したが、

「えい!えい!」

 突然、拳を振り下ろしてフロントガラスを叩き始めた。しかし、茜音の手の力でフロントガラスを叩いたところで全然ガラスにダメージはなく、コン、コンと音を立てるだけで割れる心配など全くなさそうだ。

「お嬢ちゃん。なにやってるんだい、早くおりてくれよ」
「ごめんなさい!すぐおりますから!」

 義也に引きずられて慌てて車から降ろされる。運転手は怒り心頭だった。

「次やったら学校に連絡するよ。まったく、危ないじゃないか」
「本当にごめんなさい。気を付けます!ハイ!」

 歩道に戻りながら全力で頭を下げる義也に運転手は車を走らせて消えていく。姿が見えなくなったあと、義也が変わりに謝罪したことに対する怒りを倍にして茜音(貴明)を睨みつけていた。
 茜音(貴明)も計画通り進まなかったことで調子がくるっているのか、義也から視線を逸らすように横を向いた。

「・・・・・・ってなわけよ」
「謝って」

 馬鹿なことをしていると、義也は深々とため息を吐いた。

「本当に飛び出すなんてどうかしてるよ。死んだらどうするつもりだったんだよ」
「安心しろ。異世界が俺を待っている!」

 ブチッと、義也の怒りが冷める前に燃料がさらに追加され、茜音(貴明)の身体をぐいぐいと車道へと押し込んでいった。

「いっぺん死んで来い!!」
「やめろ!茜音の身体だぞ!茜音の帰る身体がなくなるぞ!!」
「ほらぁ。やっぱり死ぬつもりなんて毛頭なかったじゃないか!」

 貴明の言っていることとやっていることが噛みあっていない。
 復習したいといいながら、どう復讐していいのか分からないと、逆に縛られているように思えてしまう。
 それも今日、貴明が本音を発したあの一言に尽きた。

「貴明。眞熊くんに告白されてたよね?」

 義也が達樹に告白されたことを教えると、茜音(貴明)は動揺していた。思いを伝えるとき誰にも知られないよう陰で告白するものだ。達樹もそのために体育館裏に茜音(貴明)を呼び出していた。にもかかわらず、義也がその告白を見ていたなんて思いもしないだろう。

「な、なんでそれを知ってる!?」
「聞いてたもの」
「あ・・・あ・・・」
「その時貴明、言ったよね?」

『茜音の幸せは俺が決める。どんなにおまえが茜音のために最善を選ばせようが、俺が決める幸せが茜音の一番の幸せだ、バカヤロウ!!!』

 一字一句間違えないくらい、茜音(貴明)が言った言葉を覚えている。それくらい印象に残った台詞だったのだ。義也だけじゃなく、貴明(茜音)にも残っていたはずだということはあえて義也は告げなかった。

「それってつまり、貴明がやりたかったことって茜音さんを困らせたかっただけでしょ?好きな子に虐めたいみたいな」

 貴明の本心を突く一撃をさり気無く発する。貴明がもし自分の気持ちに気付いていないなら、意識させるように持って行きたかったのだ。
 義也は貴明の親友だから幸せになってもらいたいから。

「冗談じゃない。俺は茜音にごめんなさいさせるんだ。俺と同じ苦しみを味あわせるためにな!」

 ひょうい部を廃部にさせた茜音に苦しみを味あわせるために『飲み薬』を使ったのだ。貴明が発足し、行動し、部員を集め、生徒会長に直談判した。人一倍想い入れのある部活動なのだ。
 部活にならなかったとしても、廃部になったとしても、他校の女子生徒に憑依して遊んだ記憶は義也も貴明も忘れられない思い出だ。
 だからこそ、何時までも続けていたいと思う貴明。面白い遊びを捨てて勉強に励むことを拒む。
 だからこそ、勉強に励むことができると思う義也。これからどんな辛いことが待っていても、部活で培った思い出がある限り前を進んで歩んでいける。

「貴明・・・・・・」

 二人の意見は一日で交わることは出来なかった。それぞれ家路に向かい放れていった。
 部活に縛られている貴明にとって、幽霊部に取り憑かれてしまった貴明をどうすれば目覚めさせることが出来るのか義也には分からなかった。



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 茜音として部屋に戻ってきた貴明。幼馴染とは言え貴明が茜音の部屋に入ったことは子供のときから一度もない。逆に茜音が貴明の部屋に入ったことがあるのは、基本誘っているのが千村家の方だったからだ。
 始めて入る茜音の部屋。無断で侵入しているような感覚に警戒が解けない。今すぐにでも茜音が現れて、「なに勝手に入ってんのよ、この常識知らず~!」と殴られるのではないかと思えてしまうほどだ。
 しかし、ここには貴明しかいない。たった1人だけだ。通学鞄を置き、部屋一面を見渡した。
 年相応の女の子らしい部屋の模様になっており、女の子の部屋特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。可愛いデザインのベッドや机は少し値段が張りそうだ。そして本棚には集めている雑誌が綺麗に発売順に収められており、几帳面さが垣間見える。
 パソコン関連も持っていないため、コードやコンセントが少ない印象だ。その分クローゼットにかけられている服の多さに驚くほどだ。貴明が見ている茜音の服はせいぜい制服のみだったこともあり、茜音がこれほど衣服にお金を掛けているとは思っていなかった。

「そんなことよりも——!」

 茜音は姿見の前に移動して自分の姿を覗いてみた。
 そこに映るのは高橋茜音の姿だ。千村貴明はそこにはなく、変わりに幼馴染の茜音が映っているのだ。いや、この場合は逆かもしれない。茜音の部屋で茜音が映っているのはなにもおかしくない。しかし、貴明の意志で茜音を動かすことが出来るのである。

「今の俺は茜音だぞ。俺が下手なことすれば茜音が罪を被るんだ。ざまあみろ!」

 誰かを脅す様な口振りで高笑いを見せる。聞いているのは茜音(貴明)以外誰もいないが、満足そうに微笑んだ後で物色を開始する。

「茜音の人生を潰すために手っ取り早いっていったらネット!炎上商法だ!!ネットに茜音の恥ずかしい画像を載せれば萌えあがるだろ。頼むぞ、突撃兵たちよ!」

 貴明は近くにあった箪笥の中を勝手に開いて、下着が収納された棚を発見する。色気のない白が多い中で、水玉やピンクなどのカラフルが数点ある。下着を揃える年齢でもないとはいえ、その種類は他の女子よりも多いのではないだろうか。

「色々あんじゃん。へー」

 柄だけではなく、カップのデザインも豊富だ。フルカップブラ、ボリューム感を出すハーフカップブラ、締めつけが少なく着け心地がよく、とにかくラクなイメージの強いノンワイヤーブラと、バリエーション豊富になっている。
 茜音は物を捨てられない性格で奥にはサイズがもう合わないようなものまで残っていた。貴明が見つけたのは、中学時代に使用していたスク水が出てきたのだ。

「懐かしい。スク水じゃん。まだ取っておいたのかよ。捨てとけよ」

 ポリエステル素材のスク水は穿かれなくなっても昔と同じくその存在感に遜色がない。
 やけに小さいイメージがあるのは、貴明の記憶しているサイズと茜音のサイズに差があるせいだ。

「大事に取っておいたんなら、俺が着てやるよ。お前の身体でな」

 スッ——と、制服を脱ぎ捨てた茜音(貴明)はスク水を穿いていく。
 スレンダーな身体にスクール水着が良く似合う。スタイルも崩れているわけではなく、1年ぶりに着たであろうスク水を身に付けることが出来たのだった。

「こんな感じで着方合ってるか?女物のスク水なんて生まれて初めて着替えたけど、この身体にぴったりフィットする感じがたまんないんだよな。へぇ~。わりと入るもんだな。ちょっとキツイ・・・食い込みが」

 ひょうい部で培ってきた経験が蘇る。やはり女物の衣服に包まれる感じは男性では味わうことのできない楽しみの一つだと再認識される。胸や股間が食い込んでいるのもまた、茜音が成長した証拠であることを知る機会であり、食い込みを直してハイレグにならないようにちょくちょく手を入れていく。

「サイズがちっさくなってる?違うか、身体が大きくなってるのか。ハイレグ・・・処理が甘いところ見えるんじゃないか」

 鏡で、そして茜音-じぶん-の目でスク水に包まれた身体を見ながら感嘆の息を吐いた。

「素晴らしい。スク水が栄えるな!」

      jkがスク水に着替えたら・・・

 レースクイーンが取るようなポーズを取りながら、大胆に身体を突き出すと、胸の膨らみがスク水を押し上げて美しいボディラインを見せていた。貴明が興奮し、鼻息を荒くしていくにつれ、茜音の身体が反応を見せ始めた。

「あっ、乳首が浮き上がってボッチ作ってる・・・。うわあっ・・・」

 スク水の上から浮き上がった乳首を恐る恐る摘まんでみる。

「んぅっ!いたっ・・・」

 スク水の中で弄るには狭すぎるのか、乳首が敏感すぎて痛みを覚えるほどだ。窮屈なのは貴明も嫌で、火照り始める前にスク水を脱ぎ始めた。

「・・・まあ、スク水は幼稚だったかな」

 そう言いながら、クロッチの部分が少し濡れてしまっていた。貴明は隠すようにそのまま箪笥の奥に戻してしまった。そして、先ほどから気になっていた大人っぽいデザインの下着を取り出すと、それを今度は身に付けていった。

「一度ブラってやつを着けてみたかったんだよな。えっと——」

 ハーフカップブラを乳房に宛がい、背中に腕を回してフックにかける。後ろで留めようと鏡の前で背中を向いて悪戦苦闘する。

「・・・う~~ん?なんだこれ?む、難しいって、いてて・・・・・・」

 もっと簡単なやり方があるのに貴明は付け方を知らなかった。茜音の柔軟さがなければブラを付けることは難しそうだ。

「おっ、はまった」

 なんとかフックがかかりブラが付いた。

「おお~お、おおお~~いつもより大人っぽい・・・・・・」

 姿見の前に立つと情熱の赤い下着を身につけた茜音が鏡の向こうに立っていた。これが茜音の勝負下着だろう。

「谷間が出来てる・・・。すげえ・・・」

 ムニュリと寄せあげられた胸の谷間とその谷間を強調するようにオープンになっている胸元に思わず視線が向いてしまいそうだった。そのまま視線を下げていくと、ブラとお揃いのデザインのパンツが茜音の大事な部分を覆い隠していた。
 スク水よりもきわどいV字ラインがイヤらしい。えっちな割れ目を隠す赤い布のシルエットにドキドキしてしまう。色気のない下着と違い、生地はシルクを使っており、スベスベしていて肌触りがいい。トランクスともボクサーパンツとも違う履き心地になんとも言えない柔らかさを感じてしまった。
 かなりお値段も高そうな下着である。

「それにしても、茜音はこういう背伸びしたデザインが似合うな・・・」

      ピンクのブラ

 これが初めて使ったわけではなさそうである。もしかしたら普段からも身に付けていたのだろうか。これを身に付けて誰に見せようとしているのかすごく気になるところだ。
 下着姿の茜音を見つめていると、自然と鼓動が高鳴った。

「ん・・・い、今の感覚は・・・この身体疼いてる・・・・・・」

 貴明が茜音で欲情したことなど一度もない。それなのに自分が茜音の下着姿に欲情していることにひどく動揺していた。おま〇こから切なく訴えてくる感覚に、一度唾を飲みこんだ。
 興奮が抑えきれなくなり、一人である状況にこのまま自慰行為だってやれるのだ。茜音の身体でオナニーすることが今まで憑依してきた女子生徒たちと何が違うというのだろうか。

「わっかんねえよ・・・そんなつもりないのに・・・・・・俺が、茜音に欲情するなんてあり得ねえって言うのによ!」

 まるで、茜音に欲情することを負けだと思っているように、自分の性欲を抑えつけようと必死に抗っているのに、その欲は止まらない。
 震える手が今まさに、下の口に触れようとした時——貴明が負けを認めるように叫んだ。

「ネットにあげるのは止めだ!止め!こんな姿を見せられたら独占したくなるだろうが」

 またもお預けしてしまう。しかし、貴明はある場所へ出掛けるために適当に服を借りて茜音の部屋を出ていった。


続きを読む

 学校が終わり貴明として帰宅する茜音。幼馴染だけあり家は隣に並んでおり、付き合いもあるせいで間違えることもなかった。
 義也もいなくなり貴明の部屋に一人佇む。模様替えしたといえ、子供のときにお邪魔した記憶からそれほど変わっていなかった。
 自分の部屋のようにベッドに倒れる貴明(茜音)。枕に顔を埋めて一日の疲労感を感じていた。

「はぁ・・・何時まで続くのかしら・・・」

 貴明のせいとはいえ、一日で色んなことがあった。

 水野結愛に告白された貴明と——
 眞熊達樹に告白された茜音と——

 全く同じタイミングで告白されるなんてことがあるだろうか。
 お互い入れ替わってなかったら別の道を歩んでいたのではないだろうかというほど人生の転機だったと思えて仕方がない。特に——


『断る』

 達樹が話している途中で茜音(貴明)は答えを出していた。茜音(貴明)は告白を断っていたことに義也は声を殺して悲鳴を上げていた。

『あ、あはは・・・伝わらなかったのか?何を言っているのか理解できなかったんだけど』
『茜音の幸せは俺が決める。どんなにおまえが茜音のために最善を選ばせようが、俺が決める幸せが茜音の一番の幸せだ、バカヤロウ!!!』


 達樹の告白を足蹴りした茜音(貴明)だったが、

「私だったら・・・・・・なんて応えたかな・・・・・・」

 茜音と達樹。会話はなかったけど、同じ成績、同じ価値観、同じ立場を共有していた。決して顔も悪いわけじゃない。口は強いけど、それが頼もしいと女子の間でモテると噂も聞いたことがある。

「性的に無理なわけじゃないし、決して嫌いって相手じゃなかった。達樹くんが言ってたようにきっと裕福に過ごせる将来を約束してくれたんだろうな・・・・・・」

 なんとも美味しい話。玉の輿に乗れるチャンスが巡ってきた。こんな機会は一生に二度と巡り合えないかもしれない。
 だけど・・・・・・そんな話を貴明が棒に振ったのだ。
 茜音になりすまし、茜音のことなどお構いなしに、茜音の価値感を決めつけて、貴明を押し通した結果——。

「はぁぁ~もう、サイアク。どうして私っていつもアイツに振り回されるんだろう・・・・・・」

 泣き言を言いながら目を伏せる。でも、不思議なことに涙は流れなかった。

「アイツのせいよ。こうなったのも、ぜんぶ、ぜんぶ!ぜ~んぶ!!貴明のせい!私の人生ぜんぶ貴明に滅茶苦茶にされて、怒ってるのに、めちゃくちゃムカつくのに・・・・・・!!!アーーーーハッハッハッハ!!!」

 今度は突然一人笑い出していた。
 枕を押さえつけて目を隠して、唇を横に綻ばせて思いっきり笑っていた。

「だから、私だってシてやったわ!!!」

 そう——貴明と同じ様に・・・・・・



「えっ、ほんと?・・・うん。千村くんの返事を聞かせて」

 水野結愛の告白に対して、貴明(茜音)は言ってしまった。
 不安と期待に胸膨らませている結愛。瞳を潤ませて見つめる結愛の姿はまさに恋する乙女であり、男ならイチコロの表情だろう。

「ごめんなさい。水野さんとは付き合えないよ」
「・・・・・・なんで?」

 理解できずに固まっている。しかし、結愛の目の輝きが失っていくのが分かった。

「なんでって言われても・・・うまく伝えられないけど・・・・・・ダメなんだ。ごめんなさい」

 結愛の告白に対して丁寧にお辞儀をして断りをいれる。そんな姿を見たくなかった結愛は態度を一変して憤慨していた。

「はあ!?わ、わけ分かんない!全っ然あやふやで意味不明なこと理由にされても納得できるわけないじゃない!!そんな言葉聞きたくなんかなかった!見損なったわ!意気地なし!」

 結愛は告白を断られて聞く耳を持たなかった。彼女にとって告白を受け入れていたことはあっても、告白をして、あまつさえ断られたことなど一度もなかっただろう。
 付き合うのが当たり前だと思っていたからこそ、現実を受け入れられずに駄々をこねている。その怒りの矛先は好きだった貴明に反転して襲い掛かっていた。

「バカ!変態!ばぁか~!」

 どんなに叫ぼうが貴明(茜音)の意見が覆ることはない。これ以上付き合っても負け犬の遠吠えにしかならないと分かっている。それでも貴明(茜音)が結愛の元から放れなかったのは——

「(水野さんにとってそうかもしれない。ひょっとしたら彼女は他の男子にも答えを求めてたのかな?)」

 男子から愛をもらおうとしていた結愛より先に、茜音の方が答えを手に入れたから。
 皮肉な話である。

「そんなの決まってる・・・」

 少しだけ茜音が結愛にほくそ笑んだ。

「長く付き合ったら分かるわよ!」

      カッチーン

「うるさいうるさいうるさい!童貞のくせに!付き合ったことなんかないくせに!私にえらそうに指図するんじゃないわよ!!う、うわあああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!」

 悔しそうに泣き言を漏らす結愛。それでも、顔を真っ赤にして本気で悔しがる姿に、同じ女性として痛みを分かち合いたいと思った。
 別のかたちで話が出来ていたら、きっと結愛と仲良くなれたのにと、この時茜音は思っていた。


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 その頃、体育の授業に向かっていた茜音(貴明)は、女子更衣室で女子生徒たちの着替えを楽しんでいた。

「うほぉ~。圧巻の眺め~」

 茜音(貴明)の前で制服を脱いで、可愛い下着を覗かせながら運動着に着替えていく。視ているだけでシコりたくなる衝動を抑えながら貴明はその目にクラスメイトのスタイルを焼き付けていた。

「茜音。いつまで緊張しているんだ。授業が始まるぞ」
「謙信ちゃん!うりうり~」

      余裕

「あ、茜音ちゃん?どうしたの?」

 突然胸の中に頭を埋める茜音に何か起こったのかと、上杉謙信-うえすぎけんしん-と前田亜衣子-まえだあいこ-は驚いてしまった。しかし謙信の胸を借りた茜音は、彼女の心臓の音はやけに大きいことに気付いた。表情をよく見ると強張っているように見えた。普段の彼女は表情も変えないのだが、その細かな変化に気付いたのは茜音(貴明)だけだろう。

「なんか緊張してない?」
「えっ?そうなの?謙信ちゃん・・・」
「すまない亜衣子。でも、心配するな。私は必ず勝利を掴みとろう」
「えっ?どういうこと?」

 体育の授業で負けられない戦いみたいな話が出ていることに茜音(貴明)は目を丸くしていた。

「毘沙門天-びしゃもんてん-を極めた者、なんとなくこの先、とんでもない化け物が現れる。私は、その者たちと戦うため、今まで力を溜めていた」
「なに、その超能力?」
「私は応援しかできないけど・・・頑張ってね。謙信ちゃん」

 とんでもない化け物?宇宙人の話かと思い茶化してやろうかと思ったが、謙信の顔はやけに本気モードになっていた。誤魔化したら逆に攻撃されそうなくらい、『軍神の威光-ぐんしんのいこう-』が発動していた。
 しかし、そんな彼女に臆することなく女子更衣室には高笑いをあげる者がいた。
 武田信玄-たけだしんげん-とその家臣たちである。

「オーホッホッホ!まさかあなたと共闘する日が来るなんてね」

      共同

 信玄と供に家臣まで体操服に着替え終わっていた。その格好を見て、家臣の二人がクラスメイトの真田幸₋さなださち₋と笹林紗々羅-ささばやしささら-だと気付いたのだった。

「諷₋ふう₋、倫₋りん₋。今回香山-かやま-は呼べません。二人で私たちのサポートに回りなさい」
「お任せを」
「完璧なパスをお繋ぎいたします」
「お前たちクラスメイトだったのか!?そういう仲だったのかよおぉ!!?」

 クラスで三人仲良くしてた理由が納得いってしまう。ということは、香山という家臣の正体は香山照之‐かやまてるゆき‐だと察してしまった。
 とは言え、クラス最強の武田信玄と上杉謙信を迎えて挑む今回の敵は相当手強いことが想像できる。上杉謙信が告げる『とんでもない化け物』とは一体誰のことなのか分からないが、それは授業が始まればすぐ分かるだろう。

「・・・・・・・・・ところで、今日の体育ってなにするの?」

 茜音(貴明)にとって興味なかった内容だが、思わずクラスメイトの様子を察して訪ねてしまった。身体能力の高い信玄や謙信を迎えて挑む授業内容に勝てないスポーツがあるだろうか?
 信玄は茜音(貴明)の質問に重い口を開いた。

「バスケットよ」
「・・・・・・・・・あ」

 それで茜音(貴明)も察してしまう。唯一スポーツの中で危惧するものがあるとすれば、バスケットしかない。先ほどの話――バスケットだとが変わる。うちの高校で力を入れている部活動はなかった。しかし、今年貴明たちと同じ様に新たに入学してきた5人のクラスメイトは弱小校だった女子バスケット部の存在を一躍変えてしまった。
 今も彼女たちの目を光らせるスカウトやスポンサーが連日やってくる。人気も他の部と群を抜いて高い彼女たちの存在が目の前に立ち塞がっていた。

「まさか、俺たちが戦うとんでもない化け物って・・・・・・」

 既に授業前だというのに体育館のコートの中で準備運動を済ませている。
 スポーツウェアに着替え、コートに立って相手を迎え入れる準備を済ませた女子バスケ部期待の新人の5人全員-フルメンバー-が待っていた。

「お手合わせよろしくお願いします」

 SG,チームをまとめる現キャプテン櫻井日向子‐さくらいひなこ‐が謙信に手合わせを願うと、謙信は硬く彼女の手を組んだ。
 日向子の後ろにはPF,
斎藤玲唯佳‐さいとうれいか‐、SF,小鳥遊楓子-たかなしふうこ-、C,東雲椿-しののめつばき-、PG,百鬼桃-なきりもも-が控えており試合開始の合図を待っていた。
 正真正銘のガチメンバー。バスケの超高校級の才能を持つメンバーと試合が出来るところで勝てないのは目に見えている。
 しかし、謙信も信玄も負けることは許さない性格で手を組んでガチで勝負を挑むという話だ。謙信の気合の入れ方が今までと違うのがよく分かった。
 こちらの勝算があまりにも低いのだ。一人でも欠けたら彼女たちに勝つ可能性は間違いなく零になる。亜衣子が応援に回るのも納得がいく。最強の相手に応えるためにはこちらも5人最強を選ぶしかないのだ。
 上杉謙信、武田信玄、真田幸、笹林紗々羅・・・・・・・・・。茜音(貴明)にはもう一つ引っかかることがあった。

「ん?亜衣子が観客だとすれば・・・5人目って誰だ?」

 今更・・・と言わんばかりに、謙信が茜音(貴明)を凝視していた。その視線に映る茜音の姿に、貴明は嫌な予感がしていた。

「あなたしかいないでしょう?」
「はっ?」
「まっ、仕方ありませんわね。この戦いは言い換えれば天下分け目の戦い。相手が最強である以上、こちらも最強を用意しなければいけません。校舎内で私と肩を並べるのはここにいる二人だと宣言しておきましょう」
「校内じゃなくて、クラス内だよな・・・」

 謙信だけじゃなく、信玄まで認める実力の持ち主が高橋茜音。
 ここにきてようやく茜音(貴明)は自分もまきこまれていることに気付いたのだった。

「い、いやいや、無理だって!茜音の腕じゃバスケ部どころか、お二人にも敵わないって!」
「引き受けてくれて背中から刺す様な真似はしないでくれ」
「なんてこったい・・・・・・」

 気付けば亜衣子率いる応援隊が集まっていた。バスケ部との本気の試合を見ることに多くのクラスメイトは自分たちの選択科目をそっちのけにして試合を観戦しに座り込んでいた。

 PF,上杉謙信、SG,高橋茜音、PG,真田幸、F,笹林紗々羅、C,武田信玄

 信玄と椿がジャンプボールし、試合は開始される。
 椿がボールを弾き、日向子がキャッチする。謙信と、信玄が二人で日向子を囲む。

「(なんでCがゴール下に戻らねえんだよ!)」

 茜音(貴明)が心の中で叫ぶ。しかし、女子の中でも身長がある二人に囲まれると日向子ですら抜くことも出来ない。『軍神の威光』及び謙信の威圧感は並大抵の女子生徒の戦意を喪失させるものだった。

 ダム、ダム、ダム、ダム・・・・・・

 ドリブルしながらタイミングを計る日向子。パスを回すように玲唯佳が声を出している。
 その中で日向子は呼吸を整えた。

「謙信さん、信玄さん。はじめに言わせてもらいます。私たちは第3クォーターまでに20点差をつけます」

 それは唐突な宣言だった。女子バスケ部は20点という大差をつけての勝利宣言に面喰ってしまう。

「なに?いきなり余裕をかましてるのかしら?」
「いいえ。これは余裕ではありません。あなた方二人と戦えることに対する敬意と一切の余談を許さない覚悟の意志です——」

 ダム、ダム、ダム————ポスッ。

「————え?」

 ボールが日向子の手に収まる。信玄も謙信も動きが止まった。日向子が何をしようとしているのかが分からなかったのだ。その一瞬の隙で日向子はシュートフォームを見せる。

「―—ここからは全力でやらせていただきます」

 日向子の手からボールが天高く放たれる。

「嘘!?ハーフコートからシュート₋う₋った!?」

 目の前からボールが放たれるまで、信玄も謙信も動くことが出来なかった。それほど日向子の動きは滑らかな一つの動作として繋がっていた。
 二人が振り向いた先、ボールは空中で綺麗な放物線を描いて落ちていき——、静寂に包まれた体育館の中で、パスッとボールとゴールの繊維が擦れるだけの音が響いて床にまっすぐ落ちてきた。
 ハーフコートからのロングシュート。それを鮮やかに日向子は決めて見せたのだ。

「なに、いまの流れるようなシュート。喋りながら届くの?」

      本気で殺しに行くスタイル

 日向子に対して黄色い声が上がる。ファンクラブの女子生徒たちが甲高い声を張り上げて女子バスケ部を応援し始めた。試合が始まって僅か10秒。しかし勝負を決定づける3ポイントシュートを日向子は決めて見せたのだ。
 士気があがる女子バスケ部。日向子の活躍を潰さないようチームの動きも良くなり、謙信たちに襲い掛かる。

「謙信、信玄。それぞれの能力は高いけど、バスケは5人でやるもの。チームワークが必要不可欠だよ」

 玲唯佳が言う通り、一日だけのドリームチームでは、日々積み重ねているバスケ部の信頼には敵わない。アイコンタクトもない謙信と幸のパスをカットしてそのままゴールを決めていく。

「僕たちを倒すだけの付け焼刃で覆るほどバスケは簡単なものじゃないよ?」

 椿が言う通り、やっと謙信にシュートまで運んでも、椿のブロックでリバウンドまで拾われてしまう。速攻とばかりに反撃の狼煙をあげる椿のパスは俊足の楓に届く。多彩なテクニックと変幻自在なストリートバスケを彷彿とさせる挑発、さらに楓の高速ドリブルからくる切り返しに紗々羅が足をとられて転ぶ、アンクルブレイク。さらに切り込んだ先で信玄に真っ向勝負してファウルをもらいバスカンと合わせて3点プレイをもぎ取る。

「なんだと・・・くっ!」
「過去の栄光に縋る歴史は終わったのよ。時代に評価された若者の力こそ正義だ!」

 咆哮する楓子に対して震えが止まらない幸と紗々羅。点差がどんどん開いていき、負けている時のプレッシャーが重くのしかかり、ストレスが疲労となって汗に現れる。第2クォーターが終わった時には既に大量に汗を噴き出しており、疲労の色が隠せなくなっていた。
 しかし、負けたくないという気持ちだけでコートに立ち続ける。第3クオーターで点差は18点。日向子の宣言に対してあと2点と追い詰められた状況まで来ていた。

「はぁ・・・はぁ・・・まだだ!まだぁ!!」

 謙信の足掻きに対して日向子は冷ややかな顔を見せる。それは相手に対して「よくやった」と、称賛に近いものだった。

「よく頑張りました。敵ながら賞賛を送ります。・・・でも、これは勝負であり、勝つか負けるかしかありません。私たちは負けられませんし、これからも向かってくるのでしたら手加減は出来ません」
「う・・・うおおおおぉぉぉおおおぉぉ!!!」

 日向子に抗うようにドリブルする謙信。その気合、その気迫に対して最後まで隙を見せずに日向子は謙信に喰らいつく。

「私たちは負けられない。まだ試合は終わってなんか——」
「いえ、もう・・・終わったんです」

 ドリブルしていたはずの謙信の手から、突如ボールの感触が消えた。ボールは謙信の手から放れ、百鬼桃の手に渡っていた。謙信は知らずうちに日向子に桃のいる方向へ追い込まれ、桃が隙をついてボールを奪ったのだ。
 ボールを取られたことに気付いた謙信が崩れ落ちる。百鬼桃は謙信を見ることなく、ドリブルで切り込んでいった。
 その勢いはまさに鬼人。緩急をつけてディフェンスの茜音とズレを作りそのまま抜き去り、スピンムーブで幸を騙し取り、紗々羅をギャロップステップで跳び越える。

「なんだそりゃあああぁぁ!!?」

 気付けば桃一人で4人を抜き去り、その勢いのまま最後信玄と供に跳躍する。桃はレイアップシュートを放とうとする。

「そんな低い身長からのレイアップシュート?はたき落としてやる!」
「待って!そのジャンプはゴールに対してあまりに遠い!?」

 意気込んだ信玄もジャンプと供に桃のシュートコースを塞ぐ。手でゴールの軌道を覆い隠したものの、桃の視線はゴールの遥か上を眺めていた。

「——まさか!」
「やっと気づいたか。低身長でもゴールを決められる桃の得意技、ティアドロップシュート」
「!?」

 ひょいっ。
 ブロックするより早く放たれた桃のボールは、軌道を鋭角にして高々と舞い上がっていた。はたき落とすことが出来ず空を切る信玄の手。桃のボールはゆっくり落ちていき、ゴールリングに吸い込まれるようにして落ちていった。
 館内を締める大歓声が木霊した。一番の盛り上がりを見せ、日向子の宣言していた目標の20点差に到達した。

「偉人の名を語る者たちよ。荒城の月を想い、去れ」

 第3クオーターが終了し、桃もまた勝負ありと言わんばかりに自軍コートへと戻っていった。宣言通りに勝負運びをされたバスケ部に頭が上がらない。すべてが日向子の手の中で行われていたかのような感覚に頭の中が真っ白になっていた。

「・・・本当に強いな」

 完膚なきまでの敗北。笑いですら出なかった。

「足りないスペックは味方がフォローし、技術でカバーしている」
「こっちは喰らいつくだけで精いっぱい」
「信玄様にパスが出せない・・・くっ」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 圧倒的大差で負けるのかという、プライドを崩壊させるほどに徹底的に瓦解される様に信玄たちも謙信も声をかけられない。敗北色が濃厚。第4クォーターを待たずして負けを認める方が面目が保たれるとすら思える。
 残り10分。観客も、選手も、誰もが試合の結果は決まったと、諦める中――。
 誰も立ち上がれないベンチで一人、それでも諦めず、最後まで足掻くことを決めた選手がいた。
 高橋茜音(貴明)だった。

「しゃーねーな。本当はしゃしゃり出てくるのはフェアじゃないと思ったんだけどよ・・・」
「茜音?」
「お前たちがガチで負けるなんて予想してなかったし、このまま負けるのは癪じゃねーか。もういい。本当によく頑張った。あとは俺に任せてくれ」

 茜音(貴明)はようやく身体が温まってきたといわんばかりに屈伸をし、身体をさらに柔らかくほぐしていく。まるで自分の身体の限界についてこさせるかのように、現段階でもっているものすべてを吐き出そうとしているみたいだ。

「高橋茜音。まだそんな体力が残っているのか?」
「うっし。それじゃあ始めるか」

 アキレス腱を伸ばしながらコートに戻る茜音(貴明)を筆頭に、全員が重い腰を上げる。それを見て、まだ勝負を諦めていないのかと困惑する表情を浮かべるバスケ部。

「・・・分かりました。最後まで諦めない雄姿は見事です。私たちもそれに応えましょう」
『おおぅ!!』

 気合を入れ直し、バスケ部もコートに戻ってきた。第4クォーターが始まり、ラスト10分間の試合が始まる。
 今まで謙信を筆頭に動いていたが、最後にポジションを入れ替え茜音を筆頭にする。それだけの変更で特にメンバーを変えたり、付く相手を入れ替えたわけではない。
 つまり、日向子に茜音をぶつけてきたという強気な作戦だ。無謀とも思える相手の作戦に日向子は警戒しながら茜音に付く。しかしながら高橋茜音と上杉謙信ならステータスは謙信の方が高い。相手のデータを把握している女子バスケ部に隙はなく、普通にやれば茜音が日向子を抜くことはあり得ないと踏んでいた。
 しかし、茜音はここで予想外の展開をする。シュートコースを塞いだ日向子は8割パスで来ると読んでいた守りをしていたが、視線を泳がせパス相手を探す茜音につられて日向子がボールから視線を外した一瞬をついて反対方向へドリブルを切り日向子を抜きに出たのだ。

「なっ!?」
「ミスディレクション!?うまい!」

 ドリブルでフリースローラインまで切り込んでいく茜音。そこまで来るのは久しぶりだった。椿と日向子を相手に飛んだ茜音がシュートを狙う。

「レイアップ!?させないよ!!」

 椿がジャンプをしてレイアップシュートの軌道を塞いだ。しかし、茜音は一度シュートモーションに入った手を下げ、逆の手に持ち替えた。

「ダブルクラッチ!?」

 日向子が叫ぶ。そして、椿の横から放たれた茜音のシュートはゴールの上でバウンドしたものの、リングの中に吸い込まれるように入っていった。

「ふぅ~あぶねえ、あぶねえ」

 茜音が隠していた高等テクニックに日向子は動揺する。今までパスを回していたのはこの時のための布石だったとでも思えるほどだ。

「大丈夫かい、日向子?」
「ありがとう。今度は抜かせない」

 日向子にとって計算外があろうが、それを即座に修正する。茜音がドリブルで切り込んでくるのなら、さらに距離を取ってパスとドリブルを警戒すればいい。

 さ す が に 茜 音 に シ ュ ー ト は な い だ ろ う 。

 そんな茜音に再びボールが回ってくる。日向子が腰を落とした瞬間、茜音は身体を起こしてそのまま3Pライン外からシュート体勢をとった。

「放-う-つのか!?」
「スリーポイント!?」

 シュ…

「はいったぁぁぁ!!」

 日向子-てき-も謙信-みかた-の声を聞くまでもなく放った茜音のシュートはゴールリング目指して飛んでいき、そのままリングをくぐったのだ。茜音一人で第4クォーター開始1分で5点も取り返していた。
 茜音に対する歓声があがる。この場で初めて女子生徒からの声援だった。

「どういうこと?茜音さんにここまでのスキルなかったはずなのに!」

 まるでデータが当てにならない。こんなこと女子バスケ部で初めてのことだ。

「ハワイで親父に教わったんだ」
「どういう意味?」

 茜音(貴明)にとって本気でも、女子バスケ部にとっては挑発に取られてしまったのか、日向子だけではなく、楓子が茜音を止めにかかる。

「マジでいく。こっちもバスケで馬鹿にされたら溜まったもんじゃないわ」

 楓子と日向子がポジションを変わりタイマン勝負に持って行く。圧倒的な手数の前に錯乱させる作戦の楓子も、茜音の眼光はその一瞬を見抜いてボールを弾いた。

「あっ・・・えっ・・・!」

 楓子自身ですらボールをカットされた記憶は久しくない。ましてや女子になど一度もなかった。冗談で一度男子混合で試合した時に、千村貴明にボールを取られた時以来になる。
 その時の記憶が一瞬重なるも、楓子は記憶を振り払い試合に集中した。

「ふざけるな!たった一人に何度も決めさせてたまるかあぁぁ!!」

 楓子が高速で茜音の前に立ち塞がる。その時茜音はシュート体勢に入っていた。

「!!」

 楓子がやってくることは予想済みとばかりに、身体を後ろに倒しながら放つことで軌道を確保していた。

「フェイダウェイ!!?」

 茜音のシュートが決まり、さらに点差は縮まる。それだけじゃない。

「身長が足りないことを知って・・・私じゃ止められない・・・」

 楓子に傷をつける決定的なシュート。楓子が唇を噛みしめていた。日向子、椿、楓子の三人が茜音にやられることで、士気が下がるだけじゃない。茜音の活躍で休めた謙信、信玄たちの疲労を軽減し、同時に士気をあげて見せたのだ。
 そのままの勢いでもう一本スリーポイントを決める。女子バスケ部でも茜音の勢いが止まらなかった。

「10点差あああぁぁぁあぁあああ!!!」

 茜音一人で差を半分まで追い詰めた。観客の声援、相手に対するプレッシャーも十分与えている。追いかけるには最高の舞台だ。

「みんな、ここは絶対止めるぞ!」
「ここが責め時!頂上決戦ゾ!」

 謙信がラスト5分『軍神の威光』を発動する。さらに信玄も『風林火山陰雷-ふうりんかざんいんらい-』を発動する

「分かってる。動くこと雷霆(らいてい)の如し!楓、倫!」

 信玄の声に家臣もフル稼働。全能力を一定時間上昇する。

「疾きこと風の如く!」
「キレのあるドライブ!?」

 幸が疾風の如く駆け出しドリブルをする、今まで抜けなかった玲唯佳を遂に抜いた。そして、その後に待つ桃に向かって突っ込んでいく。しかし、それも紗々羅が対応する。

「徐(しず)かなること林の如く」
「スイッチ!!」

 桃に身体を張って立ち塞がる紗々羅。一歩間違えればブロッキングをとられてしまう行為だが、ファールと紙一重のプレイを辞さない覚悟で桃を食い止める。椿とスイッチして負けじに幸に喰らいつこうとする桃に、幸は背後から駆け出してくる味方の足音を聞いていた。

「背後を見ずにパス!?」

 シュートではなくパスを選んだ幸。その先に誰がいるのか確認した桃の瞳には、ボールを手にしたノーマークの信玄がシュートを構えていた。

「侵掠(しんりゃく)すること火の如し!レイアップシューート!!」

 ぶわっと地面を蹴った信玄がゴールリングに置いてくる——

 げし…

 力が強かった。

「あーーしまったーーーーっ!」

 信玄が叫び、リバウンドを取るために桃が構える。しかし、そのボールは落ちる前に飛んでいた謙信の手によって掴み、

「はいれええぇぇ!!!」

 気合でリングを揺らしてそのままダンクシュートへと繋がった。

「きゃああ――っ!8点差あああぁぁ!!!」

 観客が騒ぎ立てる。謙信たちの猛追に感化されているようだ。

「お前だけじゃ役不足だ」
「謙信!!?こいつぅぅ!!!」

 悪口、嫌味を言いながらも去っていく二人に対して女子バスケ部が追い込まれていく。点差では勝っているはずなのにまるで負けているかのような気分は決して許されるものじゃない。再び2桁以上の差を貰わなければ納得いくものではない。
 日向子はパスを繋ぎながら綻びを探す。所詮付け焼刃のメンバー選びは時間をかければ焦って自爆する。30秒ギリギリまで使うことで相手を焦らせる手を使い、コートめいいっぱい使ってパス回しを始めた。
 日向子、椿、桃の三人でパスを回し、謙信が一人追いかける。他の四人はフリースローラインに固まり内側からの侵入を警戒しているようだ。日向子の計画通り、やがて謙信の体力が尽きればそこからシュートチャンスがやってくるはずだった。
 しかし、ふと日向子はあることを思い出す。謙信たちは適当に守っているはずだと思っていたフォーメーションの中で該当するものが一つだけあったのだ。

「これは・・・1-3-1のゾーンディフェンス!」

 謙信への補助を特化させた日本バスケットの中では珍しいフォーメーションだ。しかし、『軍神の威光』を発揮している謙信の威圧感はまさに獣。シュートするという意志を見せれば即座に襲い掛かるという警告がビリビリ伝わってくる。
 だから誰も打てない。謙信一人でシューター三人が抑え込まれていた。パス回しをしていると思っていたのではなく、パス回しをさせられているのだ。玲唯佳も楓子も3Pシューターじゃない。切り込むためにパスを待っているが、そうなれば4人で守備を固めていく。
 この第4クォーターで謙信たちは難攻不落の城を築きあげていた。

「なんなのよ・・・今までと戦っている相手が違うよう・・・・・・」

 第4クォーターから何かが変わったと感じざるを得ない。日向子の想定を超えることが続いている。
 誰だ・・・
 誰が変えている・・・
 このコートの支配者は・・・・・・高橋茜音!?

「あなたは・・・・・・何者だというの!?」

 日向子がよろめいた隙を見逃さず、謙信がボールをカットする。
 その瞬間、茜音は駆け出していた。
 誰よりも早く、俊敏に、機敏に、相手のゴール目指して——

「(不思議だ、茜音の身体は本当に軽い。それでいて、しなやかで柔らかく、まるで——浮いているみたいだ)」

 茜音の身体と貴明のバスケセンス。男性の脚力と、跳躍力を手に入れた茜音の身体は疲れを知らず、駆けているのにまるで浮き上がっていくよう——。

「フリースローラインから!!?」
「跳んだぁ!?」

 ——それはまるで、目に見えない階段を昇っているような光景だった。

「うおおおぉぉぉぉ!!」

 日向子も茜音を追いかけて同時に飛んでいた。しかし、その跳躍力は茜音を残して先に落ちていったのだった。

「ウソでしょ・・・後に飛んだ私の方が先に落ちてるなんて・・・・・・」

 必死に伸ばす日向子の手も茜音には届かず落ちていく。茜音の身体は浮いたままゴールリングに勢いそのままに向かっていく。そしてボールを置いていく。

「これって・・・まさか・・・・・・エアウォーク!!?」

 豪快なダンクシュートをかまして地面におりてくる茜音。しばらくの間ゴールリングが激しく揺れていた。

「すごいすごい!茜音ってダンク出来たのか!」
「しかもフリースローラインから飛んで届くなんて凄すぎる・・・!」
「聞こえる?あなたへの歓声が!茜音コールが!!」

 興奮冷めやらないチームが一瞬でも冷静になろうと観客の声を届かせる。茜音の耳に聞こえてくる音に、ようやく仲間以外の声が聞こえてきた。

『アカネ!茜音!あかね!あっ!かっ!ね!!』

 茜音と一体感になる観客たち。その声が届いた時、心臓の音が張り裂けそうになっていた。

「ゴホッ、ゴホッ」と咽返る茜音に慌てる謙信たち。大量のドーパミンが噴き出していたらしく、その疲労は茜音の身体の限界を超えていたものだった。
 次の瞬間、試合終了の鐘が鳴り響く。正常に戻った時に見えたスコアを確認し、あと6点届かなかったことに気付く。

「負け・・・そうか・・・・・・敗けたのか、俺たち・・・」

 敗北に気付いた茜音(貴明)が汗を噴き出しながら床に寝そべった。10分間全力で試合してしまっただけでしばらく動けそうもなかった。

「追いつけなかったのかぁぁ!」

 悔しいが負けは負け。茜音(貴明)なんかより謙信や信玄の方が悔しいに決まっている。しかし、謙信と信玄、二人が茜音の肩をそれぞれ担いで動けない茜音を起こして立たせた。

「整列よ。最後まで胸を張りましょう」

 謙信は最後まで顔に出さない。凛々しく戦い全てを出し尽した表情をしていた。そして、謙信の変わりに信玄が言う。

「勘違いするな。私たちはやり切った。見事な結果に私は満足している」

 それは第3クオーターとは別人の表情をしていた。家臣たちも十分に結果に納得した表情をしていた。謙信も決して表情を変えてはいないが、心もと綻んでいるように見えた。亜衣子が精一杯の拍手を送っていた。

「おめでとう。女子バスケ部の勝利だ。強いな、きみ達は」

 女子バスケ部にエールを送った。しかし、女子バスケ部は無言で首を横に振った。

「いえ、私たちの完敗です」

      敗北けたのか・・・

「あんなプレイ見せられて、試合で勝っても嬉しくありませんから」
「私たちとの試合中に魅せプレイするだなんて。まだまだ凄い奴はいっぱいいるもんね」
「か、感動し・・・・・・。ほんと、すごくて・・・・・・ぐすっ」
「ほんと信じられない。是非僕達と一緒にバスケ部に入ってくれよ」

 各々、相手に対して称賛のエールを送っていた。試合が終われば友達。クラスメイトの柔らかな笑顔が待っており、桃が涙を零して泣いている姿をこの時全員はじめて見たのだった。
 特に茜音に対して興味が尽きない女子バスケ部は5人で囲んで茜音を部活へ勧誘を始めたのだ。

「いやいや、今回だけ!もう二度と出来ないって!」
「帰宅部にしておくのは勿体ない!是非一緒に全国目指しましょう!」
「運動したらもっと劇的に変わりますって!今からでも遅くないから部活入ってください!監督でもいいですからぁ~!!」
「勘弁してくれ!俺はもう運動はコリゴリでござる~!!」

 この試合を通じて、茜音に対して女子バスケ部の人気が上がったのは言うまでもない・・・。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 そんな試合を女子たちと供に見ていた貴明(茜音)と義也。体育館の扉の裏にくっついて試合で暴れる茜音(貴明)の姿を酷評していた。

「あいつ!!私の身体でなにしてくれるのよ!!きゃあぁぁ!!私そんなこと出来るわけないでしょう!これからどうするのよ、ふえええぇぇん!!ヘンな噂が出たらどうするつもりよ!!!」
「高橋さんってどんなスペックの高さだよ」

      カナリヤ。泣く

 泣きたい声をあげながら暴れる貴明(茜音)を抑えながらつい本音が出てしまう。しかし、今は静かにした方がいいかもしれないと二人はアイコンタクトで語っていた。二人の間にはもう一人、この試合を静かに見守っていたメイドさんがやってきていたのだ。

「うぅ・・・椿ちゃん・・・カナリアがユニフォームを洗い忘れたばっかりに本調子で試合に臨めなくて申し訳ありません。このような面白い試合になるなど夢にも思っていなくて・・・」
「誰だよ、このメイド・・・」

 一人おいおいと声を荒げて涙を流すメイドと供に、体育の終わる時間を待ち続けていた。



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「うわあ。貴明ったらなに考えてるんだよ!」

 教室から消えた茜音(貴明)に対して取り残された貴明(茜音)と義也。
 特に部活動の『飲み薬』を使った挙句、身体を許可なく入れ替えた貴明に対して弁明の余地はなかった。間違いなく茜音は怒っているだろうが、身体を持ち逃げした状態で解決手段がない義也はただただ土下座で謝り倒すしか許しを請う方法がなかった。

「ご、ごめんなさい高橋さん!貴明だって悪気があるわけじゃないんだよ。きっとあいつなりに僕との部活を楽しみにしていたせいで、部活を続けたかった想いが爆発しちゃったんだよ、きっと!感情のまま動いちゃったけど、高橋さんにも分かってもらいたくて、仕方なく・・・」

 言えば言うほどドツボにはまる。苦しい言い訳に言葉がどもる義也に対して、貴明(茜音)の下した判決は思いのほか軽いものだった。

「別にいいわよ。そんなこと言ったってなにも変わらないもの」
「そんなことって・・・」

 身体を入れ替えられたというのに、茜音は思っている以上にショックを受けてはいなかった。むしろ、堂々と受け入れている貴明の姿は、他の誰よりも貫禄があった。と、言っても義也たちが見ていた女子たちはだいたい憑依していたせいで意識を眠らされていた。幽体になって入れ替わった経緯まで覚えているせいか、そして、入れ替わった相手が貴明であることが間違いないせいか―—。

「でも、貴明のことだから茜音さんの身体を使って貶めるようなことするんじゃないかな?」
「しないわよ。ああ見えて臆病だもの」

 はっきりと貴明に対して断言する茜音。幼馴染だから貴明のことをよく分かっていると言わんばかりである。

「私に直接言えないのに、他の子に手を出せるわけないじゃない!」
「出してるんだよなぁ~」

      何故言い切れる?

 貴明が今までしてきたことを知らない茜音だからなのか―—とはいうものの貴明だって元々悪い人間ではない。人一倍温情があり、まじめな熱血漢と言える性格だ。その分、悪に染まれば悪に染まってしまうような人間だ。悪ノリが過ぎてしまうのは貴明の悪い一面ではあるが、茜音に見せている貴明の姿は決して悪人には見えていない。そんな姿を見ていればひょっとして——

「茜音さんって・・・もしかして・・・・・・」

 前を歩く貴明(茜音)を見つめていると、突然貴明(茜音)が立ち止まったのだ。何事かと思い布施も止まると、横を向けば男子トイレがあった。

「ねえ、そんなことより布施くん・・・・・・」
「えっ?なに?」

 急にしおらしく義也に語りかける貴明(茜音)。

「あのね。本当にごめんね。私、男の子のことよく分かってないから聞くんだけど」
「うん」
「男の子って、どうやってお手洗いするの?」
「・・・・・・・・・へ?」

 貴明(茜音)はどうやらお手洗いに行きたかったみたいで、男子トイレに初めて連れていった。入ることもないと思っていた男子トイレ。女性には馴染みのない小便器が並ぶ。

「男子のトイレって狭いわね」
「そうなの?」

 手洗い場は同じだが、女性トイレは個室が6個あるのに対して、男子トイレは小便器が4、大便器が2個で構成されている。茜音がそう思うのは最もである。貴明(茜音)は義也に連れられて小便器の前に立った。

「じゃあ、チャック下げて」
「えっ、このくらいの距離でいいの?」
「そこから!!?」

 立ちションが出来ない女性にとって男子の距離感が分からないのは仕方なかった。義也が距離を見ながらなるべく想定通りの放物線を描いて、尿はねを回避する距離感を見定めて貴明(茜音)を立たせた。

「あと一歩前へ・・・・・・この辺でいいと思うよ」
「うん・・・」

 貴明(茜音)がズボンのチャックを下ろしていく。だんだんと貴明(茜音)が無言になっていく。

「で、そこから手を差し入れて、パンツから取り出して」

 説明したことを履行するように、下ろしたチャックの中に手を差し伸べて貴明の逸物を取り出すためにゆっくりと握る。
 ぶるっと、貴明(茜音)が突如震えた。

「うひゃあ~!ふにゃふにゃあ~。なにこれ、気持ち悪い~」
「貴明、可哀想に・・・」

 ここにはいない貴明に思わず憐みすら感じてしまう義也。入れ替わったことで男性の尊厳が削られているような気がするのは義也の気のせいだろうか。

「いやあぁぁ!なんか出た!ズボンから子袋とフランクフルトが顔出してきて、いやあぁああああ!!!」
「自分で出したんだよなぁ~」

 茜音が一人ではしゃいでいる。なんともレアな光景であり、付き合っている義也の方が恥ずかしくなってきていた。

「静かにしてよ。僕まで恥ずかしくなるじゃん」
「ご、ごめんなさい。つい・・・」

 男子トイレで騒ぐのは勘弁してくれよと、義也が咎めるとようやく貴明(茜音)が狙いを定めた。

「しっかり構えて。下半身に力を入れていけば出てくるはずだから」
「えっ、えっ、どこ狙えばいいのかわかんない~?」
「そんなこと考えたことないよ。いっそのこと目を瞑ってシたらいいんじゃないかな?出来れば下を向けて底に落とせば尿はねしなくて済むと思うよ」
「わかった」

 本当に幼児がする初めてのお手洗いみたいに、言われた通りに目を閉じて小便を始めた。
 ジョロロロロ・・・
 ピッピッ。

「はぁ・・・へぇ~~~」

 茜音が初めて男子として用を済ませた。結果、感慨深いため息を吐いた。

「飛び散らなくて、いいわね」

 男子の場合はホースを操作しているように尿が放物線を描いてやり易い。女子のように落ちて出てくるわけじゃないので確かに楽だろう。時に男子は普段と違う放物線を描いたり、二股放出、トリッキーな動きをする場合もあるが、義也がそこまで茜音に教える必要はなかった。

「左に曲がるのね♪」
「もういいよ」

 男子の小便でここまで盛り上がるなんて義也ですら想定していなかった。
 むしろ、茜音が男子の身体付きに食いつくのが意外過ぎた。茜音も年甲斐の女の子。異性の身体に興味あるのは男子だけとは限らないということを義也は改めて痛感した。

「茜音さんがボロを出すのってなんか新鮮なんだけど・・・」
「コレを擦っていけば白い液が出てくるなんて、男の子って不思議な身体してんのね」




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