純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

カテゴリ: グノーグレイヴ『体内変化』

 後日――
 俺は卒業した天使花菜を呼び出していた。
 やってきた花菜はアイドル衣装を身に付けていた。それも俺が命令したものだ。彼女は俺の命令に逆らうことをしなかった。
 しかし――

      天使ちゃん。マジ天使

「うひょう!やっぱりアイドル衣装は見栄えがいいなあ~天使ちゃん。マジ天使♡」
「まずいんですよ。卒業した私がアイドル衣装着るの。こんな姿、誰かに見られたら」

 ――命令は聞く。しかし愚痴は言う。アイドルを卒業した癖に俺の言うことには強気に噛みついて来たりするので面倒くさい。

「あ?大丈夫だって。こんな朝っぱらからアイドル衣装に身を包んだ元アイドルなんているわけないだろ。コスプレだと思って気にしないよ。そういうことで俺だってコスプレしてるわけだし」
「コスプレって言っても制服じゃないですか。アイドル衣装より楽すぎやしませんか?」
「そんなことない。制服なんて俺の歳にはキツいから。うっわ、恥ずかしい」
「・・・制服持っているだけ羨ましいです。私は持っていませんから」

 結局、花菜はアイドルを卒業した後どこの事務所にも入ることなく、静かに去ることになった。俺が聞いた『事務所移籍』とはなんだったのだろうか。ネットの中に蔓延る嘘に流されたというのは癪だったが、おかげで彼女は俺専用のオナホになった。
 呼び出せばいつでもやってくる俺専用のオナホという扱いなのに、天使ちゃんはそれを受け入れて俺に付き合う日々を送っている。
 
「じゃあ、行こうか?」
「えっ・・・この格好でどこに行くの?」

 この格好で大勢の目がある場所は歩きたくないのだろう。後ずさりする花菜に対して俺は冷たく吐き捨てる。

「おいおい、俺のいくところに指図するのか?」
「・・・はい」

 俺は花菜に釘をさすことで、彼女は黙って俺の横を歩き始めた。



続きを読む

 天使花菜の卒業ライブが終わった後、握手会が行われた。
 そこには、最後と言う事もあり、普段立つことがなかった天使花菜も初めて握手会に降り立ち、ファンと堅い握手をしている姿を見せていた。

「俺、ようやく花菜ちゃんと握手することができてほんと、幸せです!」
「貴明、泣かないで。僕まで辛くなるから」
「本当に辞めちまうのかよ、アイドル!」
「ごめんなさい。私、これからは学業に専念しようかなって」
「そっか。違う道に進んでも僕たち応援してるから!」
「うおおおお!!!頑張っでぐれ゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!」

 ぶんぶんぶんぶん!!

 腕を大きく振る間に別れの時間が訪れ、学生たちは天使ちゃんから放れていく。 
 学業だと?ネットでは既に『大手事務所に移籍』という見出しまで流れているというのに、古参を騙して感動の再会を演出するつもりなのだろうか。
 最後までファンを馬鹿にしている!
 いいさ。それが天使ちゃんのやり方だというのなら、俺はきみに真実を伝えよう――。

「次の方、どうぞ」
「こんばんは、天使ちゃん」

 ――俺の番だ。天使ちゃんと初めて握手を交わす時間。そして、これからずっと、放れられなくなる時間。

「どうも、ありがとう。私の卒業ライブに来てくれて――」
「ずっと焦らされながらファンの前で踊る気分はどうだったかな?」
「えっ・・・?え・・・と、なにを言ってるの・・・?」
「今日のライブ最高だったよ。ステージに水たまり作りながらダンスしてたからもう衣装がびしょ濡れじゃないか」
「こ・・・これは・・・・・・汗で・・・・・・」

      アイドルにオナホなんか知るわけないだろうjk

 事実を突かれて慌てて口から出任せをいう天使ちゃんもまた可愛いよ。けど見え見えも嘘は俺には通用しないよ。時間に限りもあることだし、さっさと種明かしを始めよう。

「さて、天使ちゃん。これは何でしょう?」
「・・・・・・?」

 天使ちゃんにオナホを見せても分かるはずがないよね。
 実に健気。

「これはね、天使ちゃんのおま〇こと感覚が繋がっているんだよ」
「えっ・・・」
「信じてないなら、指でオナホを責めてあげるよ。そうすれば信じてくれるだろうね」

 俺がオナホに指を近づけていく。それをジッと見ていた天使ちゃんも嫌な予感がしたのか、「ダメッ!」と悲鳴の声を荒げた。でも、もう遅かった。

「んんッ!?」

 オナホに指を挿入した瞬間、天使ちゃんが内股に閉じて身体をくねらせた。明らかに俺の指に合わせて感じたようだ。

「ほら?感じるだろ?」
「ン~~~ッ!!」

 まだ乾ききっていないオナホ(膣内)をかき混ぜられて悲痛な喘ぎ声を漏らす。
 困惑しながらも快感に蕩ける表情が見れて堪らないよ。

「ね?きみのおま〇こは俺のやりたい放題なんだよ」
「いやぁ・・・わたしのアソコが・・・・・・わけわかんないよぉ~!」

 オナホを奪おうと小さな手を伸ばしたが、その前体力が力尽きて身体のバランスを崩して俺に寄りかかってきた。
 軽い体重を簡単に抱き、荒い息遣いが聞こえる天使ちゃんに耳打ちする。

「準備が出来たら近くのホテルまで一人でおいで。待っているから」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 伝えたいことを告げた俺に時間が来て、天使ちゃんから放れていった。


続きを読む

 天使の歌声を持つ1万年に一人の生まれかわり、JBT48メンバーの1人、天使花菜‐あまつかかな‐はライブを中心に活動する地下アイドルの卵だった子だ。愛おしいパフォーマンスと歌声に魅了されたアイドルヲタが彼女を求めてライブハウスに集まり、彼女の歌声を響かせている時だけ大盛況ぶりを見せていた。
 ファンと接することのできる時間、握手会ですら決して現れない彼女は、ファンとアイドルの関係を明白にしており、触ることは決して許さない。それでもいつか彼女に触れようとしていたファンの1人、真壁徹‐まかべとおる‐もまた連日ライブハウスに訪れていた。
 つまりは彼女の魅力に取り憑かれた男だった。

 しかし、少しずつ嫌な前兆を感じていた――。天使ちゃんを追いかけていた俺の情報網に、『天使いるよ、生番組初出演決定』が飛び込んできたのだ。ファンの1人からすれば朗報なのかもしれない。しかし、仕事の嫌気を癒してくれる天使花菜を見つけてから、頻繁にライブに通うようになったし、休みになれば全国追いかけるようになったし、グッズだって揃え、彼女のために出来ることは買えるだけ買ってあげた!
 すべては彼女が喜んでくれることを願ってのこと。そのために仕事だって頑張ってきたのだ。
 いつの日か、俺の顔を認知して微笑んでくれる彼女を見られることを信じてここまで貢いできたのだ。小さな舞台で輝く大きな翼を俺は密かに楽しみにしていた。
 それなのに、これ以上のことを俺は望んでいないのに、どうして彼女は狭いライブハウスを飛び出そうとしてしまうのだろう。俺のもとから放れて生放送で知名度を稼いで古参を見捨て、地下アイドルを卒業するつもりなのだろうか。

『【朗報】天使花菜 卒業ライブ開催決定!』

 ――予感は当たっていた。突然発表された、彼女の卒業ライブが開催されることとなったのだ。これを期に地下アイドルではなく大手プロダクションと契約するつもりなのかという策士めいた思惑が垣間見えてしまった。

『天使花菜 大手事務所と移籍か!?』
『天使花菜 フェス出演決定!!』

 次々に飛び込んでくる彼女の情報。目まぐるしく移り変わる、彼女の環境。
 巣立ち旅立とうとしている彼女に俺は素直に喜ぶことなどできなかった。
 むしろ、目覚めたのはどす黒い感情。、古参を捨てて新規へ飛び立つ非道な行動に俺は我慢できなくなった。
 天使のような悪魔の笑顔を向ける彼女が生番組に出ることがあれば、握手会は愚か、二度と俺たちのライブハウスに戻ってくることはないだろう。
 結局彼女はファンのことを見てはいなかった。俺の想いは天使ちゃんに届いていなかった。

「くそ!くそ!ふざけんなよ!」

 アイドルなら一番にファンのことを考えてくれるものだと思っていたのに、思い通りになってはくれない。それなら俺だって同じことを天使ちゃんにやり返してやる。



続きを読む

 ワイシャツを脱いで新作の上に乗る正毅。Fカップの乳房も大きく露出し、正毅が動く度にその胸を大きく揺らしていた。そして下に埋もれる新作がその手をFカップに添える。
 掌では掴み切れない大きさと柔らかい弾力。
 肩が凝るんではないかという重みがそのまま新作に乗りかかっているのだ。

「……すげぇ。中身が詰まってるって感じだよなぁ。……やわらけえ……」

 新作がつぶやくと正毅が興奮し、喜びと驚きの表情を浮かべながら何度も巨乳を新作の乳房に擦り合わせた。

「うああん!」
「おまえだって、実はかたち綺麗だぜ。感度も良いし、マジ最高だ。俺のパートナーはお前しかいない!」
「お、おれも、正毅としかこんなこと出来ねえ。二人だけの、秘密にしてくれよな?」
「当然だ……」

 正毅の唇が触れ合う。とても自然なフレンチキスだった。心は男性だが見た目は女性だ。二人顔を真っ赤にして、笑いあった。

「もうここまでしちまったんだ!最後までしちまおうぜ!」
「………うん」

 新作もようやくノリ気になったのだ。正毅が乳房を差し出すと口にくわえて美味しそうに吸い始めた。目を閉じてチューチューと吸う姿は可愛い女の子である。正毅は新作に吸われる様子を薄眼で観察しながら感度を高める。

「あっ、そこ、乳首舐めて。優しく噛んでも良いぜ」
「ん……あふぅ……レロン、ちゅばっ……あむあむ……」
「くいいぃ!いい!乳首で感じるってなんか良いなあ。あんっ、片方の手がお留守になってるぜ?」
 
 新作に命令するも新作は嫌な顔せずに聞き入れる。それは新作も正毅の乳房を舐めるのや触るのが気持ちいいからである。
 新作の手の動きに合わせて弄ばれる巨乳は、重力に逆らいながら形を歪に変えていた。

「すげぇ、すげぇよ。思っていた以上の質感だよ!」

 何度も何度も揉んで、その感触を掌いっぱいに感じる。正毅も新作のお尻を触る。ストッキングを脱がして白くて質量のあるお尻が気持ち良い。

「ああ……。マジたまんねぇよ……」

 胸の奥にあるバクバクと鼓動を打つ心臓。
 二人の乳首も勃起して硬くなってくる。コリコリと指の腹で転がす感覚に正毅は喘ぎ声を漏らした。

「はぁ、はぁ、ああっ。はうっ。――もう限界!」

 正毅は身体を起こし新作の股を開かせる。驚いた正毅だが、アソコからは既にビチャビチャに濡れるほどの愛液が零れていた。

「これって、精液じゃねえのかな?」
「…………バカ」
「だよな!もう心も身体もすっかり女の子だな」
「そんなことはないけど……このモヤモヤ感で身体が疼くってのは、乙女心っていうのかもしれないな」
「うめえじゃねえか!」

 正毅がゲラゲラと笑い、スカートを脱ぎ始めた。ワイシャツを脱いでも最後まで脱がなかったスカートだ。正毅がスカート大好きだから最後までとっておいたのだとばっかり思っていたが、そうではなかった。

「じゃあ、乙女ならこれを受け取ってくれよな」

      63d7fa96.jpg

 そう言ってスカートの奥から取り出したのは、男性の性器そのものであった。


続きを読む

「すげえ……」
「どうだ、すげえだろ?」

      f2cb8ff3.jpg

 接客の声じゃないからか、先程とは違い地の声を出しているので雰囲気は違うが、明らかに正毅の怖色と違う女性の声だ。一度しか会っていないはずの中山さんの姿をバッチリ覚えていた正毅だ。自慢するのは良いが、とりあえず身体も女性用に合わせてほしいものだ。
 そう諭す必要もなく、正毅は自分の着ている服を脱ぎ始めた。
 顔も成人女性の成りをしている正毅だ。身体もしっかりと中山と同じになっていると思っていた新作だが、衣服を脱いだその身体は、どこからどう見ても女性のものとは思えない。むしろ男性の身体つきのように胸筋や6つに割れた腹筋を見せつけた。

「………………おい」

 その身体のバランスの悪さは笑えるを通り越して憤りを覚える。中山さん本人が見たら気絶するのではないかと思うくらいのひどい有様だった。

「まあ、そう言うなよ。楽しみは最後に取っておけよ」

 一体どういう楽しみがあるのか分からないが、正毅には何か考えがあるようだった。
 裸のまま買い物袋から取り出したのは、メイド服だった。そのデザインや色まで、名間山さん本人が着ていたものと全く同じである。

「店員が来ているのは基本店内に売られているものだからな。ちゃっかり教えてもらって買っちまった」
「その後の処理どうするんだよ……」
「~~~~♪」

 嬉しそうにメイド服を着こんでいく正毅。ゴシック&ロリータなんて一度も着たこともなく、かなり手こずりながらもその時間を本当に楽しそうに費やしていた。Tシャツ姿しか見たことない正毅だ。Yシャツのボタンを締め、衣装についたフリルを際立たせるようにリボンを縛って袖を絞る。
 そしてエプロンのような純白なフリルを纏って完成である。店で出会った中山さんの姿がそこにはあった。くるりと一回転し、スカートが舞う姿はどこから見ても女の子である。しかし、

「どうだ?新作、俺の姿は?」
「…………う~ん……なにかが物足りない」

 中山さんと同じになったはずなのになにか違和感がある。なにが違うのか目を凝らして凝視する。『アルビノスネーク』に噛まれた正毅の身体は柔軟に身体つきを変化させえることが出来る。服から出る手や足、身長体重まで女性に成り変わっていた正毅。だからと言って中山さん本人の顔になったといって身体まで完璧に真似することはできないのかもしれない。

「!!そうか、胸がないんだ!」

      e55d64c3.jpg

 新作の違和感、それは中山さん本人にあったはずの胸がなくなっていたことだ。服のサイズがどことなくあっていなかったのはそのためか、胸のあたりが萎んでいてワイシャツにまったく張りがなかったのだ。

「正解!よくわかったな」
「どうしたんだよ。完璧を追い求めるおまえが妥協したのか?」
「馬鹿!俺はやるからにはとことん極める人間だぜ?……いいか。せっかくだから新作にはさらに上の中山さんをみせてやるよ」

 嬉しそうに宣言する正毅だが、言葉が分からない。

「上?」

 人間に上とか下とかあるのだろうか?正毅には日本語の勉強を一から勉強してもらいたいものだ。なにが上だと言うのか?

「……巨乳は好きか?」

 胸の話だった。

「……ああ、まぁ。ないよりはあった方がいいと思うぞ」
「そうだよな!……じゃあ、ちょっと待ってろよ」

 そう言った正毅は袖の中に手を入れると、もぞもぞと服の中で手を動かし始めた。両手を両胸の当たりに移動させると、揉んでいるかのように手を動かし始める。ワイシャツが手の動きに膨らんでイヤらしく動いている。正毅が何かをしているのは分かったが、新作からすれば中山さんが胸を触りながらオナニーをしているようにしか見えなかった。

「ん……んあ……はっ!…あ、こ、この感じ……できた!」

 正毅が叫ぶ。なにが出来たか分からなかったが、その答えは正毅が腕を袖に通し終えるとすぐに分かった。

「えっ、……あれ?」

 新作は目を丸くした。

「どうした?フフフ?」
「先程なかったはずの胸が……ある……」

      dc5fed1c.jpg

 萎んでいたはずのワイシャツに膨らみが押しあて、正毅は見事なCカップを作り上げた。


続きを読む

「ひやああああああああ!!!」
「フハハハ!!あまりのでかさに嬉々として喜んだか!」

 人は時として歓喜が狂気となり、
 悲鳴は絶叫へ走らせる。

「助けてえええ!!マジでムリだああああ!!」

 拒絶の声に俯いた正毅。しゅんと逸物も縮こまってしまった。ここは一度状況を整理し、新作を落ちつかせることを優先させようと考えた。

「何だよ!おまえに女性の悦びを教えてやろうとしてるんだろが!!男として女性の身体になったのなら、女性の快感を味わいたいと思うだろう?なっ?なっ!?」
「それは分からなくはないさ。……だけど……だけどな!やっぱり怖いんだよ!一歩間違ったら阿鼻叫喚の地獄絵図だ!おまえだって想像してみろよ!俺と抱けるか?穴があった挿入っちゃう男なのか!?」

 新作は今も男であることを捨てられないのである。たとえ性器が女性のものに変わってしまったとしても、自分の性器に男性の逸物を挿れたいという欲は沸いてこなかったのだ。

「それならば一人でオ〇ニーをしてバ〇ブを入れた方が100倍マシだ!」
「な、なんだとおおおおおお!!!!…………もったいねぇ……」

 宝の持ち腐れ、されど正毅の性器はバ〇ブに負けたのだ。唸り、崩れ落ちる正毅。いつの間にか床に涙をこぼしていた。

「それじゃあ俺は楽しめねえじゃねえか」
「まぁ、そうだな。おっぱいだけは好きなだけ揉ませてやるよ。それとも、お、おま〇こ弄りたいなら好きなだけいじらせて、やるよ」

 ほれっと無防備に股を開く新作だが、既に正毅に気力は湧いてこない。その代わりにフツフツと込み上げてくる欲があった。

「そうか……男同士がそんなに嫌か……。ならば、俺に残された方法はただ一つ……」

 スッと正毅は鞄からナニかを取り出した。赤い色した長いもので、新作は最初リボンかと思ったがそうじゃない。今日一度お目見えしてどこかに消えた、『アルビノスネーク』だった。

「おまえ!そいつを持ち歩いていたのかよ!!?」
「俺も女性になるしか方法はない!しかも俺は『アルビノスネーク』を知り尽くすんだああ!うりゃあああ!!」

 『アルビノスネーク』の口を開けさせた正毅が自らの腕に無理やり噛ませる。毒にくらんだ正毅の顔が熱く火照り始める。
 くらっとする視界。顔が浮腫―むく―んだように膨れ上がり、目も鼻も口も手も足も覆い隠していく。

「正毅――!!?」

 それはもう正毅と言えない存在だった。まるで粘土のように丸まった正毅の身体はなにも描かれていないキャンバスの様に真っ白になっていた。
 ただ正毅が身に着けていた服が、かつて正毅だったということを教えてくれる唯一の証明だった。



続きを読む

 駅前の繁華街にある女性服専門店『クプクプ』。
 当然ながら二人は一度も入ったことがない。女性と付き合ったことがないので一度たりともデパートで婦人服の階にさえ降りたことがないのだ。
 まさに未知の世界、正毅の表情はにこやかだった。

「おい、見ろよこの服、肩に穴があいてるぞ!こういうデザインなのかよ、へぇ~」

 常に進化し続ける女性ファッション。流行の最先端を目指して闘っているのだ。

「いらっしゃいませぇ」

      b88964cf.jpg

「いいか、その流行の最善にいる娘が着ている服は、メイド服だ!つまり今はメイド服こそ流行の最前線だあ!!」
「それはないと思うよ。(メイドが流行になっちまったら、メイドに萌えねえだろうが!)」
「あはは、これはただ私が好きなだけ。自分が一番いい服を着るのが一番似合っていると私は思うな」
「なんという嬉しいお言葉、流行の最前線にいる娘の言葉はちゃんと聞かないといけないなぁ」

 店員が終始笑っている。一瞬にして店員と仲良くなった正毅に感服する。名札に書かれた中山さんが優しくエスコートしてくれる。

「今日は彼女さんのお洋服を決めに来たの?やけに大きめな服を着ていらっしゃいますね」
「彼女だなんて、そんなぁ……」
「おい、そう言う態度取られると、ドン引きする……」
「この時期はやっぱりワンピースがいいと思いますよ、見た目も涼しいですし、彼女さんにもお似合いかと思います」

 一着のワンピースを選ぶ中山さん。肩紐と別に後ろも紐できつく締めるようなタイプのワンピースで、ワンピースというよりもコルセットに見えなくもなかった。

(明らかに対応ミスだろう)

 身体が縮んでいるにも関わらず身体を締めあげることをしたら、元に戻った時どうなるか分からないじゃないか。そもそもワンピースというヒラヒラ感を付ける抵抗がある新作だ。
 女性を出すような服ではなく、質素なお洋服で十分なのだ。

「着てみたらどうだ?」
「絶対、イヤ!」

 それなのに正毅はワンピースを掴んで離さない。ごり押ししてくるな、うぜえ!

「えっ、スカートが苦手なの?それはもったいないわよ、絶対に着た方がいいわよ!」
「そうだ!俺も彼女には絶対スカートを着せたい男だ!スカートをつけない女の子なんて絶対イヤだ!!」
「えっ、彼女じゃないんですか?」
「ちょっと、どういう展開なの、これ?!」

 二人に押されるようにワンピースと一緒に試着室に押し込められる新作。正毅と中山さんが試着室の前で絶対に立ち塞がっている。逃げたいという衝動も逃げられないという抑制に根負けしてしまう。

 汗だくになっていた自分の服を脱いで裸になる。自分のシャツとトランクスが今の姿と全然マッチしてなくて笑える。しかし、脱ぎたくないという石がある。脱いだら、自分が本当に女としての性に目覚めそうな気がして怖かったからだ。
 結果新作はシャツとトランクスを着たままワンピースを被り、試着室のカーテンを開けることになった。

「……………えっ?」
「……おまえは馬鹿か?」

 はみ出したシャツが女性の色気も消して、「お似合いです」という言葉を躊躇い。「大笑い」を目指す受け狙いにも成立しなかった。
 あのとき、ワンピースなんか着ると言う選択をしなければ……せめて正毅が騒ぐくらいで済んだのに、新作が二重の後悔に縛られる。

 藪をつついて蛇を出す、なんて、あんまりうまくもない状況が成立してしまっていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「正毅とは絶対買い物行かねえ」

      d317c5a7.jpg

 結局買ったスリムジーンズと薄手のシャツを買った新作が不満顔で漏らしていた。まだ不満が募っていたのか、歩いている新作の表情は怒っているようで、その表情も女性になれば可愛く見えてしまうから不思議なものだ。

「たはは……。まぁ、そういうなよ。良い買い物したじゃないか」
「すぐ着られなくなると思うよ。そうじゃないと俺が困る」

 隣を歩く新作の足に自然と合わせる正毅。普段よりもゆっくり歩く感覚に新作が小さくなってしまったことを感じる。足を止めて新作を先導して後ろからスリムジーンズの足を眺める正毅の表情が妙にイヤらしい。小さくなってしまったとしてもジーンズに収まるお尻は持ち上がっており、がに股歩きをしない限り、どこからみても女と言って通用するレベルである。

「しかし、本当に細いなぁ、新作の足。後ろからでもびっくりするくらい細いのが分かるぞ」

 新作が慌てて足を隠す様に手で防御する。しかし、それは何の意味にもなっていない。逆に新作が見られている意識を認識してしまって恥ずかしがっているのが明らかになってしまった。

「言うなぁ」
「ジーンズにしたのはある意味失敗だったんじゃないか?そのぴったり感に一番もやもやしてるのは新作、おまえじゃないか!?」

 スリムアップがぴったりしているのが足だけじゃない、股の付け根もそうだ。男のタマがない女性のアソコに完全フィットしてしまったトランクス(女性ものの下着は買わなかった)。今までと全然違い、痒くて大きくなることは絶対にない、蒸れて濡れてきてしまう女性の感覚――。

「――――っ!」
「あっ、逃げた!待ちやがれ!!」

 恥ずかしくなって全力疾走で駆ける新作、だが、結局家まで到着した頃には体力の限界が来ており、正毅と一緒に家の中に入ることになった。
 一人暮らしの新作だ。正毅も問答無用で家の中へ上がり、新作がこれからやろうとしていることをこの目でしっかり収めようとしていた。

「――――わかった!負けたよ、正毅の粘り勝ちだよ!」
「いよっしゃあ!!早く見せろ!見せろ!そのズボンの下を見せるんだああああ!!!」
「だけど絶対に触るんじゃねえ!俺が確かめてからな」
「見てるだけかよ!!まぁ、それでもこんな間近で見れるわけないし、まぁ、いいだろう!」


 正毅に念を押してからようやく新作はジーパンを脱ぎ始めた。今のカラダと不釣り合いのトランクスもその身体の滑らかさに耐えきれずにジーンズと一緒に落ちていく。正毅が女性の恥部が見えたと思った瞬間、新作がくるっと身体を180°回転してしまった。惜しいところで見ることが出来なかった。

「お~い~!新作てめえ!」
「これが……俺の身体についてる……お、お、おま……」

      e49b9f5b.jpg

 男性のシンボルが消え、女性の神秘が変わりに付いていた。小声で一人感動する新作。
 新作が見る恥部は既に新作の興奮と供に濡れ始めていた。


続きを読む

「楽しいこと?」

      76451591.jpg

 仕事場でポツリとつぶやく大森新作―おおもりしんさく―と岩居正毅―いわいまさき―。年上なのが新作なのだが仕事で先輩なのが正毅である。二つしか違わないとはいえ、どちらも先輩風を吹かさないので、仕事もプライベートも意気投合する二人だった。

「空から女の子が降ってくるとか?」
「笑い事じゃねえな!」
「気合で服が破れるとか」
「誰がその服縫うんだい?」
「つまり、ハプニングが欲しいんだよ!刺激が欲しいんだよ!」
「その胸に風穴を開けてやろうかい?」
「やめろ!!」
「仕事をしろ、バカたれ!!!」

 課長に叱られる二人。急いで持ち場に戻る。

「40秒で仕事をしろ」
『ムリっす!!』

 平和である。平和ボケである。
 精密業に努める新人の新作はいつもと変わらない日常を過ごしていた。
 その日は新作が下で働き、正毅が配達に動く。配達といっても製品をお得意先に届けに行くだけなので、一周小一時間で帰ってくる。
 しかし、その日は正毅の帰りが遅かった。仕事でミスの少ない正毅が遅れるというのはなにかあったのかと心配になる。

「どうしたんだよ?正毅……」

 と、思った矢先に、

「おい、帰ったぞ!」

 正毅が帰ってきた声が聞こえた。

「遅いぞ、まさ………ひいやあああああああああああ!!!!!」

 正毅が、首に、へ、へへ……

「なに気持ちわるく笑ってるんだよ?」
「へびいいいいい!!!?」

 蛇を首に巻いて帰って来たのだ。赤いガラガラ蛇が舌を震わせて俺の顔を覗きこんでいる。蛇とゴキブリもし部屋で出会ったとしたら俺はまだゴキブリの方が良い。ゴキなら潰せるからだ。でも、蛇は……ムリだろ?

「おう、帰りに蛇が出たんで捕まえてきた。雨上がりに蛇は出やすいからなあ」
「連れてくるなよ。っていうか、蛇大丈夫なのかよ?」
「んん?蛇ダメなのかよ、うい?」

 面白そうに俺に蛇を突きだす。

「シャアアアアアアー!」
「うひゃああああ!!!」

 でかい口を開けて警戒する蛇。そのでかい口と鋭利な歯にかかれば、小動物を丸呑みするのを頷ける。正毅が楽しそうに笑う。

「俺にはなついてお前にはなつかないんだな。一体なんて言う種類だろうな」
「す、捨ててこい。もしくは焼き払え」
「刺激になったか?」
「近づいてくるなあ!?」

 ぐいっと踏み込んだ正毅。蛇が俺の手に噛みつくには十分な距離だった。

「あ」
「あ」

 蛇がかみついた。ガブッと、吸血鬼のような二本の歯跡を付けて新作の血液に蛇の毒素を流し込んでいく。新作はフッと意識が遠のいた。

「おい、大丈夫か?」
「あ……あ……」

 痙攣する新作。身体が燃えるように熱くなる。骨を溶かし、肉を茹でる。

「……ぉぃ、新作?まさか、毒か!?おい、新作!!?」

 慌てるように駆けつける正毅。だが、正毅の目の前で信じられないことが起こった。

「こ、これは――!?」

 正毅は目を疑った。新作の顔がきゅっと縮まり、身体が細くなる。全てが小さくなったと思えばそうじゃなく、む、胸のあたりだけがムクムクと大きくなって、ぶかぶかになった作業着に一点だけ張りがあった。
 髪が伸びて、新作が別人になっていく。
 変化が終わり、新作が目覚める。

「正毅……ごほっ、ごほっ……あれ?声がなんかヘン……」

       d0397d5d.jpg

 信じられない光景を見た。刺激が強かったのは正毅の方だった。

「新作……なのか……?」

 新作が、女性になってしまった。


続きを読む

 ――ピンポーン。

「はい?――――謙信ちゃん!こんな時間にどうしたの?」

 夜番に訪れた謙信に驚く顔を見せる亜衣子。その制止を押し切って問答無用で玄関から上がり込む。

「まぁまぁ、ちょっと寄らせてもらうわね」

 謙信、もとい俺に強引さにも亜衣子は部屋へ通してくれる。二人で部屋に入ったのを見定めてすかさず亜衣子の唇を奪った。

「んんぅ!?」

 謙信にキスを奪われた亜衣子はさらに目を丸くしていた。普段の謙信とは違う、想像していなかった展開に驚く亜衣子は、思わず唇を放してしまった。

「やめて!謙信ちゃん!」
「んあ?・・・どうして私を拒否するの?私は亜衣子のことをいつだって守ってきたじゃない」
「それは・・・・・・」
「それなのに、亜衣子は私よりもあいつを・・・あいつと付き合い始めたじゃない!」

 正雄と付き合い始めたことに正直な気持ちをぶつける謙信。そう言わせているのは俺自身だが、それによって亜衣子の本音も聞きだそうとしていた。
 亜衣子にとって正雄に抱く気持ちは捏造。偽りであり、俺自身が亜衣子に植え付けたものだ。それを本人は自覚していないし、自分の気持ちと思って今日まで付き合ってきた。
 困惑しながら俺と付き合い、混乱しながら俺に振り回されてきた亜衣子にとって、それは果たして幸せなのだろうか――

「・・・でも、謙信ちゃんは、こ、こんなことする人じゃないよね?私たち友達だし、親友だし・・・」
「それ以上にはなれないの?」

 所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。それを亜衣子の口から聞かされると、心の何処かがとても痛かった。

「それ以上って・・・・・・」
「見て!」

 亜衣子の目の前で謙信は制服を脱ぎ始める。引き締まった身体付きを亜衣子に見せながら、抜群のプロポーションを月明かりの下に曝した。

「謙信ちゃんやめて!」
「次は亜衣子の番だよ」

 強引に、それでいて決断を迫って亜衣子にバトンを渡す。
”こっち”側にいくか、それとも留まるか。亜衣子の気持ちを自分自身に問いかけて、答えをだす。

「・・・謙信ちゃんがそれを求めるなら・・・・・・」

 ゆっくりと、亜衣子は自分の私服を脱ぎ始める。その動作はまるで息をすることを忘れるほど遅く、時が止まったのように静かに・・・

「私はそれに応えたい」

      c5447c71.jpg

 ズボンもゆっくり下ろしていき、上下お揃いの下着姿になった亜衣子の姿は息を呑むほどに美しかった。

「脱いだよ」

 全裸になった亜衣子に謙信も同じようにスローモーションで近づいていく。その場の空気を壊さないように細心の注意を払いながら、雰囲気を持たせつつ亜衣子の肌に触れていく。

「・・・っ!」

 ちょっとでも強く触れれば崩れてしまいそうな小さな身体で、その恐怖に震えそうになるのを耐え忍んでいる。
 緊張している身体のせいか、胸の中心に突起する二つの乳首も硬くなっていた。
 謙信は亜衣子の乳首に吸い付くように唇で咥えこんだ。甘く噛んだ乳首を舌で舐め転がしながら唾液を含ませていく。

「あっ・・・んっ・・・」
「レロレロ・・・亜衣子の乳首大きくなってる。こうされるの気持ちいいの?」
「そんなの!・・・わかんないよ!」
「及川にも触らせたことないものね。んぅ・・・チュパ・・・チュパ・・・」

 亜衣子の感度は良く、少し弄っただけですぐに濡れてきた。亜衣子をベッドに倒しながら全身を舐めつつ股を開かせ、大事な場所もクンニしていく。

「うわぁ~こんなに溢れてきてる。私におま〇こ舐められて感じてくれてるんだ」
「んあっ!やめっ!そんな場所・・・汚いから舐めないで!」
「大丈夫だよ、亜衣子の汚物は私が吸い取ってあげるから。じゅるるるるぅ!」
「ひゃあぅ!」

 引くつかせ無意識に浮かび上がらせた腰がすとんと落ちる。ベッドの上で息を絶え絶えにして脱力する亜衣子を見て、軽くイったのだと察した。溢れるばかりの愛液が謙信の口の中に入ってきては飲み干していった。

「私の舌でイったんだね。亜衣子のおま〇こひくひく動いてる」
「はぁ・・・はぁ・・・私、イってなんか・・・」
「強がらなくてもいいわ。亜衣子は私が守るから」

 濡れた亜衣子の秘部に謙信は自分の秘部を合わせて腰を動かして擦りつけ始めた。貝合わせというやつだ。

「たとえ、どんな害悪な男が亜衣子に近づいて来ようと、私が亜衣子を一番に想っている。これはそういう契りだ!」

 謙信の叫びと供に腰の動きに合わせてニチャニチャとイヤらしい音が漏れだす。一番に亜衣子を感じさせることに悦びを求める謙信に亜衣子は受けとめ、行為を受け止める。

「ひっ・・・くあっ・・・はっ・・・はぁっ」
「亜衣子も感じているのだろう?腰の動きが早くなっているぞ。いいぞ。私が受け止めてやるぞ。好きに擦りつけてこい」
「ちがっ・・・くひんっ!んんぅ・・・けんしんちゃん・・・けんしんちゃん・・・!」
「またイきそうなんだな。私も供にイこう。一緒に、イこう!」
「はぅっ!あっ・・・あぅぅっ!はぁん!」

 ベッドの上で跳ねながら擦り合わせた秘部同士からは愛汁に濡れてぐちゅぐちゅと音が響き合う。体力が違う二人の疲労度は歴然だが、謙信は亜衣子に合わせるように自分の感じる場所を的確に突くように亜衣子の柔肉に擦りつけ合わせながら絶頂まで到達する。

      695d6cd9.jpg

「ふあ、あ、あああ、ふあぁぁぁぁ―――――ん!!!」
「ひぃ!だ、ダメ!!ひゃあぁぁぁ―――――ぅん!!!」

 貝合わせによって一度イった二人の声が部屋中に響いた。
 びしょびしょに濡れたベッドシーツの上で沈む亜衣子の身体を慰めるように優しく撫でる謙信。

「・・・ごめんなさい。私の一方的な感情に付き合わせてしまって。・・・でも、これできっと本人も納得いくはず。だって――俺に乗っ取られた人はどんな行動だとしても自分の意志でやったって認識するから。亜衣子に奇襲して貝合わせしたのだって、全部私がしたくてやったことになるんだから」

 謙信はきっと激しく後悔するだろう。例え俺が勝手にやった行為だとしても、亜衣子を襲った謙信という自覚がある以上は今まで通りに入り浸ることができないだろう。もしも亜衣子が受け入れたとしても、上杉謙信という性格は自分が納得するまではしばらく亜衣子の傍に近寄ることもしないに違いない。その間に亜衣子と俺の仲を深める時間はあるはずだ。
 謙信を受け入れた亜衣子なのだから、彼氏である俺を受け入れないはずはないのだから。
 とは、いうものの――

「謙信ちゃん・・・」

 ――それでも謙信を信じて受け入れた亜衣子の寛大さに驚かされたのは、俺の方だったみたいだ。

続きを読む

 俺は悩んでいた。
 色物の話になってしまうが、俺には前田亜衣子という彼女がいる。クラスメイトであり彼女なのだから・・・・・・少しは大人の階段を登っていいと思うんだ。

「なあ、前田」

 放課後、俺は人気のない廊下に亜衣子を連れ出した。

「なんですか、正雄くん」
「俺さ、ずっと前から・・・前田の・・・、触れてみたかったんだ」
「え、ええええっ!?」

 大声を荒げた亜衣子を負いこむように、壁ドンのポーズで黙らせる。効果あったようで、亜衣子は顔を真っ赤にして声を押し殺した。

「なあ、いいじゃん。ちょっとだけだから・・・」

 耳に息を吹きかけて小声で喋るとさらに顔を真っ赤にする。

「そんな・・・恥ずかしいです・・・」
「大丈夫だって。誰にも言わないから」
「でも、きっとばれちゃう・・・ダメです・・・」
「ダメでももう、俺・・・我慢できねえ」
「正雄くん、きゃ・・・・・・んむぅっ!」

 彼氏なんだから少しくらい強引な方法を取る俺の耳に聞こえてくる微かな風の鼓動。
 静かな殺意を感じて零れる一筋の冷汗が熱い・・・・・・。
 喉が、乾く。
 ヤバい。奴がくる。

『刀八毘沙門天』」

 ――ドーーーーーン!!!

 まるで大砲を直撃したかのような衝撃が俺を襲い、壁にめり込んだ。その衝撃は確かに存在し、俺が激突した壁の痕跡は蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸のように螺旋を描いていた。
 例えるなら、コメディ漫画で100tハンマーを受ける某主人公のような跡が残っていた。

「おいっ!マジで具現化したのかよ!!!」

 幻影の気迫のはずの
『刀八毘沙門天』がこんな威力を与えるんじゃない。と、言いつつも、振り返れば最強の『軍神』上杉謙信が俺の目の前に鬼気迫っていた。

「つうか、今のを受けて無傷でいるなんてちょっとショックよ。主人公補正でも入ってるんじゃないの
?」
「主人公・・・うっ、頭が」

 なにか思い出したくない記憶が脳裏をかすめるが、次の瞬間には霞のように消えていた。

「ちょっと、なに言ってるかわかりませんね?」
「そんなことより、あんた!私の亜衣子に気安く触らないで!」
「誰が『私の』亜衣子だ!」

 最初から全力で本音をぶつける謙信。しかし、理想が現実に追いついていない!

「亜衣子は『俺の』亜衣子だ。間違えないでくれるかね!ダーハッハッハ!」

 亜衣子と俺は彼氏彼女。所詮同性の亜衣子と謙信では友達以上恋人未満の関係止まり。
 勝敗は既に決している。謙信の悔しがる顔が小気味良い。
 しかし、亜衣子のご厚意で献身との約束は守ってるとはいえ、その契りを破ろうとした途端に見つかっているのは詰めが甘かったかもしれない。

「及川ぁ、亜衣子になにもしてないだろうな?」
「な、ななななにもしてないよ?」
「さっき、私の手を触ろうとしました」
「亜衣子ぉ~・・・・・・ぐえぇぇ!!!」

      55657880.jpg

 もう一発、
『刀八毘沙門天』を受け壁に叩きつけられる。壁ドンって骨が軋むんですね・・・。

「ふ、不謹慎な!まだ高校生の私たちが・・・異性と、て、ててて・・・手を繋ぐだなんて!!!」
「普通のことじゃねえか!お前のせいで俺たちは恋人同士なのにキスも出来ないんだぞ!」
「き、きキキ、キスぅ~~~!!?貴様はそんな不埒な行為を企てているのかあぁ!」
「ちょ、まっ!
『刀八毘沙門天』待って!!!」

 謙信の亜衣子擁護に関しての母性愛は異常に強く、校内では触ることすら禁止されているのである。箱入り娘に対する母親のようなまでの愛情であり、恋人以上に強い友情がここにはあるのである。

「おまえは何時代の人間だよ!思考が古いんだよ!」
「なんだと!?」
「今時、高校生だってキスや手を触るくらい普通なんだよ。当然セ――」
「正雄くん。不謹慎」

 亜衣子に怒られちゃった・・・。ここで謙信は威厳あるように踏ん反り返って見せた。

「私の考えは古くないぞ。亭主関白は時代錯誤だと勉強した。時代は両親共働きの時代だとな」
「私たち女性だって働かなくちゃ生計立てられない時代ですから。ちゃんと女性が社会に進出できるように政治が動いてくれてます」
「そうだな。このご時世男性の年収600万なんて稼げるわけがない。特にこんな田舎なんて尚更な。いったい統計でどれだけ都会が平均年収を上げてると思ってるんだよ」
「今や子育てだって男性が率先してやるそうだ。仕事だけしていればいいわけではないみたいだな」
「・・・えっ?」
「ちゃんと料理や洗濯だってやってもらわないとダメです。掃除や後片付けだって協力してやってもらわないと女性が倒れちゃいます」
「・・・えっ?・・・えっ?」

 あっれぇ~おかしいぞ。なんか、風当たりが強くなってません?

「正雄くんも対応できてます?」
「私だって対応する努力はしていくつもりだ。貴様はまさか、亜衣子を苦しめたりはしないだろうな?」
「ちょっと待て!なんでお前が亜衣子との付き合いを見定めようとしてるんだよ!小姑かよ!死ぬまで付きまとうつもりじゃないだろうな!」
「あんたが心配だからでしょう!口だけ軽い人間で実力が中途半端なのがいけないんじゃない!少しは私を安心させるような行動をしてみなさいよ!」
「イテテテテ!!!」

 何故だろう。最近誰かに同じようなことを言われた気がするのに覚えていない。

「関白宣言が俺の理想だったのに・・・お前のおかげで良い人生だったと俺が言うから、必ず言うから・・・」
「私がオバさんになっても本当に変わらない?とても心配だわ。あなたが若い子が好きだから」
「二人とも、歌詞が古いです」
「いや、もっと古風な生き様をしている奴がいる!見ろ!!」

 廊下でありながら俺が指をさす方向に二人が顔を向けると、そこには武田信玄率いるメイド&メイドガイが布団を引いて床に就いていたのだ。まるで病弱の様子の信玄を心配そうに見守るメイド&メイドガイに、生涯最後の時間を過ごしているかのような雰囲気を醸し出していた。

「いいか。家臣たちよ。我が遺言を聞け」
『御意』
「3年の間、我死たるを隠して、其の内に国をしづめ候へ」

 それは遺言。信玄が国の為に残した言葉を家臣たちに伝え息絶える。目に涙を溢れさせる諷と倫。しかし、メイドガイこと香山は一人立ち上がった。

「畏まりました。この香山・・・必ずや・・・・・・忠義を尽くし信玄さまの意志を受け継いで見せますわ」

      3538cb5f.jpg

 香山は信玄とそっくりな姿に成り、遺言通り信玄の死を隠したことは有名な話――。


 ・・・そんな、子芝居を見せられた謙信は一人いきり立っていた。

「とにかく!私の目が黒い内は絶対に亜衣子に指一本触れさせないから!それは貴様が恋仲だろうが関係ない!」

 亜衣子を引き連れて学校から帰る謙信。あいつがいたのでは、俺と亜衣子の薔薇色の高校生活が破断してしまう。謙信の亜衣子に対する愛情を崩さなければ、粉砕骨折は免れない。

「・・・仕方ねえ。こうなればだ・・・・・・」

 俺は禁断の手段を使わせてもらう。亜衣子の愛情をゲットした『粘土』によって、謙信さえ愛情を歪ませてもらおう。
 手に持った『粘土』に謙信のイメージで捏ねあげる。すると、『粘土』は意志を受け取ったように上杉謙信そっくりの『像』を完成させた。
 後は自分の髪の毛をこの『像』に植え込めばいい。そうすれば、亜衣子の時と同じように視界は暗転するはずだ。

「さて、今回はうまくいくか?」

 自分の髪の毛を謙信の『像』に埋め込む。一般だけ違う髪の毛を呑み込んだ『像』は一瞬青白く光り、瞬間世界が一転した。

「・・・・・・でね、謙信ちゃん」

 隣にいる亜衣子の横顔を見ながら帰宅途中の通路で立ち止まる。先程まで校内だったはずなのに、振り返れば遥か遠くに校舎が見えた。
 優しい風が長髪を靡き、スカートの中を撫でていく。
 この視界。この景色。

「謙信ちゃん?謙信ちゃん・・・?」

 隣で呼びかける亜衣子の呼び方から察する通り。俺は今――上杉謙信になっているに違いない。

「う、うおおおお!!!成功したぜ!!!」

 グッとガッツポーズを決める謙信(俺)に亜衣子が唖然としていた。

「謙信ちゃん?大丈夫?」
「あっ、なんでもない。大丈夫よ」

 あははと愛想笑いを浮かべてはぐらかそうとするも、亜衣子はちょっと混乱しているみたいだ。なにかを察したのか、謙信と普段接しているせいで、微妙な変化で気付いてしまうと後々勘付かれてしまう後ろめたさがある。
 今は亜衣子と別行動することが先決と判断し、俺は一足先に帰ることにする。

「御免。亜衣子。ちょっと用事思い出したから先帰るね!」
「えっ!?け、謙信ちゃん!!?」

 ドピュ~と、脇目も振らず一目散に帰る謙信(俺)の姿を見て亜衣子は何を思うだろう。しかし、今の俺には亜衣子のことよりもまずは憎き邪魔者の身体を手に入れたことに対する仕打ちを考えることでワクワクしているのだった。



続きを読む

↑このページのトップヘ