「ねえ、私をここから出してよ」

 檻の中できみが僕に喋りかける。

「どうして?」
「私は自由になりたいの。檻の中にいたくないの。あなたはいいわよね、外で大きく翼を広げられて、さぞ気持ち良いでしょうね?」

 初めて会った僕ときみ。僕の第一印象で、きみはとても不機嫌そうにしていたね。

「自由だと思う?」
「ええ、とっても」
「……それは間違ってるよ。僕は全然自由じゃない。法だ、権利だ、戒律だ、上下関係だ、――――縛られるものばかりだ」

 拘束が人生だ。生きることが束縛だ。
 きみはそんな僕の発言で、初めて意外そうな一面を見せてくれた。

「僕から見たらきみが檻の外なんだ。僕の方が檻の中にいるんだよ?よく見てよ、――きみは自由だ」

 僕の想いが伝わったのか、きみはフッと微笑んでくれた。

「そう、なんだ。私の方が、自由なんだ」

 一度笑った顔はとてもおかしく、きみはお腹を抱えて笑い転げた。
 そんなに笑ってくれると、僕の想いも馬鹿みたいで可笑しくなって、きみにつられて僕も笑った。

「あはは……こんなちっぽけな檻の中に、大空はあったんだ」

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 きみが見つけた大空。僕が教えてくれたからか、きみは頭を下げて一礼をくれた。

「だから、僕の分まで君は翼を広げて飛び立ってよ。人々の願いを、この大空に叶えてくれ」
「きみは何を願うの?この檻の中なら、私でもひょっとしたら叶えられるかもしれないよ?」
「じゃあ、僕の願いは――」

 考えながら頭上を見上げる。
 見上げた空は青く、僕はなんてちっぽけな存在だろうか。

 それでも、きみと別れた後、僅かな時間だけでも――

 きみからもらった優しさの言葉を持ってまた歩き出す。




 題:『飛べない鳥』




 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 崖の上できみははしゃぎながら言う。空には様々な鳥たちが円を描いて飛んでいた。

「ねえ、きみは飛びたいと思わないの?」
「思わない。俺は飛べないよ?飛べない鳥さ」
「私も飛べない鳥よ?だから飛びたいの!――I can Fly!!」

 きみが楽しそうな声で叫んで崖に向かって走り出す。

「飛べない。……飛んじゃダメだ」

 急いで駈け出す俺はきみに追いついて抑えつける。きみは俺の腕の中で暴れていた。

「イヤ!!私は飛ぶ!!この崖からならきっと飛べる!!……いきたい。逝きたいの!!この大空に還りたいの!!飛ばしてよ!!」

 きみは泣いていた。空を飛ぶ動物たちにこの涙の意味が理解できるだろうか。

「僕たちは進化したんだ!もう昔のように空は飛べない!!あそこにいる阿呆鳥の親子には戻れないんだ!」
「うわああああああ!!!おかあああさああああん!!!わたし、人間になんてなりたくなかった!どうして進化なんかしちゃったの!?大空の下で羽根を広げて飛びたいよお!!」

 泣き叫ぶきみの声は空に消えていく。空を飛ぶことを止めて、自由を自ら捨てたんだ。――そんな自分勝手な人間。欲のままに進む動物。

「空は……私を嫌いになっちゃったの?」

 でも、これだけは言える。

「嫌いになんかなるもんさ。逆だよ。俺たちは空の美しさを誰かに教えるために、一度地に足を付いて上を見ることを選んだんだ。辛い現実があっても、浮いているんじゃなく受け止めることができるのが人間なんだ。器のでかさなんだよ」

 辛いこと、そんな当然だ。俺たちは生きている。辛いことを一つでも受け入れられれば、幸せになれるんだよ!!そう考えられることができるのが、人間なんだよ!!

「ぐすっ、空の方が大きいね……私って、なんてちっぽけなもんだろう」
「不釣り合いでも構わない。変わりゆく時代、進化する俺たち――」

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 鮮やかに染まるオレンジ色をきみと見ていた。夕焼けに映るきみの姿がとても美しくて、俺はきみの着ている服を脱がし始める。
 男とは違う細い身体、頼りないこころ、それでも、子孫を残すために発育した彩りある乳房と艶やかな顔に、子供から大人になる階段を昇らせることはできる。

「逝かせることはできないけど、俺がそばにいることはできる。供に生きよう」
「…………はい」



題:『飛べない鳥』



 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 真の隣に座る風鷺やこころももらい泣きしていた。

「うう……感動しました」
「そうか?」
「はい!役者の方々、最高でした!ありがどうございまじた!」
「涙ふけ、こころ……」

 割れんばかりの大喝采。しかし、見に来た大半は、アイドルの円谷良子のヌードを見に来たんじゃないかと、いや、まさか、そんなはず……ありうる!!?