純粋とは矛盾色-Necronomicon rule book-

夢と希望をお届けする『エムシー販売店』経営者が描く腐敗の物語。 皆さまの秘めた『グレイヴ』が目覚めますことを心待ちにしております。

 俺は胸のざわつきが日に日に収まらなくなっていった。
 それは、校内でとある噂があがったからだ。その真実を確かめるために、俺は放課後進路指導室へと向かっていた。

”須郷真鈴が放課後、セックス指導をしている――”

 正直、不安だった。
 その噂が上がった時から、真鈴は俺との付き合いが悪くなったのだ。赤木先生から進路指導室の鍵をもらい、自分の巣窟にして放課後セックス部屋にしているという。
 さらにSNSを使って適当な男子をひっかけてオフパコさえしているのだという。

「ありえない・・・ありえない・・・ありえない・・・ありえない・・・」

 普段誰も来ない教室で、そこを開ける者などいない。
 何もなければいい。でも、確かめないと噂通りの真鈴と、今まで通りの真鈴の二人が存在してしまう。
 真鈴の噂を面白おかしく取り上げる生徒は多く、確かめたいと率先して向かおうとする生徒も多い。今日も放課後この教室に入っていくのを見たと言っている生徒がいたのだ。それが嘘であってほしいと願うのなら、俺自身逃げるわけにはいかなかった。逃げていたら、他の誰かがさらに大袈裟に取り上げて真鈴を苦しめることは必須だからだ。

「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!」

 ぐっと、拳を握りしめ進路指導室の前にやってくる。この扉の奥でいったい何が起こっているだろう――。
 最適は誰もいないのがいい。次点は真鈴一人でいるのがいい。次からはもう願望だ。真鈴と赤木先生の二人でいるが、ナニモオコッテいないのが良い――赤木先生も教師だ。噂の後から今までの威厳がなくなったように思えるが、赤木先生も苦しんでいるという俺の思いこみのまま被害者でいてほしいと思う願望だ。どうか、被害者ではなく被疑者になっていないでくれ。
 申し訳ないが、それ以降はもう考えられないだろう。指導室に知らない男性がいた時点でもう俺は耐えられないだろう。
 俺が扉の前に立った時点でここはもう局地戦だ。真鈴は俺の友達だけど、彼女だ。今まで真鈴が隣にいてくれたから俺はここまで頑張ってこれた。真鈴が俺の足場を築きあげてくれたんだ!
 本当なら疑いたくない。本当なら迷うことなく信じたい人物だ。
 対峙なんかしたくない。当然だろう。
 でも、やらなくちゃいけないんだ。真鈴に一体何が起こったのか?進路指導室でなにをやっているのか?他ならない、俺がやらなくちゃいけないんだ。
 俺が真鈴を救いたいから。

「失礼します!」

 扉に鍵はかかっておらず、力を込めた勢いでスライドし、けたたましい音を立てて大きく開いた。
 でも、そんな音なんか入ってこなかった。中にいた人物しか俺には何も見えなかった。

「藤村君・・・・・・!?」
「・・・・・・真鈴・・・」

      ごめんなさい

 中には、真鈴が一人で待っていた。そして、俺の顔を見た瞬間、今まで見たこともないばつの悪い表情をしていた。
 それはもう、ばれたくなかったと言っているかのようで、背の小さい彼女がさらに縮こまったように見えた。

「・・・・・・ここでなにをしてるんだよ?」
「えっ・・・・・・あっ・・・・・・」
「帰るぞ!」

 俺は進路指導室の中をずけずけと入り、真鈴の手首を捕まえて引っ張ろうとした。

「いや、いやぁ!!」
「なにしてるんだよ!真鈴がなんでここにいるんだよ!?」
「いちゃあいけないの!?」

 確かに俺たちは受験生だ。居座るのが悪いというわけではない。しかし、真鈴にその必要はないはずだ。

「俺と大学に行くって、真鈴も決めてるだろ?目標にしている大学も決めているじゃないか!今更ココに必要はないだろう!!」
「目標にしている・・・大学・・・藤村君と・・・・・・?」
「そうだろ、真鈴!?最近付き合いも悪くて成績落ちてきてるんだよ。真鈴がいないと俺勉強できねえよ。だから勉強教えてくれよ。一緒に家に帰ってくれよ」

 生徒指導室から真鈴を連れ出そうと慌てる俺に対して、真鈴は一掃して手を振るい払ったのだ。
 明らかな俺に対する拒絶の表れだった。

「ダメだよ・・・私は一緒に帰れない・・・」
「なんでだよ!?」

 真鈴が俺の言うことを聞かないなんてことは今まで一度もなく、俺が不甲斐ないばかりに怒りを露わにしていた。真鈴に対してここまで怒ったことはなかった。嫌われてでもいいからこの場所から連れ出して、その後冷静になってから話し合いをしたい――とにかく、生徒指導室に真鈴がいること事態が噂の事実を証明しているようなものだった。だから、誰かに見られる前に、真鈴の姿を隠したかった。

「真鈴が帰らないって言うなら力ずくで連れて帰る、ゾ・・・?」

 そんな風に思っていた俺の身体は、ふいに動かなくなっていった。まるで金縛りに陥ったように、身体が痺れて動かなくなったのだ。俺の異変に対して真鈴は目の前で歪な笑みを浮かべていた。

「でも、どうしてもって言うなら~~勉強なんかより、性教育を教えてあげるよ♪」
「ま・・・真鈴・・・?」
「お主も噂を聞いて来たんじゃないの?童に抜いてもらいたいのかと思ったのに♡」

 真鈴の口から信じられない言葉を聞く。真鈴自ら噂を肯定する発言だった。

「っ!?じゃあ、あの噂は・・・」
「うん。本当だよ。今日もまたお客様が来るからダ~メ。まだ帰れないの~」

 見つめる俺の瞳がぶれて、真鈴の後ろに立つ『悪魔』の姿が見えた。その瞬間、俺もまた自分でも信じられない言葉を投げ出していた。

「お、おまえは・・・ダレダ?」

 真鈴は俺が何気に呟いた発言に反応を示した。そして、その正体をはっきりと露わにして見せた。

「童は悪魔だ――」

 真鈴のこの言葉を、果たして俺はどのくらい受け入れることが出来ただろうか。この不思議な金縛りも、まさか悪魔のせいとでも言うのだろうか、馬鹿馬鹿しい!笑えねえよ!!
 しかし、その悪魔ははっきりと、真鈴の面影を残しながら、悪魔の姿へと変貌させてしまった。コスプレなんかできるほど度胸がなかった真鈴が、痴女さながらの衣装に着替えているようなものだ。普段見えなかった胸の谷間も明らかに覗かせており、見ることができなかった真鈴の曲線美をこのような形で余すところなく見せつけていた。
 興奮度を覚えたかったが、それ以上に怒りと悲しみが込み上げてきていたのだった。

      悪魔化

「この娘に取り憑いた『悪魔』だ。でも~、既にこの娘の脳も知識も童と同化しているの。だから・・・・・・私、もう約束なんてどうでもいいんだ。ごめんね、藤村君」
「う、うおおおおぉぉぉぉぉ――――!!!」

 真鈴は自ら俺との約束を手放したのだ。

続きを読む

 ファーストキスもまだだった真鈴が『悪魔』に主導権を奪われて赤木先生を椅子に座らせる。そして、ズボンのチャックを下ろして逸物を取り出すと、慣れた手つきで手コキをし始めた。

「先生ったら、慣れてないの?触っただけで勃起してきたんだから」
「なっ!?」
「うわ!我慢汁出すぎじゃない?そんなに私としたかったんですか~」

 赤木先生も真鈴の普段の態度と変わっている様子に唖然として戸惑っていた。しかし、男性の一番の弱い部分である逸物を人質に取られて、怒るにも怒れないと言うばかりに葛藤していた。

「や・・・やめなさい、須郷。いいから・・・ソレを放すんだ・・・」
「いいから、黙って吐き出しなさい。フフ・・・」

 赤木先生が強く言ってもめげない真鈴。むしろ、手の動きを早めて逸物を激しく扱いていく。

「う・・・ぐっ・・・うおおぉっ!?」

 生徒の手で逸物を扱かれていることに一瞬でも心に迷いが生まれてしまう。知人が聞けば羨ましがるような事実を目の当たりにして動揺しているのは事実だ。

「(『知人はコッソリ手を出せばバレない』とか言っていたが、俺が襲われる側になるとは!?『紹介してくれ』というより『指名してくれ』と言わんばかりにうますぎるんだよ、ちくしょ)おおお――――!!!」」

 ビュッビュッビュプッびゅるびゅる―――!!

 赤木先生は真鈴の手つきにあえなく精液を吐き出してしまった。白い肌に付いた白濁色の液を眺めながら口へ運んでいった。

「ちゅるるるうぅーーーーちゅぱっ!」

 濃厚な精液を啜り取りながら喉に流し込んでいった。そんな仕草が艶めかしい。真っ青な顔をした赤木先生が真鈴を信じられないと言わんばかりに見つめていた。

「す・・・須郷・・・・・・おまえっ・・・・・・」
「うふっ♪また能力が取り戻ってきちゃった。――『スロー』」

 真鈴の目が光ると、赤木先生の身体が動かなくなる。意識はあるが、身体が重くなったのだ。空間が曲がり、動きが遅くなった赤木先生に対して、真鈴は一人何事もなさそうに平然と動き、赤木先生の吐き出している精液付きの逸物を、口に含んで呑み込み始めた。 

「んっ・・・ん・・・ぅん!じゅぽ、じゅぽ、じゅぽ・・・ちゅっ、ちゅぅ~!!」
「ちょっ・・・すご・・・うっ・・・うおっ・・・ちょっ、まて・・・」

 敏感な亀頭をペロペロしゃぶり舐め、精液を吸い込んでくる。腰が浮いて耐えられなくなるが、『スロー』によって腰が浮く動きも遅くなり、精液だけが吸い取られていく感じだけが残っていった。

「やば・・・い、イクって・・・うおっ、うおあっ!ああぁーーー!!」

 赤木先生の生声が響き、大量の精液が真鈴に呑み込まれていった。

「ごくん」

 その精力の味を味わうために舌で転がして味わった真鈴。まるで洒落たワインのように静かに喉に落としてその余韻まで楽しんでいた。

「(んっぷ・・・わらひ・・・精液・・・呑んじゃった・・・藤村君以外の人の・・・・・・)」

『意趣返しの恩教師』の呑んだ精液の味は否応なく真鈴にも感じていた。水よりもタンパクななんとも言えないクサい味を知ってしまったことに涙が止まらなかった。フェラも初めてだった。初々しさを残した少女が知った精力が湧き上がる味。

「(・・・おひしい・・・おひしく感じちゃってるっ!)・・んっ・・・ぢゅる・・・ちゅぷぅ・・・れふ・・・んっ」

 最後の最後まで、精液を啜り取っていく真鈴。カリ首だけじゃなく、竿の方も丹念に舐めて一滴たりとも精液を残さなかった。

「・・・んんっ、ちゅるるぅっ・・・んふ、ぢゅるぢゅるぢゅる」
「俺の大切な種を・・・っ!」

 すべてを舐めたあと、満足気に微笑む真鈴。息をあげる赤木先生だが、あれだけ吐き出しても逸物の勃起はまるで媚薬でも塗られたかのようにビンビンに勃起し続けていた。
 不敵な笑みを浮かべるその意味を知り、赤木先生はさらに驚愕していた。

      片鱗が見える

「じゃあ、私とセックスしましょうか?先生・・・フフフ・・・」
「す、須郷・・・?」

 赤木先生の目に、一瞬だけ悪魔の姿が浮かんで見えた。


続きを読む

「そうか?妖精には誤魔化せないゾ?恋する気持ちに嘘つくんじゃない?童が手伝ってやる」

 許可を得るより早く、『意趣返しの恩教師』は真鈴の制服を脱ぎ始めたのだった。

      ピンクのブラ
  
「(あっ!きゃああぁぁ~!)」
「なにを恥ずかしがっている?皮の布あれば下級悪魔の攻撃で死ぬことはあるないゾ」
「(なんの話ですかあぁぁ~!?)」

 意味もなく学校で下着姿になることはない。ましてや誰が来るか分からないトイレで真鈴は下着姿になんてなったことはなかった。個室になっているとはいえ、早く制服を着てほしくてたまらなかった。

「(学校のトイレでこの格好はダメです!お腹がちょっと冷えちゃいます!)」
「え~~~?自意識過剰じゃない?そんなに恥ずかしい格好じゃないと思うゾ」
「(そ、そうですよね?妖精さんはいつも裸ですもんね)」
「・・・・・・ン・・・?お主、もしかして童のこと天使と勘違いしてない?」

 ペタペタと触っていた素肌に満足しながら、今度は下着に包まれた敏感な部分を擦り始める。『意趣返しの恩教師』の指使いに真鈴は今まで感じたことのない刺激を味わっていた。

「(・・・ん・・・・・・ふゃっ・・・あ!)」
「声がうるさいゾ」
「(だって、いま、ヘンな気持ちになっちゃって・・・妖精さんの手で、身体触られると、ビリビリくるの・・・)」

 自分の手で乳首に触れ、爪を立てて引っ張るように露出してやるだけで、なんとも言えない痛みが真鈴に襲ってきた。痛みと同時に痺れが襲い、その痺れが次第に疼きを起こして痛みをまたさらに引き立てようとしている。
 そんなことを何度も繰り返していくと、痛みに慣れて心地よさを覚えてくるだけじゃなく、乳首が硬く勃起してくるじゃないか。『意趣返しの恩教師』もまた真鈴の異変に気付いていた。

「もしかして、お主。触ったこともないのか?」
「(ン・・・ふ・・・)」

 肯定もしなければ否定もしない。それはつまり『悪魔』族にとって肯定も同じだった。

「(そうか。こやつ性処理もまだ覚えてない初心だったとは・・・。これはいい。生の嬌声が聴けるというものか)」

『意趣返しの恩教師』がなにかを閃くと、ブラの中から乳房を取り出し、乳肉をかき集めながら円を描いていく。それと同時に頭の中に響いていた真鈴の喘ぎ声が次第に外へと吐き出すように消えていった。

「んああああ――っ!!」

 変わりに今度はちゃんと耳から真鈴の声が聞こえるようになっていた。自分の声がトイレに響いたことに真鈴自身も驚いてしまった。

「えっ、いや、声が——!?」

 急に自分の喘ぎ声が女子トイレに響き、慌てて声を落とした。自由は奪われ、手も足も『意趣返しの恩教師』に奪われている。その中で口だけが解放されたのだ。

「やめ・・・そんな、あ、あぁぁ・・・声、漏れちゃうよぉぉ!」

 いやいや言って真鈴の許しを『意趣返しの恩教師』は許可しなかった。ひたすらに羞恥をいじめて、真鈴の感度を高めていった。

「(もしばれても、童のカラダじゃないから恥ずかしくないんだけどね)」
「あー・・・あー・・・」

 身につけている下着も真鈴の手で外され、裸にされてしまう。もし、鍵のかかった個室の中で誰かが覗いて来たら、どんな顔をすればいいのかわからない。真鈴は顔まで真っ赤になりながら手を秘部へと伸ばしていった。

      泣いても許してあげない

 くちゅり——

 秘部に指を宛がうと、おしっこをしたわけじゃないのに、秘部はぐっしょり濡れていた。透明な液を噴き出して指の腹にのせて顔に近づけていった。

「(おーおー。濡れてくるじゃない。知らなくても身体は成長していたのね)」

 これが自分の愛液。初めて見る透明な粘液を強制的に眺める。指と指に絡む透明なお汁が、自分の身体から出ていたことに、興奮がさらに高まった。
 そして、濡れた手を乳首に持って行き、愛液を塗りつけていく。キラキラ光る乳首は媚薬を塗りつけられたように熱くなり、今まで以上に勃起していたのだった。

「乳首・・・あ・・・・・・あああぁぁぁーーー!!」

 両手で乳首を引っ張りこれ以上ないくらい痛めつける。すると、おま〇この奥が疼いてきたのだった。

「足先から頭まで快感がのぼってきて溢れてくる」

 いい感じに濡れたおま〇こに指をじゅぼじゅぼ出し入れを繰り返し、膣内をかき混ぜて愛液を掻き出していった。ヌルヌルの膣内の温かさと湿り気で充満した肉壺を何度も爪を立てて引っ掻いていくと、奥から火山が爆発するように、快感が勢いよく持ちあがってそのまま馳せていった。

「この感じ、イく・・・おま〇こ、イっちゃう・・・!!イヤあああぁぁぁぁーーーー!!!」

 口を塞ぐことも忘れて、大声で叫んでしまった中でアクメに達した真鈴。その後すぐに尿意が襲い、愛液と供に、おしっこが迸り洋式便器の中へ堕ちていった。

 ジョボボボボボボ・・・・・・チョロチョロチョロ・・・シャアアァァァ・・・・・・。

「ん゛んん・・・・・・!!!ふっ・・・くぅッ・・・・・・」

 勢いが弱まっていくにつれて、息を整えるように呼吸を繰り返していった。
 涙を流しながら初めてのアクメに脱力している真鈴。イったというよりもイかされたという感覚が強く、言葉にならない疲労感が拭えなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・妖精さん・・・・・・も、もういいんじゃないですか?私の身体、返してください・・・」

 身体を妖精に操られて、初めて絶頂を味わってしまった。そんな驚きに冷める前に身体の主導権を返して欲しいと請う真鈴だった。しかし——

「なにを言ってる?お楽しみはこれからじゃないか!」
「(妖精さん・・・えっ?ま、また声が・・・!?)」

 再び口の主導権も奪われ、『意趣返しの恩教師』が本性を明かしてくる。指に付いた愛液を口に運び喉に落としていくと、今まで乾いていた魔力が潤っていくのを感じていた。そうなれば、本来の力がさらに発揮されるというものだ。妖精などと下手に出ることもなく、顔色を窺う必要もなく従来の悪さが発揮できるというものだ。

「イーヒッヒッヒッ!白魔導士の聖水を呑んだんだ。勇者ほどではないが、大分魔力が回復しおったわ!これならこの女に成りきることも可能だゾ!」
「(妖精さん・・・何を言ってるの?)」
「ふん。残念だけど童は妖精ではない。『悪魔』族の幹部、『意趣返しの恩教師』だ!」
「(あ・・・『悪魔』って・・・う、ウソ・・・)」
「童を妖精と思い込むとはお主も相当な愚か者よ。実際悪魔も妖精もさほど変わらんがな。どっちも人間を栄養とする種族であることにな。何故、妖精と言えば好まれるのかよくわからんゾ」
「(あ・・・あ・・・)」

 ようやく真鈴は騙されていたことを知り、顔色が真っ青になっていく。身体を返すつもりもない『意趣返しの恩教師』―あくま―に、どうやって太刀打ちすればいいのかなど知る由もなかった。

「さて、この身体で男たちのチ〇ポミルクをドピュドピュ噴き出してやるとするかの!」

 真鈴の肉体を乗っ取り『悪魔』の所業を行うつもりらしい。自分の身体で淫語を連発する『意趣返しの恩教師』に顔が引きつりそうだった。

「(そんなの無理・・・悪魔なんて、現代社会に居るはずない。馴染めるはずがない!)」

 真鈴が強気に叫んでいた。その顔は歪んでおり、誰が見ても明らかに須郷真鈴と呼べる人物ではなかった。明らかに怪しい顔をしているのだ。なにかを企てて様子が違えば、気にする相手がすぐ近くにいることを真鈴は知っていた。

「(こんな身なりや口調でいたら、絶対に藤村君にばれるはず!絶対私を助けてくれるもの!)」

 頼恒を信じて託そうとする真鈴。自分の身を案じ、普段と違う様子にきっと彼は分かってくれると断言していた。確かに、今の成りのままなら正体がばれるのは必至。生まれも育ちも違う種族が別種に成りすますということなど不可能だ。

「それもそうか。世界が変われば状況も変わるかもしれん。不意打ちを受けぬためにも装備を万全にしておくとするか」
「(えっ・・・?)」

 しかし、これもまた『悪魔』の業だ。別種という想いもよらない方法でその解決方法を強引に導いていく。

「『ライブラ』!」

『悪魔』は魔法を唱えたのだ。その補助魔法に包まれた真鈴は眩しさで目を瞑ってしまっていた。しかし、その光はすぐに消えていった。
 別になにか状況が変わったということはなかった。しかし、事態は大きく変わっていた。

「うふっ。私は須郷真鈴。18歳の牡羊座。身長156㎝。体重43㎏――」
「(えっ?えっ?)
「まだ誰とも正式にお付き合いしたことはないけど、藤村君の告白を待っているの。大学なんて失敗しても、私に告白してくれるかな?そうしたら、私は――もう!やだぁ~!どうしてあんな約束なんかしちゃったんだろう?私、もう待ちきれないよ~!」
「(えっ?えっ?なんで・・・知ってるの?)」

 それは、まるで真鈴の本音を自ら告白しているようだった。乗っ取られたばかりの『悪魔』が真鈴のすべての情報をいつの間にか手にしているのだ。

「どう?これで誰にもばれないでしょ?」

 キリッとした表情で髪の毛を掻き分けながら、鏡に向かってドヤ顔を浮かべて見せる。初めて見る真鈴のドヤ顔だった。

「(なんで・・・私のことをそんなに知ってるの?)」
「あなたの記憶を読んだのよ。あなたの覚えている知識はだいたい引き出せるし、能力もコピーしたから仕草も喋り方も寸分違わずあなたに成りすませることも出来るわ。さあ、早く藤村君のもとに帰らないとね♪いっそのこと、このまま私の方から押し倒しちゃおうかな~♪」
「(い、いやあああぁぁぁ~!)」

『ライブラ』という魔法のせいか、真鈴に成りすました『悪魔』が女子トイレから颯爽と飛び出していく。迷うことなく教室へ向かう様子に、真鈴は震えが止まらなかった。



続きを読む

 俺、藤村頼恒‐ふじむらよりつね‐は須郷真鈴‐すごうまりん‐と高二の夏に思い切って告白し、付き合う際に二つ、真鈴から約束を交わした。

「・・・・・・続きは卒業してからでいい・・・?」

 清純派な彼女らしい。だから俺は自分の欲を我慢して、今日に至るまで清い友達同士として付き合いをしてきた・・・。
 俺は二つ返事でうなずいた。
 そして、もう一つの約束は——。

「こないだの全国模試どうだった?」
「平均60点だ」
「わぁ~すごいすごい!」

 真鈴は俺のことをまるで自分のことのように喜んでいた。真鈴に告白する前は勉強なんかしないで赤点だらけだった俺が一年間でよくここまで点数を取れるようになったものだと自分ですら驚いていた。
 でも、俺がこの点数を取れるようになったのは、俺一人の力ではきっとない。

      好きな子のためなら頑張れる

「真鈴のおかげだよ。ありがとう」

 俺に付き合って勉強を教えてくれた真鈴なくして、俺はのし上がれはしなかっただろう。これもすべて、彼女と同じ大学に行きたいからだ。

 ——「二人で同じ大学に行く」という約束のために、頑張ってきたんだ。彼氏彼女として大学生活へいくのが俺たち二人の目標だった。
 残り、三ヶ月となる大学受験に向けて、もう一踏ん張り俺たちは二人三脚で頑張っていく。 

「あっ・・・」
「おっ・・・」

 思った以上に顔が近かった。彼女の潤んだ唇に思わず触れてしまいそうで、ドキッとしてしまった。

「わ、悪い!そんなつもりじゃなかった・・・!」
「ううん。こっちこそ、ごめんね・・・」

 顔を真っ赤にしながらお互い相手を意識してしまった。約束を守ろうとする抑制と、それでも強引に押し倒してしまおうという欲望が入り混じってしまう。

「(馬鹿・・・あと半年したら解放されるんだろ?この一年我慢してきたんだから、こんなことですべて水泡に帰してたまるかよ!)」
「・・・・・・本当に、ごめんね・・・」

 真鈴はもう一度謝った。まるで、自分の出した約束が自分自身に縛られているみたいだった。

「気にするなよ。・・・それよりも、ここ間違ったから教えてもらえるかな?」
「うん。いいよ。ここはこれとこれが同位だから・・・・・・」

 そうだ、放っておいても時間がすべて解決する。俺たちは一日、一日大人になっていく。
 今どうにもならなくたって、真鈴と真剣なお付き合いするための未来は変わらないのだから。


続きを読む

 これでいいのだろうか——
 俺と陽菜は付き合ってるわけでもない。"入れ替わり"を共有する関係なだけで、陽菜が俺を何の基準で選んだのかも正直わかっていない。
 性格も似たもの同士な気もしたけど、だから好きというには勘違い甚だしい。
 性癖も似たもの同士な気もしたけど、だから好きと結びつけるには差し出がましい。
 その答えは陽菜にしかわからないし、陽菜が俺とセックスを望んでいるのなら、それに便乗していいのかもしれない。おこぼれを頂戴する生き方だっていいじゃないか。

      どっちが受け?どっちが責め?

「で、この後でどうしたらいいんだ・・・?」

 ホテルの中に入って衣服を脱ぎ始める俺たちだけど、その後はどうしたらいいのだろうか?
 やっぱりここは男である陽菜(俺)が責めるべきかもしれない。しかし、俺は童貞だ。宏(陽菜)を喜ばす術を知っているわけではないし、テクニックだってうまいのかどうかわからない。
 幸いなことに"入れ替わって"いる相手だし、自分の身体を弄るわけだから、一人慰めている時のように手コキをやればいいのだろう・・・。でも、そうなったら陽菜(俺)は自分のち〇こをフェラチオしないといけないだろうか。

「(他の男性のを舐めるより全然いいけど、自分のアレってどんな味がするんだろう・・・)」

 女性がフェラチオしている時の心境がわかる。

「(・・・怖くないか・・・?)」
「自分のカラダの気持ちいいところは全部わかってるから。河原君はベッドで横になってていいよ」
「あっ、はい」

 宏(陽菜)にそう言われると、本当に自分が女の子になってしまうみたいに頼ってしまう。言われたままにベッドに横になって宏(陽菜)の好きなように身体を差し出していく。

「んああぁっ!」

 宏(陽菜)が乳房を口に咥えて乳首を舌で愛撫する。下から持ち上げるように乳肉を集めると、それなりに陽菜(俺)の乳房はボリュームがあり、宏(陽菜)がチューチュー音を出して吸い始めると、柔らかな乳肉が鋭い円錐を形作りながら激しい刺激を押し上げてくる。

「うあっ、あっ、あっ、あはっ、あぁぁ・・・」

 おっぱいを宏(陽菜)に弄られれば弄られるほど先っぽが膨れてきていた。それなのに不思議だ・・・お互い自分のカラダが相手なのに、陽菜(俺)は宏‐じぶん‐自身に犯されているのに、まったく抵抗感はなかった。
 宏(陽菜)の言う通り、的確に感じる場所を責めてくるせいか、すごく濡れ易くなっていて、カラダが火照ってたまらなかった。宏(陽菜)の愛撫一つ一つが愛おしく感じてしまい、全身が蕩けてしまいそうだった。

「ここ気持ちいいでしょ?」
「ふあ!あっ、ああ・・・キモチイイよ・・・」

 宏(陽菜)の指でおま〇こを弄られると、あっという間にクチュクチュとイヤらしい音を響かせていた。そのままクンニされ舌を差し入れられる。宏(陽菜)に舐められるとどんどんお汁が溢れてきた。
  宏(陽菜)のペースで濡らしているけれど、陽菜(俺)だって陽菜を感じさせてやりたい。そう思ったら陽菜(俺)は宏(陽菜)の逸物をつかんでいた。勃起した逸物は既に熱くなっていた。

「お・・・俺も・・・外西さんを感じさせたい・・・・・・ちゅむ・・・ちゅぱちゅぱ・・・」
「あ・・・!うう・・・ッ!」

 陽菜(俺)がフェラチオを始めると、宏(陽菜)の口から苦しそうなうめき声を荒げた。

「ちゅっ、ちゅくっ・・・レロレロ・・・ちゅぶぶぶぅ・・・ちゅぱ」
「~~~~ッ!!」

 亀頭を舌で絡みつきながら、カリ首を刺激するように顔を上下に動かして逸物を飲み込んだり吐き出したりしてやると、ビクンビクンと宏(陽菜)が激しく身体を身震いさせていた。あの、取っつき難かった陽菜がこんなに感じているんだから、フェラチオって相当気持ちいいんだな。

「んっく・・・ふ・・・んっぷ・・・んんぅ・・・!」

 うわっ、先端から先走り汁が出てきた。ちょっと、苦い・・・それに、なんとも言えない、変な味がする。これを毎回女の子は飲むのか・・・。
 興奮すればするほど溢れてくる先走り汁。そして勃起してくる逸物が準備を整えたことを告げていた。これが女の子に出たり入ったりするんだと思うと、興奮が最高潮に達していた。

「んああ・・・ッ!」

 そんなことを考えながらフェラチオをやっていたら、宏(陽菜)も負けじにクンニを続けていた。シックスナインでお互いの性器を舐め合う俺たち。似たもの同士が相手を気持ちよくさせようと同じことをやりあっているのって、滑稽だけど・・・陽菜がなんだかすごく可愛く見えた。

「お互い十分濡れたみたいだし、そろそろ挿入れてみていい?」
「あ、うん・・・」

 宏(陽菜)の言葉で体制を変え、ベッドに沈んで正常位で受け入れようとする。そういえば、いつの間にか自然に陽菜と話をしているけど、これって・・・本当にあの外西さんだよな?
 なんだかすごく頼もしく見えた・・・。

「ふふ、なんだかおかしいね。お互い好きでも何でもないのに。エッチってこんなに気持ちいいのね」
「・・・・・・うん。そうだね・・・」

 一瞬くぎを刺された気がした。
 俺たちはただクラスメイトで、彼女でも彼氏でもない。陽菜は俺のこと・・・好きでも何でもないだろう。俺だって・・・別に好きじゃないはずなのに・・・。なんだろう。この気持ちは・・・。

「ん˝ん˝・・・!いった!」

 オナニーの時も思ったけど、陽菜の膣内はとても狭かった。そこに宏の逸物が入ったら傷ついてしまうのがわかるようなものだ。痛みを如何に軽減するか、そのためにお互い濡らしてきたんだ。

 ズ・・・ズブズブッ・・・ズブブッ

 少しずつ愛液を潤滑油のようにして逸物を呑み込んでいく。カラダの奥から逸物を咥えこんでいるという感覚があって、入ってくるたびに気持ちよさを少しずつ覚えていった。

「ゆっくり動くね」
「あっ・・・んっ・・・んあっ・・・うんっ・・・」

  宏(陽菜)の腰が動き始め、陽菜(俺)の膣内を抉っていく。膣肉を削り、まっすぐ子宮口まで届いてくる逸物が出たり入ったりしてくる度に声にならない快感が全身を駆け巡っていた。カラダが熱を帯び、蕩けてしまいそう。宏(陽菜)のように陽菜(俺)も全身がビクンビクンと小刻みに震えて止まらなかった。

      蕩れー

「ん˝あ˝あ˝!挿入ってくる・・・!ぜんぶ・・・ッ!!あっ!外西さ——!!」

 宏(陽菜)のピストン運動で膣肉がほぐされ、子宮口に鬼頭が擦りつけられる。膣の奥でビリビリする刺激が気持ちよくて、また欲しくて疼きが絶えず激しく生み出されていた。

「ん˝・・・ん˝ん˝!!!」

 いつの間にか逸物は陽菜(俺)の中に全部咥えこむほどに侵入し、腰がぶつかり空気が破裂する音が響いていた。

「んはああ!!はぁ、ぜ・・・ぜんぶ・・・ッ!挿入ってる!!はぁ・・・!外西さんのッ!ん˝ん˝ぅ˝!!」

 宏(陽菜)も息を絶え絶えに吐き出しながら、必死に腰を動かし続けていた。宏(陽菜)も快感に我慢ができなくなり、より激しく腰を振り続けていた。

「あ・・・あ・・・もう、ダメぇ・・・外西さん・・・!」

 陽菜(俺)が涙を流しながら快感をその身に受ける。小さな絶頂が身体を襲い、濡れてくる度に逸物を締め付けていく。
 キモチイイという気持ち以外、俺たちにはなかった。

「う・・・あ・・・!!イッ・・・クぅッ!!」
「あ・・・!まっ・・・!なかに・・・でちゃ・・・ッ!!」

 宏(陽菜)のカラダが震え、嗚咽が聞こえた。急いで抜かなくちゃいけないと思っても、カラダはココロに反するように身動きできず、宏(陽菜)の射精感を受け入れるしかなかった。
 そして——、

 ドビュ、ドビュ、ジュブブブブ!!!ビュッ!ビュルルル~~~!!

「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝——————♡♡♡」

 ——大量の精液を受け入れた瞬間、カラダが抑えきれなくなって絶頂に達してしまった。
 声を喘ぎ、涙を浮かべてカラダが喜んでいく。快感で満たされる想いに浸っていた。
 ヌプリッ、と逸物を抜いた瞬間、溢れんばかりの混合液がベッドシーツを濡らしていた。これだけ精液を受け入れられる陽菜の膣内は本当に広いのだろう。

「はぁ、はぁ、はー・・・」

 セックスって体力使うもんだな。体力がない陽菜(俺)だったら果たして宏(陽菜)を満足させてやれたかどうかわからない。女々しい話だが、"入れ替わって"よかったと思ってしまった。
 と、突然宏(陽菜)がクスクスと小さく肩を揺らして笑っていた。セックスをした事実と、自分自身を犯した痕跡が流れる部分を見つめて笑う宏(陽菜)に一瞬ドキッとしてしまった。

「え・・・?なに?」
「ううん。ちょっと・・・血が付いてるの」

 陽菜(俺)の秘部から流れる赤い血栓に気づいたのだ。陽菜にとって大事な処女膜を破られたという感覚を味わうことができなかったことを悲観的には思っていないようだ。

「自分で処女膜破っちゃったんだなって。セックスで血が出るとは思ってなかったの」

 そう言って、宏(陽菜)はしばらく面白そうに笑っていた。陽菜がこんなに笑う場面を俺は見たことがなかった。彼女も笑うんだなって、その顔を見てみたくて——俺は変わりに陽菜の表情で同じように笑った。

続きを読む

 成績優秀、品行方正。それが外西陽菜に対する先生や友達、世間の評価だった。
 俺だってそう思っていた。そう思われていることが誇らしいと思っていた。
 でも、皆は知らない。陽菜の本音を・・・。

 彼女の携帯からSNSを開いてアカウントをのぞいてみると、そこには学園に対する不満や苛立ちが書き綴られていた。本当の彼女がそこにいた。綺麗な言葉でなんか書かれていない、本音をぶちまけていた。
 それだけではなく——、

"ザーメン直接見てみたいな。見せてくれる人リプ待ってまぁーす(`・ω・´)"
"汚れたいな。どなたかザーメンかけてもらえませんか(♡ >ω< ♡)"
"私、本当に汚されちゃうよぉ♥もっと、私を汚してっ♥ぐちゃぐちゃに汚していいよ♥"

 エロい無修正自撮り写真をアップしていたり、援助交際を誘っているかのようなつぶやきまで書き残していた。
 普段の姿では想像もできない、彼女の行動が見ることが出来た。果たして、世の男性は彼女を知っていたのだろうか。それなりにイイね(・∀・)が貰えているから、陽菜のSNSの更新を待っている者もいたに違いない。
 誰も気づいていなかった。誰も気づいてやれなかった。
 陽菜の覚える物足りなさ。学園生活を充実していない分だけ、なにかで満たされたいという想いをSNSに託してしまっていた事実を。その方向が間違っているのだとしたら断じて違う。陽菜はSNSで救いを求めていたのであり、学園生活でのストレスこそが陽菜の心を歪めてしまった根幹にあるのだから。つまり、陽菜を救ってやれなかった学園にいる教師、友達、生徒——宏(俺)も悪なのだ。
 先生に声をかけてくれたら満たされたかもしれない。友達に相談してくれたら本当に笑える日が来たかもしれない。誰でもいいから話をしてあげたらSNSに卑猥な画像を残さなかったかもしれない。
 でも、その結果最後に陽菜が頼ったのが宏(俺)との"入れ替わり"だったのかもしれない。
 男性に救いを求めていたのかもしれない。

"あーあ。男の子のように強くなりたいな♥そうしたら私、自分を好きになれたのに♥"

 そんなお願いを聞いてくれる人を待っているのだとしたら——

"
『この身体いつまで入れ替わってるの?』


 俺はてっきり一日だけの効果かと思っているけど、それは本当だろうか。『粉薬』の小瓶を全部使って”入れ替わった”効果の継続は果たして一日だけで済むのだろうか。

『いつまでだろうね?』
『おい。マジか』

 購入した宏(陽菜)がそんな曖昧な返事で大丈夫なのだろうか。もう”入れ替わり”は始まっているんだ。後戻りは出来ないんだぞ。急に元の身体に戻れるか心配で仕方なくなってきた。

『よくわかんないけど・・・いつまでだって私は全然かまわないよ』

 宏(陽菜)はのほほんとそんなことを言っていた。
 こいつはとんだお嬢様だ。
 もしおれがこのまま陽菜のままになったとしたら――果たして俺は、嬉しいだろうか。
"

 そういえば、あの時、宏(陽菜)は笑っていたよな。
 よっぽど嬉しかったのかもしれないな。

「あんな顔見せられたら、仕方ないよな・・・」

 不思議と陽菜(俺)は今の陽菜の状況を受け入れつつあった。
 宏(陽菜)は戻ってくるだろうかという不安よりと、このまま宏として陽菜が逃げられるのなら、それでもいいとさえ思い始めていた。一度は俺だって陽菜のカラダのままになったとしたら喜んだことは事実だ。
 新体操部の厳しい指導にもとの新体操部は辞めてしまうかもしれないが、陽菜の人生がこれ以上壊れるくらいなら、それでもいいとさえ思う。自分のカラダに戻れなくても、俺は陽菜として生きる覚悟を受け入れつつあった。

「ハァ・・・ハァ・・・ぜぇ・・・ハァ・・・」

 そうは言っても、本当に部活は辛くて死にそうだった。息を切らしてようやく初日を終わらせた陽菜(俺)は、部員の誰よりも最後まで起き上がることができなかった。身体から汗は拭きだし、目には涙をにじませて吐き気を飲み込むのが精いっぱいだった。
 部員たちは部長の練習量を案じて、声をかけることもせずに先に帰ってしまった。確かにいま声をかけられても言葉を返せる自信はなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・ぐっ」

 陽菜も同じくらい苦しんでいたのだろうか。男性(俺)でも逃げ出したいと思っているのに、女性(陽菜)だったら逃げ出す気持ちが良くわかる。
 生き方なんて一つじゃない。部活に生きなくたって、勉強に生きなくたって、なんとか生きていけるものだ。そんななあなあの人生だって有りじゃないだろうか。どうして大人は極端に一つを特化させる生き方を好むのだろう。大人の都合で子どもの人生決めんなよな・・・。

「・・・・・・・・・」

 一人転がっている陽菜(俺)の顔に影が落ちる。突然、何かが俺と天井に吊らされた水銀灯の明かりを遮ったのだ。
 鴨が葱を背負っている特大のぬいぐるみだった。河原宏(陽菜)が陽菜(俺)を見下ろしていたのだった。

「なに私の顔で泣いてるのよ?」

 淡々とした彼女の口調は俺の声色になったとしても変わっていなかった。宏(陽菜)の顔を見た瞬間、陽菜(俺)は胸の中が締め付けられる思いがした。

「これは目汗だ。泣いてない」
「私の代わりに部活出てくれたんでしょう?ありがとう。おかげで私は放課後ゆっくり過ごすことが出来たわ」

 宏は帰宅部だったし、基本一人で放課後自由にしていた。その立場で宏(陽菜)は遊びにいってリフレッシュできたらしい。

「温泉に入ったのなんて久しぶりよ。1800円かかっちゃったけど」

 結構いい温泉行ってますよね、健康〇ンド的な場所だよね?その金額はどこの財布から出てきたんですかね?

「ゲーセンなんて何年ぶりに入ったかしら」

 その後にも行ったのかよ。俺よりも充実した放課後を過ごしているな。そして、強調するように揺らすぬいぐるみである。戦利品というべきものだろう。

「8000円使っちゃった」
「ゴフッ!?」

 思わず咳込んでしまった。なにそのブルジョアなぬいぐるみ!俺ですら買ったことねえ!?一桁間違ってたって、言ってくれよ。たかっ!?高すぎるよ、その投資は!?

「・・・1000円で取れなかったら諦めてくれよ。俺の諭吉がお亡くなりになったよね・・・?」
「向こうが悪いのよ。設定が設定なのよ」
「8000円使ったら設定以外にセンスも関係するだろ。いい加減にしろよ、完全にカモじゃないか」
「私がいくら色仕掛けでお願いしても店員さんイヤな顔してた。絶対わざとよ」
「俺のカラダで店員さんに何てことしてくれたんだ。もうゲーセン行けねえよ・・・」
「あら?目汗をかいてるわよ?」
「これは涙だぁぁ!うわあぁぁぁん!俺の憩いの場だったのにぃぃぃ!!」

 泣いている陽菜(俺)を見ながらサディスティックに微笑む宏(陽菜)。前言撤回。俺のカラダ返してくれよ。もし"入れ替わり"が戻った時に金銭面で生きていけなくなる!?

「ありがとう、河原くん」

 そんな、陽菜(俺)の心を察して宏(陽菜)が感謝の言葉を投げていた。
 一瞬だけ、感情が止まった。

「本当だったら私、もうあの体育館に戻らないつもりだったの。でも、今日久しぶりに思い切り遊んで吹っ切れたわ。私、もう少し部活を頑張ってみる」

 宏(陽菜)の言葉から聞く心境の変化。そして、これからのこと——陽菜の生き方について一つの答えを出したのだ。

「それって・・・・・・」

 部活に戻ると宣言することは、陽菜にとって不本意な生き方を自ら選んだということだ。やりたくないことを我慢して、優等生を演じ続ける道を選ぶということ。
 もっと楽しい生き方があるかもしれないし、もっとやりたいことが見つかるかもしれない。
 それでも、陽菜は——

「河原くんの言おうとしていることはわかるわ。それでも私、新体操が好きなのよ。身体を動かして、演技をばっちり決めて、観客に拍手を貰っている自分が大好き」

 俺が見た外西陽菜の演技をもう一度脳裏に思い出す。大会で感動していたのは、俺だけではきっとない。観客の中で陽菜を応援する人たちがきっと大勢いたはずだ。だから陽菜は新体操部を続けられた——

「あと一年の辛抱よ。高校に行ったら新たな環境でもっとレベルの高い部活動が出来るはず。先輩のように夢が終わったわけじゃないもの、顧問が嫌だからっていう理由で自ら夢を蹴るなんてそれこそ馬鹿らしいでしょう?」

 確かに、そんな理由で夢を諦めるなんてもったいない。

「いえ、蹴ろうとしてたから馬鹿かもしれないけど・・・」
「いいの?外西さん。本当に辛いと思うよ。みんな辞めていくと思うよ?」
「辞めていきたいなら辞めればいいわ」

 なんともドライな意見だな。

「でも、私も同じ気持ちになったことは確かよ。部長(私)の言葉で考えを変えて引き留めてくれるのなら、応援し続けたい」

 部員の辛さもわかる陽菜。痛みを知って、他人の気持ちがわかるようになったのだから。
 立場が違えど、新体操が好きな気持ちが変わらない限り、部員一人ひとりの夢も終わらない——。

「俺も、同じくそう思うよ」

 ——そう、思わずにはいられなかった。

「その時は、また河原くんに『粉薬』使ってもいいかな?私が河原くんにしてもらったみたいに」

 辛くて困っている人を助ける道具になるのなら、入れ替わってみて自分を見つめ直すのもいいかもしれない。

「そうだね。そうだといいね」

 "入れ替わり"なんて——そんな非現実的なオカルト話に盛り上がる陽菜(俺)と宏(陽菜)は、間違いなく笑っていたのだった。
続きを読む

 放課後になり、部室に部員たちがやってきた。陽菜(俺)はその中にうまく交じってレオタード姿に着替え始めたのだ。

「おおっ。うわぁ・・・」

 陽菜のレオタード姿は刺激の連続だった。体にぴったりと張り付くレオタードの締め付けは、着るだけでカラダを引き締めているみたいだ。
 衣装で心が突き動かされるということは普通にあり得る話だ。まるでレオタードを着た瞬間、人に見られるという意識がおもむろに働き、見た目を気にするようになっていた。
 レオタード姿というのは身体のラインを隠せない衣装だ。自分の容姿に自信がなければ着ることすら躊躇ってしまう。新体操部だからレオタードを着るのではない。レオタードを着るから新体操部になれるのだ。
 外西陽菜も決してレオタードを着ることに躊躇いがないわけではない。恥ずかしいという思いを持ち合わせながらも、羞恥心に勝る絶対の自信を持っているからこそ、この衣装を着られるのだということが分かった。

「外西さんってレオタード姿恥ずかしくないの?」

 こんなことを本人に尋ねるのも億劫だ。陽菜(俺)は自らレオタードを穿いた感想がその答えでいいと思った。
 でも、陽菜にとってはレオタードは着なれたものかもしれないが、俺にとって初体験の試着はまだ恥ずかしさを覚えていた。つまり――

「(まずい・・・また濡れてきちゃった・・・)」

      こいつは相当のへ――

 陽菜の食い込み部分を直しながらも、レオタード姿に包まれたカラダの奥にわずかながら疼きを覚えてしまっている。ニップルやカップはちゃんと付けているんだけどな。

「なにもたもたしてんのよ?早く練習行こうよ」

 部員たちに言われて慌てて陽菜(俺)も体育館へ向かっていく。
 新体操部で部長としてこれから俺は部活をするんだ。果たして外西陽菜として成りすませるかなんてわからない。
 先ほどまではいつ"入れ替わり"が元に戻ってもいいように、先に陽菜のカラダでオナニーしてしまったけど、いまは"入れ替わり"が元に戻ってほしいと思っている。だけどそれは虫が良すぎるよな。
 だったら俺はせめて部活だけでも、この学校にいる限りは外西陽菜として成りすまして生活することを決めていた。
 外西陽菜に成りきる覚悟はできていた。帰宅部の俺が果たして新体操なんか出来るかわからないけど、体験入部の気持ちで一日部活を励んでみたいと思った。

「それじゃあ、よーい、はじめ!」

 部活が始まって、まず部員全員で始めたのは、なんと鬼ごっこだった。
 それが何の意味があるのかわからないけど、レオタード姿の格好で部員達全員で鬼である生徒から逃げるように駆け回っていた。
 走り込みと臨機応変な対応、柔軟な逃げ等が果たして培われるのだろうか――そんな思惑を予想しながら陽菜(俺)は部員に混ざって鬼から逃げていたが――。

「タッチ」
「ひゃあぁ!?」

 おふっ。捕まってしまいました。
 ていうか、いつ鬼が増えたのか気づいていなかった。後ろから逃げていたのに前に立ち塞がっているなんて卑怯だよ。しかも・・・さりげなく胸を触ったし!

「次は陽菜の番ね」
「もぅ・・・」

 ああもう・・・。
 変なところ触るから、さっき弄っていた場所が熱くなるだろう。
 ちっとも鎮まらないよ。
 すぐ我慢できなくなってしまう。こんな中で演技をするとか、新体操部ってどうなってんの?自分のカラダを意識しないのかな?
 でも、どんなに走っても陽菜は体力があるのか全然息切れしなかった。俺よりも運動量を把握しているせいか、ペースを守ればそれほど鬼ごっこも疲れるようなものではなかった。足がつったなんてこともないだろうし、運動ってやればやるほど楽しくなるという理由がわかる気がした。カラダを動かしていれば、それだけ身体が運動に対して慣れていくのだ。そうなれば楽しくないはずがない。疲労が後に残らない身体になれば、やっぱりカラダを動かすことは気持ちがいいと思ってしまった。
 そんな、部員たちと楽しく部活を遊んでいると――

「なにやってるんだ、おまえ達!!」

 突然、体育館に響く怒声が木霊した。扉の前に目を向けると、顧問の赤木敬‐あかぎけい‐がやってきたのだった。

      この顔は女子生徒に人気ない

「今すぐここに並べ!」

 新体操部を呼ぶ先生の一声が行き届くと、部員たちはぞろぞろと先生のもとへと集まっていった。体育館の壁を背にして一列に並ぶ部員たちは、赤木先生の気迫にすでに頭を項垂れていた。続きを読む

 外西陽菜とカラダを入れ替えている俺だけど――女子トイレの鏡に映る陽菜の顔を見ながら思う。

「俺・・・本当に外西さんになってるのか・・・」

      実感が湧いてきて

 "入れ替わっ"た経緯までが早すぎて実感しなかったけど、外西陽菜をこんな近くで見たのはじめてだよな。
 クラスメイトだったけど、そこまで話す間柄じゃなかったし、意識することもないような人物だった。
 本当に俺が陽菜を意識したのは、県大会で陽菜が華々しい演技をしていた時だし。
 なんで陽菜は俺を"入れ替わ"る相手として選んだのだろう?こういってはなんだけど、表面は恥ずかしくない性格を努めていたはずだ。
 勉強も並、雰囲気イケメンで、クラスでは爽やかな印象を持たれることが多い。華々しいことは何一つない地味な印象だけど、悪い印象は持たれないから評価は良いほうだ。
 そういう意味では俺と陽菜は似ているのかもしれない。ものすごく俺にひいきが働いている評価だけど。陽菜からすれば俺と比べられるのは嫌だろうけどな。

「・・・・・・・・・」

 俺の繕う表情に陽菜が寄せてくる。俺の思い通りに陽菜の表情がコロコロ変わっている。それだけで緊張してくるな。俺が陽菜を操っているみたいだ。今まで自分の表情を変えることをこれだけ意識したことなんてあっただろうか。他人の身体、異性の身体――外西陽菜のカラダをこれ以上ないほど意識していることへの裏返しなんだろうな。
 もちろん、顔だけを意識しているわけじゃない。陽菜(俺)の視線は制服の上から陽菜の身体を見下ろしていた。
 正直に言おう。陽菜のおっぱいを感じるのだ。
 屋上でも思ったように、制服の上から胸を触りたい衝動は消えていない。今度はトイレに籠ってしまえば、個室の中で陽菜の身体を触り放題することができるだろう。

「(うはっ、それなんてエロゲ?)」

 でも――。

「あれ?陽菜いるじゃん。授業始まるよ?」
「あっ。うん」

 ふいに隣に立って手を洗うクラスメイト。決して"入れ替わって"いることがばれているわけじゃないが、下手なことして正体がばれることを今のうちから危惧していた。思ったほど俺自身大胆な行動をとることができなかったのだ。
 ここで焦って陽菜のカラダを障るわけにはいかないよな。誰が見てるかわからないし、結局いつ元の姿に戻ってしまうのかわからないしな。
 トイレで別れた宏(陽菜)は先に教室に戻っているだろうか。クラスに交じって"入れ替わって"いる境遇の中で立ち向かいながら正体を隠しているのだろうか・・・。

「・・・・・・ごめん、外西さん・・・」

 悪いと思いながら俺は教室にはいけないな。クラスに交じって授業を受ける度胸もない。俺のほうから正体がばれて宏(陽菜)に迷惑をかけるわけにもいかなかった。一人になれる場所に身を隠したかった。小心者の俺が気持ちを大きくできるようになってからじゃないと、皆の前に出ていくことができなかった。自分を陽菜だと思わないとやっぱり抵抗がものすごい。
 男性‐おれ‐がスカート穿いているって友達にばれたら失笑モンだからな。

 つまり、必然的に――計画的に俺は陽菜の身体を触ろうとしているのだ。

 今までのは全部言い訳だ。自分の都合で授業をサボって、いつ続くかわからない陽菜との"入れ替わり"現象が解ける前に気が済むまで障っておきたいというだけだ。
 携帯を使って撮影でもしておくかな。でも、俺のスマホは向こうが持ってるし。もし俺が送った写真を宏(陽菜)に見られたら最悪だしな。
 スマホじゃなくて、カメラ買うか。ポラロイドカメラ安いやつで売ってないかな。
 ヨド〇シじゃなくて、ド〇キとかなら玩具でも高性能で売ってないかな。併せてコスプレ衣装でも買ってこようかな・・・なんて。

「ん、そもそも陽菜ってレオタード持ってたよな。コスプレ衣装買わなくても十分映える衣装持ってるじゃん。安っぽいコスプレ衣装より全然いいしな」

 陽菜は新体操部。レオタードも持ってきているだろう。新体操部の道具一式も全部用意されているだろう。それ以外に必要なものが果たしてあるだろうか。あったら買い物にいっていいかな。金使っていいかな?俺の金じゃないんだよな。減ったりしたら強盗扱いされないかな。

「金、金言うんじゃねえよ」

 思わず一人ツッコミが入ってしまう。くそ。こんなこと考えている間にも刻一刻と時間は過ぎていくわけだし。この幸運は終わりを迎えてしまうかもしれない。
 いま、最も優先しなけれればいけないことは、時間の節約じゃないだろうか。

「ん・・・待てよ・・・」

 俺はいま外西陽菜なんだ。どうどうと新体操部の部室に行けばよくないか?そうすればカメラもレオタードも置いてあるはずだよな。あわせてまだ放課後まで一時間あるし、部員がサボっていない限り誰も部室にいるはずがないんだよな。
 教室に戻る生徒たちの波に逆らって、陽菜(俺)は新体操部の部室へと向かっていった。
 新体操部の部室は体育館の中にある。他にもバスケ部やハンドボール部、バレー部、剣道部、柔道部もあるほど大きな体育館だ。
 その中で新体操部の部室は一階の並ぶ部室の手前から五番目。問題は鍵はどこにあるかと考えたけど、部長の陽菜のポケットに普通に入っていたのだった。
 至れることはできなかった未開の聖域。女子新体操部の更衣室!
 陽菜(俺)はドアノブを回し、軽く押すとゆっくりと扉は開いていった。続きを読む

 ただいま、「TS解体新書」様で開催中の"令和元年変身モノ祭り"にて、私の作品が掲載しました!

 変身モノ作品 "猫の恩返し" です!

            詳しくはTS解体新書へ

 妹+猫の癒し作品に、なゆたろ様からロリ猫変身挿絵をいただいての投稿になります。

 無口な子の責めはエロい(恍惚)。
 単発モノではございますが、"令和元年変身モノ祭り"を皆様が少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
 願わくば、祭りを楽しんでもらえる一つの力になれましたら、私そして絵師共々嬉しく思っております。
 好き・・・すこ・・・しゅき・・・しこ・・・シコれ!!(暴言)

"令和元年変身モノ祭り"



      新体操部part2

 インターハイをかけた県大会。暇つぶしに新体操部を見にいったのがまずかったのか、
 それともクラスメイトの彼女の演技に魅了されたのが運命なのか・・・
 拍手を送る観客の中で呆然としている俺を、彼女は確かに見つけていた。

 外西陽菜‐とにしひな‐は一年先輩の檜森真宵‐ひもりまよい‐と肩を並べる新体操部だった。真宵の代から引き継ぎ部長となった陽菜は、一か月後に俺、河原宏‐かわらひろし‐に声をかけたのである。
 クラスメイトでありながら一切関わりのなかった。話すらまともにしたことのなかった陽菜に誘われて向かった先は、誰もいない屋上だった。
 涼しい風が吹き抜けていく屋上に出る陽菜と、その後に続く俺。いったいこの時期になんの用なのか分からなかったし、何故唐突に俺を選んだのかも分からなかった。

「・・・ねえ、河原くんて女の子の身体に興味ある?」

 陽菜が俺に初めて喋った言葉はこれである。唐突過ぎて脳が彼女の言葉を読み込んでくれなかった。

「え・・・え・・・?何を言い出すんだよ、突然」

 女の子の身体に興味あるだって?
 ”憑依”とか、”入れ替わり”とか、TS‐トランスセクシャル‐とか、そういう話をまさか、彼女が知っているのだろうか。
 そのことに驚きだった。
 ここは素直に応えるべきだろうか?
 それとも、はぐらかすべきだろうか?
 選択肢によっては俺の人生を大きく左右する返答になるだろう。
 そう彼女が言ってきたってことは、陽菜‐おんなのこ‐の身体に興味を示してたほうが喜んでくれるのではないだろうか。
 ここで逆にNOなんて言ったら、話はそこで終わってしまう気がするし。
 誰もいないところに連れて来たってことは、誰にも言えない答えを待っているってことでもあるし。
 秘密を共有したいという彼女の意志の表現を密かに暗示しているってことではないだろうか。
 ストーカー的な発想か?違う、相手の真意を掴むため、心の奥深くまで放さないようにするための常套手段。
 逃がしてたまるか、このビックウェーヴ!

「ごめん。言い方が悪かったわ。彼女いる?」

 彼女が察して修正し直した。
 ・・・・・・。あ、そういうことね。そりゃあそうだよな。女の子がTSなんて興味あるわけないか。ハハハ・・・。

「彼女なんていないよ」
「ふ~ん・・・」

      いい天気

 なにかを向こうも掴み取ろうとしているのか、自分が出した質問に対する返答に素っ気なかった。

「じゃあ、童貞なの?」

 直球過ぎない?新体操部ってそんな話をいつも誰かとしているのだろうか。
 女子って相当な変態じゃないか。ゲームで遊んでいる男子の健全さが涙ぐましい。

「そうだよ。悪いか?」
「・・・・・・」
「(って、会話はそれだけかよ!!)」

 無言は勘弁してくれよ。この季節は陽が出てきているとはいえ少し肌寒く感じるんだけど・・・。
 ・・・外西陽菜は新体操でも一人黙々と練習し、クラスでも一人黙々と勉強し、優等生という地位を確立している生徒だ。
 生徒のお手本と言われているし、誰とでも普通に会話をする子だけど・・・自分から話にいく姿を見たことはなかった。
 周りに合わせて話を振れば応えていくようなスタイルの彼女が・・・今日は俺に話を振っているというのは珍しいのではないか・・・。

「じゃあさ、河原くん――」
「・・・え?なに?」

 考え事をしていて話を聞いていなかった。顔を向けて改めて陽菜の話を聞く。

「私と・・・カラダ交換しない?」

 それは、まるで通信ゲームでもして遊ばないと、軽く言ってくることにびっくりしてしまう。
 初めて会って即『セックスしよう』とふっかけてくるよりも巡り合う確率なんて皆無だろう。
 そもそも、カラダ交換しないって、それって”入れ替わり”ってことを言っているのだろうか?つまり、”憑依”とか、”入れ替わり”とか、TS‐トランスセクシャル‐とか、そういう話をまさか、彼女が知っているのだろうか。

「河原くんて女の子の身体に興味あるんでしょう?」

 今度は間違いないと確信をもって言える。やっぱりTS知ってるじゃないか。陽菜は俺と同じように、”入れ替わりモノ”を知っているってことにさらに一段と驚いてしまっていた。

「そ、そんなことより外西さんがどうして急にカラダを入れ替わりたいなんていうのさ?」

 男性からじゃなく、女性から身体を入れ替えたいなんて願望持つだろうか。俺‐だんせい‐なんて、バカだし、単細胞出し、脳筋だし、パワーこそ正義の世界だぞ。楽しいっていうより、工夫はないし、面白いかと言われたら微妙。それ以外に何もないじゃないか。
 だったら陽菜‐じょせい‐の方は美人で衣装替えできて、化粧できて、カラダで色々できるし、やれることいっぱいあるじゃん。しかも化粧も衣装もやればやるほど残るものだ。やった分だけ得をするじゃん。最強の中学生生活を満喫できるじゃないか!はたしてすべてを捨て去ってでも不服と思う事があるのだろうか。

「・・・・・・私だって普通に過ごしてたはずなのに、部活でも勝手に部長を押しつけられて、いつの間にか優等生呼ばわりされて、先生には他の生徒の模範になるように見本にされて、このまままじめに生きてねとか言われてさ・・・、そうやっていくのに疲れる時だってあるのよ」

 なんとも贅沢な悩みだった。

「それで、その発散ってわけじゃないけど・・・私っていうか完璧ってどう見られる人のことを言うんだろうとか、世の男性ってどんな女性が好きなんだろうとか調べていったら、ヘンなサイトを見つけて、つい男性って女性のオナニー好きなんだとか、憑依好きなんだーとか思っちゃって」

 それは間違ったサイトでヘンな性癖を身につけられてるよね。欲しい情報じゃなかったよね。検索から外れてるよね。
 汚点だよね、ソレ!むしろ、染まっちゃダメなヤツだったよね!?

「そんなことを調べてたら、男の子ってどう感じるんだろうって思っちゃったの。興味本位」

 すると、陽菜のポケットから小瓶に入った『粉薬』が登場した。まさか、彼女・・・『粉薬』を――。

「それで、買っちゃったの?」
「そういうこと」

 優等生で、お嬢様かよ、こいつ。苦労知らずな世間知らずなのかもしれない。
 そんな立場を捨てて平々凡々な俺と”入れ替わり”たいって、むしろ俺からすれば好機で、逆玉の輿を狙えるんじゃないか?
 まさにそういうTSシーンだったら、お約束で――

『ぐへへ・・・。おまえの人生は俺が貰ったぜ』
『やめてええぇぇ!私の身体を返してええぇぇ!!」

 まさに王道を往くパターンだよね?
 なんで、こんなに淡々としているのだろうか。
 外西陽菜と河原宏じゃなかったらもっと濃厚な話になれたんじゃないかな。

 いや、逆に言えば――TSってこれだけ認知されてきてるってことなのかな!?

「お互いに異性のカラダに興味があるわけだし、カラダ交換するよね?」

 そう言って、俺の隣に腰掛けて、何気なしに小瓶を開けて『粉薬』を開封する。
 蓋の開いた小瓶からピンク色した『粉薬』が風に吹かれて舞い始めた。
 陽菜は俺の返事を待つこともなく、目を閉じて身体を預けていた。室外でも甘い『粉薬』の匂いが俺たちのまわりを漂っているのが分かった。
 心臓の音がバクバクするのは、決して陽菜の頭が俺の肩に乗っているだけのせいではなかった。
 これだけ心の中で騒いでいて、今更逃げるわけにもいかないと俺は心を決めたように同じように目を閉じていた。

「よろしくお願いします・・・・・・」

 俺もまた意識を閉じるかのように目を閉じていく。その時に『粉薬』は俺にはまるで桜のように見えたのだった。

続きを読む

↑このページのトップヘ