澤谷賢一郎が手に入れた『飲み薬』はエムシー販売店というネット販売で購入できるものだった。しかし、そのサイトは紀仁が新社会人を迎える前になくなってしまい、事実上ネット購入が不可能となってしまっていた。紀仁の夢が潰え、茫然自失となっていた時期もある。『飲み薬』が残してくれた地位と名声が支えになり、今までやっていくことができたのだ。
 しかし、最近になって一度だけネットオークションに『飲み薬』が出品されたのだ。価格は購入時の10倍。その競合倍率は熾烈を極め、0.006%という入手超難関の道具になっていた。紀仁は今まで貯めた金額をすべて賭けて挑んだ。試合以外で手に汗握ったのはこれが初めてだった。
 紀仁は入手したのだ。お札での殴り合いに打ち勝ったのだ。かつて人生を狂わされた怪喜の味をもう一度堪能できるのだ。
 その商品はすぐに送られてきた。紀仁の元へ届き、大事に保管されている。
 早速紀仁は準備に取り掛かる。当然、“憑依”しようと考えているのは花蓮だった。
 他の誰かにするつもりはなかった。一度“憑依”したことのある花蓮にもう一度“憑依”しようと思った一番の要員は、やっぱり他の誰よりも花蓮のことが好きだからだ。

「花蓮っていい女っす」

 そうつぶやく紀仁を尻目に、花蓮は練習とセックスに疲れて寝てしまっていた。 

「すぅ…すぅ…」

 あどけない表情を俺に見られていることなどお構いなしに、すやすやと寝息を立てている。花蓮が眠ったのを確認した紀仁は顔を近づけしばらく観察する。そして、当分起きないと判断すると、計画を実行に移すことにした。 

「よし、やるか。花蓮に憑依するんだ」

『飲み薬』の封を開け、その味を喉に流し込む。高校時代の時に飲んだ、炭酸が強い薬品の味が蘇る。あの時と全く同じである。
 全てを飲み切ると、紀仁の意識がすぅっと薄くなる。花蓮の眠っている隣で紀仁の身体も眠るように倒れこんだ。
 しかし、あくまで身体のみであり、紀仁の精神は天井に浮き上がり二人の身体を見下ろしていたのだ。そう、幽体離脱ができたのである。

「やった。できたっす!」

 紀仁は一人喜んでいた。『飲み薬』の効力は色褪せることなく幽体離脱を可能にしていた。身体から精神を切り離して紀仁の魂を飛ばしていた。このままどこかへ飛んでいきたいと思いながらも本来の目的を忘れてはいけない。紀仁は泳ぐように宙を飛び、ベッドに寝ている花蓮の上空に浮かんだ後、静かに 身体を降ろしていった。

「失礼します」

 紀仁の魂が花蓮の身体に触れると、そのまま溶け込んでいくようにめり込んでいった。花蓮は紀仁の魂が身体に触れた時から、小刻みに震えていた。

「うぅん…」

 少し苦しそうに声が漏れる。それを聞いた紀仁は急いで花蓮の身体へと入り込んだ。そして、完全に花蓮の身体の中に紀仁の魂が入った。 

「……はっ」

 ぱっと紀仁が目を開けると、明かりのついた天井が見えた。そして、視線を横に向けると眠っている紀仁の身体を見ることになる。客観的に観る自分の身体だ。
 紀仁はむくりとベッドから起き上がる。普段より身体が軽く感じた後、掛け布団が滑り落ちて男性にはない胸の膨らみと重みを感じることができた。 
 視線を落とすと、ほどよく膨らんだ黒く焼けた肌と同じ色した二つの乳房が見えた。

「ニヒッ」

 この胸の持ち主が誰のものか紀仁には分かっていた。紀仁は立ち上がり、立てかけた鏡をベッドに向けると、先程までセックスしていた皇花蓮の姿で映っている自分を見た。眠っている紀仁の身体を鏡の反射で見ながら、花蓮の視点で自分の身体を見る。まるで二人の精神が入れ替わったかのような錯覚に陥った。

「す、すごいな、これ。どこから見ても皇花蓮っすね」 

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 視線も身長も体重も筋肉も声色も、全て紀仁のものではない。皇花蓮という女性の物だ。それをすべて支配して自分の身体のように動かすことも出来る。誰にも制御されることなく、誰の許可も要らずに、花蓮の胸を見ることができる。見下ろしている花蓮は、その見慣れない角度からのまぶしい肢体に、ただ感動の声をあげるばかりだった。 

「はぁぁ~。花蓮の胸に太もも、それに脹脛……二の腕、指、足~」 

 しかし、驚いている理由は、そのまぶしい肢体だけではない。憑依したことで花蓮と全く同じ体型になったということであり、せり出した胸、くびれた腰、大きなお尻などが備わっている、ということでもあるのだ。鏡で何度も花蓮の裸体を視姦する。高校時代の記憶よりも大人びた、皇花蓮の身体を手に入れたのだ。

「これが自分の身体だなんて、考えただけでもわくわくするっす」 

 改めて花蓮の身体を観察してみると、こんなに素敵な女性になったんだ、ということが改めて分かる。世界で誰よりも素晴らしい身体の持ち主であり、紀仁の彼女であることに誇りに思う。 

「あぁー、花蓮になってみて、本当によかった!」 

 花蓮に“憑依”してさらに快感が押し寄せる。だがしかし、ぶるっと震えた身体は決して感動を覚えたわけではない。

「女になった以上、いつまでも裸のままっていうのもまずいっすよね」 

 花蓮の身体を堪能した紀仁は、花蓮に身に着けようと脱いだ下着を身につけていこうとした。女性物の下着を身につける興奮に紀仁は興奮を覚える。すると、普段から身に着けているはずの花蓮の身体でさえ興奮を覚えているのがわかる。乳首は勃起し、子宮が疼くのを感じた。このまま着替えて花蓮として外に出て行くと考えただけで女装癖の可能性があるんじゃないかと緊張してしまう。 と、そのとき紀仁はあることを思い出した。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

「そういえば、花蓮のバックの中には確か――」


 花蓮のスポーツバックの中を勝手に開いてその中身を漁る。
そんなに底が深くないバックだ。すぐに紀仁はお目当てのものを見つけて取り出した。

「あった。ユニフォームだ」

 代表選手のみが着ることのできる公式のユニフォームだ。一日中着用していた為に汗が染み込んで乾いていない状態である。花蓮の鼻を押し付けてもわかるくらいにおいが染み込んでいる。汗の冷たい感触があるものの、着てみたいという衝動を紀仁は消すことはできなかった。

「花蓮には内緒でこっそり着てみるとするか」

 何気に、紀仁も花蓮のユニフォーム姿を着ている姿を見たことがないのだ。二人で会うときは私服であり、大会でユニフォームを着る花蓮を見るのはテレビの前だったりする。
 実際、紀仁が花蓮のユニフォーム姿を直視するのは高校以来である。

「もう、しょうがないな。先輩のお願いじゃあ断れないじゃないですか」

 高校生以来の、紀仁が花蓮になりきって着替えを始める。

「(え、いいの?)」
「わかりました。じゃあ、見ていてください。今回だけですからね」

 鏡の中で対話するように花蓮の口調を真似ながら手に持ったユニフォームを着ていった。本当はスポーツブラを着た方がいいのだが、紀仁は直接ユニフォームを頭から被っていく。ポリエステル100%の薄手の生地が身体を包み込む。

「うへ、つめたい。シワになってる…。早く洗濯して乾かさないといけないな」

 などと言いながらも、使用済みのショートパンツも同じように身に着けていく。ブラ同様、ショーツも穿かず直にパンツを身に着けた。

「楽ちん、楽ちん♪」

 花蓮が使用したユニフォームを再び着込む紀仁。包まれた瞬間に身体から花蓮の匂いが身体を纏うように甘い香りが漂っていた。ユニフォームを着こんだ姿でもう一度鏡に映しだす。少し走ればおへそと割れた腹筋が見えそうなユニフォームだが、私服では見ることのできない活発な印象を再び蘇らせていた。

「うん、やっぱりよく似合ってるっす。さすが、花蓮だ…って、今は花蓮なのよね!」 

 思わず一人芝居を忘れるほど見惚れてしまった紀仁。ユニフォーム姿に包まれる花蓮は普段以上に健康的に見える。この格好のまま外に出て走り出したくなるのは、花蓮の本能がそうインプットしているようである。

「このままひとっ走り行ってこようかしら…、なんてことしたら花蓮のやつ怒るっすね♪」

 服装が体調を管理するように、紀仁も次第に体力が回復してくる。鏡に映る花蓮の姿を見ているうち、だんだんと興奮してくるのを感じていた。花蓮の姿をしていても、その中には紀仁が入っているのだから当たり前である。 

「じゃ、そろそろ楽しませてもらうとしますか」 

 紀仁は、鏡の前でベッドに腰を落とし、股を大きく開いた。そして、ユニフォームの上から花蓮の秘部を指ですーっと撫で始めた。 ポリエステルの生地が秘部に張り付き、指の動きが秘部に生地の絶妙な痒みを与えてくれていた。

「くあっ!これこれ!これだよ、欲しかったのは!」

 最初は単にくすぐったいだけだったが、それを我慢して何度か繰り返しているうちに、少しずつ気持ちよくなってきたように感じた。 一度“憑依“したことがあった紀仁だけど、自分のペースで花蓮を弄ったことがないのを思い出す。

「うーん、あの時は貴耶と澄彦に弄られたんだよな。自分のペースだとこう…ちょっとくすぐったいんだけど、でも、止めたくないっていうか…」 

 当時は誰かに弄られて強制的に絶頂までイかされていた感があったが、今回は自分のペースでイクことができる。ゆっくりとしながらも確実に上り詰め、イキそうになったらペースを落としてじれったさを味わうことができる。花蓮の身体をいつもの感じで弄っていくと、力加減が若干強いので優しく撫でるように触っていく。それだと今度は弱いので、もっと強くしてほしいと身体が訴えかけては力に強弱をつけていく。
 女性の身体は繊細で敏感だということに気づかされる。いつも同じ力加減でいいというわけではない。時には優しくして、時には甘く苛めてほしいと、身体を通じて訴えかけてくるのがわかる。
 それでも続けていると、くすぐったさが消える一方で、身体が少しずつ熱くなっていく。そして、湿り気も出て来るようだ。 

「よし、少しずつ感じてきた。んっ、んっ」 

 汗で濡れていたはずのユニフォームに別の液が付着し始める。指でショートパンツを弄っていくと、にちゃにちゃという音と供におまんこの形にシミが出来上がっていくのが見えた。
 今度は指をショートパンツの中に忍ばせる。そして、花蓮の膣口にそーっと入れてみた。 
 
「改めて自分の膣内に異物が入ってくるって怖いよね」 

 貴耶とのセックスや紀仁とのセックス時も、花蓮は受け入れてペニスが挿入していた。しかし、実際、紀仁は指を入れるだけでも臆病になっていた。男性では味わうことのできない快感と引き換えに、女性しか味わうことのできない挿入時の恐怖を察することができる。しかし、紀仁のペニスを受け入れることのできるほど鍛えた花蓮の膣口だ。ペニスよりだいぶ細い花蓮の指なのだからと安心させるようにゆっくりと挿入を試していく。

「ゆっくり、少しずつ……んぅっ!」 

 外壁を傷つけないよう爪を立てないように挿入していく。つぷりと、暖かく湿った膣の空間が指の皮膚を濡らしていく。

「ふぅ~…はぁ~…」

 紀仁は深呼吸を入れた。それだけで、不思議と気分が落ち着くのが感じられる。そうした後で、改めて指を入れてみると、さっきよりずっと滑らかに指を飲み込んでいった。もちろん、痛みもほとんどなかった。 
 変に緊張せず、リラックスした状態が身体の内側でこんなに影響しているとは考えもしなかった。

「んはぁ…今度は出してみよう」

 根元まで入れた指を今度は逆に少しずつ出していく。すると、入れたときとはまるで違った気持ちよさが襲ってくる。指が出そうになると、今度はまた挿入する。
 
「んあっ、んんあっ、あっ、んん」

 次第に繰り返していくうちに、指はスムーズな動きをしはじめ、それを繰り返す。

「あはぁぁん、出たり入ったりしている動きで全然違う。き、気持ちぃぃ…」 

 指はペニスほど太くはないので、気持ちよさの点ではやや劣るところがある。しかし、目の前には立てかけられた鏡には、花蓮の姿が映っている。他の誰でもない、花蓮に“憑依”し、花蓮にいやらしいことをさせている。その快感を味わうだけではなく、いやらしいことをしている花蓮の姿を鏡で見ることで、視覚的にも楽しんでいるのだ。

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「あ、うん、はぁん、あぁ、あはっ、あぁ、はぁ~」 

 喘ぎ声を出し、鏡の中でただひたすら痴態を繰り返す花蓮。 片手でおまんこに指を挿入しながら、もう片方の手で乳房を揉みし抱く。紀仁は中指だけでなく薬指までも使い始めていた。指による肉体的な物足りなさに我慢できなくなり、ただ出し入れするだけではなく、動きの途中で指を曲げたり伸ばしたりして工夫も加えていった。 

「んんん、うぅん、い、いぃ、いいぃ」 

 肉体的は物足りなかったはずが、それを感じさせないくらい、紀仁は楽しんでいた。快感に酔い、身体の欲求に従ううちに、もう指の動きを止めることができなくなっていた。

「はぁん、あぁん、あん、あぅ、うあぁぁ、」 

 絶頂が近くなってきたのか、花蓮の身体はより大きな快感を得ようとして動いていた。無意識に指の動きに合わせるように腰が動いていた。

「んあ、あぁ、あぁん、あぁ、はあぁん、あぁぁぁぁ……」 

 紀仁は、膣内が収縮するのを二本の指で感じつつ、朦朧とした意識に飲み込まれていった。 絶頂を迎え一瞬意識が飛んだ。全身が脱力して正面を向くと、花蓮の身体から出た愛液が部屋に飛び散って至る所が濡れていた。鏡には多くの愛液の痕跡が付着しており、くっついたまま落ちてこなかった。
 肩で息をしながら、紀仁は再び花蓮の快感を蘇らせたのだ。 

「はぁ、はぁ、…イった。花蓮でオナニーしちゃった。…すごいびしょびしょ。病みつきになるかも」 

 そう言いながらもオナニーでは満足できないと、花蓮の身体が未だ火照り疼いているのを感じていた。やはり、身体の熱を静められるのは、恋人のアレしかないと密かに感じている紀仁だった。